「クリスティーヌは、演じるたびに原点に返らせてくれる役です」
「宝塚の『ファントム』とは演出も、翻訳の脚本も、キャストも違いますから、クリスティーヌとしても新しいアプローチが必要だろうと考えていました。でも、“気持ちの持っていきかたを変えてみよう”と考えてきたことが違和感だらけで。なんだか心が繋がらず歌も歌いにくい。ならば無理に変えるのも違うし、今は同じものが生まれたら生まれたでその気持ちを大事にしようと思って演じています」
もともと楽曲に導かれながら、その場その瞬間に舞台の上で湧き上がるものを大事にしてきた人。
「クリスティーヌという役は、演じるたびに原点に返らせてくれるんです。誰に見せるわけでもなく、ただただ歌を楽しんで歌っていたときの気持ち、初めて舞台に立ちたいと思ったときの気持ち、練習を重ねる中でこんなふうにも歌えるんだと発見があったときの喜び…。そして、初めて人前で歌ったときの、周りの嬉しそうな反応。ひとつひとつの場面が自分と重なって、リアルな感情として迫ってくる。とても面白い役だなとあらためて思います」
そして、そんな“役者自身から生まれてくるもの”を大事にしてくれるのが城田さん流の演出。
「しっかりとしたビジョンを持ちながらも、ここは絶対にこうでなきゃとはおっしゃらない。ただ、『僕からはこう見えるけれど、あなたの意図と合ってますか?』と言ってくださるので、答え合わせをしながら作っていっている感じです」
曇りのないクリアで美しい歌声と、確かな歌唱力の持ち主。クリスティーヌ同様、真彩さんも音楽の天使に愛された人であることは間違いない。
「私自身は自分の声や歌にそんなに自信はなくて…(笑)。もし褒めていただけるとしたら、ここまで演じてきた役の子たちが作ってくれた歌や声ですから、それは役のおかげです。私は、自分じゃない“誰か”から生まれた想いが歌になっていく瞬間が大好きで、舞台に立って歌えることを本当に幸せだなと感じています。これからも“誰か”として歌い演じ続けられるよう、なにも演じていないときはハスキーになる自分の声も大事にしながら(笑)、丁寧に役と向き合っていきたいと思っています」
ミュージカル『ファントム』 7月22日(土)~8月6日(日)梅田芸術劇場メインホール、8月14日(月)~9月10日(日)東京国際フォーラム ホールC 脚本/アーサー・コピット 作詞・作曲/モーリー・イェストン 原作/ガストン・ルルー 演出/城田優 出演/加藤和樹・城田優(Wキャスト)、真彩希帆・sara(Wキャスト)、大野拓朗・城田優(Wキャスト)、石田ニコル・皆本麻帆(Wキャスト)、加治将樹、中村翼、加藤将、西郷豊、岡田浩暉ほか S席1万4000円 A席9000円 B席5500円 キョードー東京 TEL:0570・550・799(11:00~18:00、土・日・祝日10:00~) 19世紀後半のパリ。オペラ座では、ファントム(加藤・城田)が出没すると噂されていた。そんななか、憧れのオペラ座で職を得た歌手志望のクリスティーヌ(真彩・sara)は、その美しい声に魅せられたファントムから密かに歌のレッスンを受けるようになり…。
※出演を予定していたsaraさんですが、体調不良のため全公演を休演することになりました。
まあや・きほ 埼玉県出身。2012年に宝塚歌劇団に入団し、たしかな歌唱力と繊細な演技力が注目され、’17年に雪組トップ娘役に就任。’21年の退団後は、『ドン・ジュアン』『ジキル&ハイド』などミュージカルを中心に活躍。11月からは『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』に出演。
※『anan』2023年7月26日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)