岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「デモ音源」です。
岡崎体育 音楽

楽曲を制作するとき、アレンジを外部に発注する場合はまずデモ音源を作ります。絵を描く前の下描き、ラフスケッチのようなものです。僕のデモの場合、そのラフスケッチがガチで“ラフ”です。本当に簡単な線だけで描いている落書きのようなものと思っていただいていい。ドラムの簡単なビートを入れて、ピアノでコード進行を白玉(全音符)だけでじゃーん、じゃーんと弾いて、メロディを適当な歌詞で歌う。漫画で言えば、ネームもなければコマ割りもしてないような、だいたいこういう話で、こういうトーンになる予定ですよ、ということだけわかるもの。

自分で編曲まですべてする際はここから肉付けしていくのですが、アレンジャーに依頼する場合は、「ここから先はお任せします」とお渡しします。アレンジャーの方々には、「こんなにざっくりとしている自主性のないデモは初めてだ」とよく言われます。いや、そのまったく主張のないデモが岡崎体育らしさです。それがいいのか、よくないのか。アレンジャーの方からすると両方の意見があるようです。「もう少し固めてから渡してほしい」という方と「自由度があって腕が鳴る」という方と。たとえば、「Knock Out」という楽曲は、ハードコア・バンドPaleduskのDAIDAIくんにアレンジをお願いしたのですが、これはマジで僕の中でもラフ中のラフで彼にお渡ししました。DAIDAIくんもどうアレンジするべきか、とても悩んだと思います。でもその結果、彼自身の色をめちゃくちゃ出してくれて、とてもかっこいいアレンジを施してくれた。あがってきた楽曲を聴いて、「こんなに生まれ変わるんだ!」と、誰かと一緒に楽曲を作り上げる楽しさを実感したことを覚えています。いやいや、一緒というよりDAIDAIくんの力量ですね、これは。

そんなわけで岡崎体育はデモ音源集を出すのはまず無理ですね。はっきり言って聴いていられない! ……でも、あえて聴いていただくのもいいかもしれません。できあがった曲と比較したらアレンジャーのみなさんのすごさがわかると思います。僕たち作曲家は0から1を生み出しますが、それを100にも1000にもしてくれるのがアレンジャー。編曲の力でその曲がヒットするかしないかも決まる。僕の主張のないデモをどう進化させてくれているのか、いつか知ってもらえたらいいかもしれません。

おかざきたいいく 自身初となるEP『Suplex』(SME レコーズ)配信中。「岡崎体育Zepp Tour 2024」がスタート。4/21札幌、4/27名古屋、4/29福岡、5/12大阪(ベイサイド)、6/2東京(ダイバーシティ)で開催。

※『anan』2024年4月24日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND) 文・梅原加奈

(by anan編集部)

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