地面師という存在をご存じだろうか。土地の所有者になりすまし、金を騙し取る詐欺師なのだが、菅野カランさんは演劇が好きで、本作『オッドスピン』のアイデアもその流れで思いついた。

クールでかわいくて、大胆不敵! 「地面師」になった双子が暗躍。

菅野カラン オッドスピン

「演じることや嘘をつくことについて考えるのが好きで、詐欺師にも興味を持っていました。いろんな詐欺があるなかで地面師にしたのは、お金は隠したり、移動させたりできるけど土地はそうじゃない。なのに人間が“持つ”という感覚が不思議だったから。2017年に五反田で大きな詐欺事件が起きて、結構ニュースになったのですが、そのスケールに衝撃を受けたのもありますね」

地面師として暗躍するのが、「英(えい)」と「蛍(けい)」という双子。ふたりの母は土地を騙し取られた過去を持つのだが「なんとなく面白そう」という理由で、母を騙した人物の後を継ぐ。

「善い行いを完遂することって、モチベーションのあり方としては単純といえますが、詐欺のような悪いことは、最初から最後までどうやってモチベーションを保ち続けるのだろうと思って。モチベーションを保つエンジン担当と、手を動かすハンドル担当に分業することによって、ひとりだとくじけてしまいそうなこともできる気がして、双子がピタッとハマったんです。同じ場面の心境を2種類の表情などで見せられるので、描くのが楽しいですね」

1巻では廃墟同然のビルを売却する側になりすまし、2巻では建設中のショッピングモールの一角に残る“母の土地”の謎に迫る。双子にそそのかされてチームを組む歯科衛生士なども含め、ゲーム感覚で詐欺を働いていく姿が印象的だ。

「別の欲望を持った人が、たまたま噛み合って行動を起こすっていう形を描きたいんです。私たちって被害者の気持ちには寄り添えるけど、加害者のことは自分と切り離して考えがちですよね。そうではなく、加害者を地続きの存在として捉えることが大事だと思っていて。意外と軽い気持ちだったり、金額の大きさは重要視していないんじゃないかな、などと想像しながら描いています」

マンガの表現として一般的な、登場人物の心理を描写するモノローグや、状況説明をするナレーションがほぼ出てこないのも、演劇の影響を受けた菅野さんの作風。読者もセリフや表情から真意を探り、展開を予測するスリリングさを味わえる。

「セリフが好きなので、間違っていることを言っていたり、嘘をついていたり、言いたいことをためらっているようなときも、自然なセリフだけで表現したくて。難しいけど、つい頑張ってしまうところですね」

大胆不敵な双子に振り回され、騙される快感がクセになる。

『オッドスピン』2 双子だけど性格は少し異なる「英」と「蛍」。2巻では、気になる母親など新キャラも登場。“怪しい土地”を巡って双子のルーツも垣間見え、新たなドラマが展開。講談社 759円 ©菅野カラン/講談社

かんの・からん マンガ家。2022年、第80回ちばてつや賞一般部門佳作受賞作「かけ足が波に乗りたるかもしれぬ」が話題に。本作で連載デビュー。

※『anan』2024年7月17日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
“はみ出し者”とされた女性たちの自立を描く、著者初の時代小説『けんぐゎい』
“はみ出し者”とされた女性たちの自立を描く、著者初の時代小説『けんぐゎい』
Entertainment
Today's Update
エンタメに造詣が深い3人が語る、いま人々が求めるヒーロー像
エンタメに造詣が深い3人が語る、いま人々が求めるヒーロー像
Entertainment
サイバーパンクSFの記念碑的作品。アニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
サイバーパンクSFの記念碑的作品。アニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
Entertainment
映画『死ねばいいのに』主演・奈緒「日々“生きることを選択している”と気づかされた」
映画『死ねばいいのに』主演・奈緒「日々“生きることを選択している”と気づかされた」
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載