精緻で魅惑的なビジュアル、愛とミステリーが溶け合うめくるめく物語、胸打つ音楽。圧倒的な作品力で日本のみならず世界を虜にしているアニメ『【推しの子】』。
物語は、天才的なアイドル・アイと彼女の双子の隠し子、アクアとルビーを軸に進んでいく。芸能界、そして“アイドル”という存在を通じて紡がれるストーリーの中で、特に支持されているのは、登場人物の複雑な胸の内をリアルに描き出している点。
全11話の放送が終わって間もないいま、改めて本作の魅力について“自己肯定感”という視点から掘り下げていきます。
『【推しの子】』を象徴する自意識を読み解く。
『【推しの子】』の魅力は強い光を放つキャラクターとストーリーにあり。そこで、第1期で展開した物語の概要と主要キャラクターたちをざっくりご紹介。アクア&ルビーの声優から見た、キャラクター分析もぜひチェック!
STORY:白熱の全11話をプレイバック!
第一話:アイ推しのふたりが、推しの子として転生!
産婦人科医・ゴローのもとに最推しのアイドル・アイが妊婦として訪れた。主治医として彼女を見守るゴローだったが、何者かに殺され、気づけばアイの息子・アクアに転生。双子の妹もゴローの患者・さりなの生まれ変わり。だがある日、アイはふたりの前で殺されてしまう。
芸能界編 第二話~第四話:成長し芸能界の扉を開いた双子の運命が回りだす。
芸能プロ“苺プロ”を営む斉藤ミヤコに育てられた双子。ルビーはアイドル志望で、アクアと共に芸能科のある高校に進学する。アクアはアイを殺した人物を特定すべく暗躍。昔のツテで元天才子役・有馬かなを通じ彼女が出演中のドラマのプロデューサー・鏑木勝也に近づこうとする。
恋愛リアリティショー編 第五話~第八話:同世代の才能との出会いと恋愛リアリティショーの裏側。
鏑木からアイの情報を得るため、アクアは彼の関わる恋愛リアリティショーへの出演を決める。そこで出会ったのは同世代の俳優・黒川あかね。真面目で番組映えしない彼女は、焦りから共演の女子に軽傷を負わせてしまう。ふたりはすぐ仲直りしたが、SNSは大炎上に発展していく。
ファーストステージ編 第九話~第十一話:新生「B小町」デビュー! 初代センターは誰!?
新生「B小町」としてアイドルデビューを決めたルビー。メンバーは有馬かな、アクアがリアリティショーで出会った人気配信者・MEM(メム)ちょ。でもかなは過去のトラウマからアイドル活動に自信が持てなかった。そこに上がった「センターを誰にするか」問題。3人の結論は…?
CHARACTER
アイ:嘘と秘密に包まれた伝説の天才アイドル。
アイドルグループ「B小町」のセンターで、アクアとルビーの母。自信あふれるパフォーマンスと笑顔、そして“嘘”の愛でスターダムを駆け上がるが、不幸な生い立ちゆえ本物の愛を知らずに育ってきた。彼女はなぜ16歳で母になったのか、なぜ殺されなければいけなかったのか。その謎がいまも人を惹きつける。
アクア:最愛の人の復讐を誓う頭脳明晰な美少年。
アイの息子。前世ではアイ推しの産婦人科医で担当医のゴローだったが、何者かに命を奪われ、“推しの子”として転生。見た目はアイ似の美少年だが、中身は冷静な成人男性(推定アラサー)。復讐を使命として生き、そのためなら手段を問わない。仲間のためにひと暴れするような一面も。本名、愛久愛海(あくあまりん)。
asアクア:大塚剛央さん
一見冷静な彼の行動原理にはアイの存在がある。
頭脳明晰でアイ譲りの外見を持つアクア。無敵にも思える彼だけど、「自己肯定感では0点かも」と分析するのは成長後のアクアを演じる大塚剛央さん。
「そもそも自己肯定感を測れるところにいるのかも疑問です。同じ双子でも妹のルビーは自分の人生を大切に、憧れを実現しようとしている。その自意識の差に、“自己肯定感”において、ふたりの違いが表れている気がします。アクアは、自分にできることとできないことを客観視した上で、それを実行するだけというふうに僕は感じています。演じるにあたって、彼の判断や行動の理由を考えますが、アクアの原動力のほぼ全ては、アイなのではないかと思っています」
おおつか・たけお 10月19日生まれ、東京都出身。2020年、第14回声優アワードで新人男優賞を受賞。代表作に、TVアニメ『風が強く吹いている』の蔵原走など。7月から放送のTVアニメ『AIの遺電子』(須堂光)、『SYNDUALITY Noir』(カナタ)に出演中。
ルビー:母・アイの背中を追ってアイドルの道を走る!
アイの娘で、アクアの双子の妹。前世ではアイに憧れ、同じ病院の医師であるゴロー(アクアの前世)に懐いていた難病の少女だった。現世ではアイ譲りのルックスを武器に、前世では実現できなかったアイドルの夢を叶える。自信満々で前向きな性格だが、ときに前世のつらい記憶が影を落とすことも…。本名は瑠美衣(るびい)。
asルビー:伊駒ゆりえさん
自分を信じて全力で進む。それがルビーの輝きの秘密。
ルビーの自己肯定感を点数で表すと「90点」と答えてくれた伊駒ゆりえさん。
「作中でも初仕事で『嘘は、いやだ』と述べるなど、自分の考えを言い切る場面が多くあります。一方『ルビー かわいい』でエゴサしたり(笑)。自分の考えを肯定し、またアイ譲りの容姿にも自信があるんだと思います。満点にしなかったのは、前世の記憶や環境が今後彼女をどう左右するか未知数だから。でもいまルビーは自分を信じて前向きに進んでいる。それが彼女の輝きの源でしょう」
伊駒さん自身も、ひたむきなルビーに力づけられることも多いそう。
「やりたいことを大切に、全力で取り組む。私もそんな人でいたいです!」
いごま・ゆりえ 2月24日生まれ、東京都出身。今作が初のレギュラー作品で、メインキャラクター。文化放送『A&G NEXT STEP HOOOOPE!』水曜パーソナリティ。夢はディズニープリンセス、目標とする声優は山寺宏一さん。愛称ごまちゃん。
まだまだいる! 個性豊かなキャラクターたち
有馬かな
“十秒で泣ける”元天才子役。演技力がピカイチの自信家。アクアやルビーの1学年上の先輩で、芸能界の厳しさを教えたり面倒を見てくれる。再起を図るべく、新生「B小町」に加入する。
MEM(メム)ちょ
アクアやあかねと共にリアリティショーに参加していた人気配信者。明るく陽気に振る舞うみんなのまとめ役。元々はアイドル志望。アクアの誘いで新生「B小町」に加入することになる。
黒川あかね
劇団所属の俳優。リアリティショーでのとある過ちがSNSで大炎上し、絶望の淵に立たされるがメンバーと共に乗り越える。その後アクアと交際。アイを完璧にトレースできる演技力。
TVアニメ『【推しの子】』 原作は、赤坂アカと横槍メンゴによる同名漫画(2020年より『週刊ヤングジャンプ』にて連載中)。伝説的な人気を誇る夭逝のアイドル・アイと彼女の子で双子のアクアとルビーを中心に、華やかだがシビアで残酷な芸能界やアイドルの世界をリアルに描いた作品。各配信サイトで配信中。©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
※『anan』2023年7月19日号より。取材、文・大澤千穂
(by anan編集部)