1、レトロで温かみのある、古き良きアナログな世界観。
悟とみゆきが出会う喫茶店「ピアノ」。悟が“想いを込めた時間は相手に届く”という信念を持つデザイナーだけに、彼が手がけた「ピアノ」の店内には、ト音記号のデザインなど、温もりが溢れている。その温もりは、悟の日常生活にも。朝食を摂るキッチンの風景をはじめ、洗練されていながら暮らしの息遣いを感じさせる世界観にも注目。
2、幼馴染み、家族…拠り所となる血の通った人間関係。
悟の恋を冷やかしつつも応援する幼馴染みの高木(桐谷健太)と山下(浜野謙太)。さらには、悟の幸せを静かに願っている母・玲子(高橋惠子)など。彼を想う人々に囲まれている悟の人生の豊かさを演技派揃いのキャストが映し出す。カットがかかっても10分以上、二宮らがアドリブで演じ続けた居酒屋シーンの幼馴染み感がリアルすぎ。
3、頼りないからこそ大事にしたい、運任せの待ち合わせ。
木曜日に「ピアノ」で会う約束をする悟とみゆき。だが、これはあくまでも都合がつけばの話。どんなに悟がみゆきに会いたくても、仕事など、急な用事で店に顔を出せないこともある。そんなふたりの関係を象徴するのが、「会いたい気持ちがあれば会えますよ」というみゆきの言葉。運任せの待ち合わせが、恋のときめきをますます高める。
4、“あの人に会いたい”という、人が抱く根源的な想い。
みゆきの言葉どおり、悟を動かしたのは“会いたい気持ち”。だが、みゆきはある日を境に、ぷっつりと「ピアノ」に姿を見せなくなってしまう。『アナログ』が描く愛の物語の神髄は、実はここから先にある。内澤崇仁(androp)の音楽が悟の感情の機微と繊細に溶け合うなかで、いつの時代も変わらない愛の原点に涙が止まらない。
ビートたけし原作の切ないラブストーリー。
映画『アナログ』
ビートたけしが70歳にして書きあげたラブストーリーを映画化。劇伴および幾田りらによるインスパイアソング「With」のプロデュースを内澤崇仁(androp)が担当し、感情の機微を繊細に表現。監督/タカハタ秀太 脚本/港岳彦 出演/二宮和也、波瑠、桐谷健太、浜野謙太、藤原丈一郎(なにわ男子)、坂井真紀、筒井真理子、宮川大輔、佐津川愛美、鈴木浩介、板谷由夏、高橋惠子、リリー・フランキーほか 10月6日より全国公開。
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※『anan』2023年10月4日号より。文・杉谷伸子
(by anan編集部)