「宮藤さんの作品は、単に面白いだけじゃなく社会性を感じさせるところが好きなんです。そういうテーマを扱ったものって、日本ではシリアスだったりナーバスになりがちなのに、ユーモアも大事にされていて、そこのバランスが素晴らしいなと。しかも、いろんなキャラクターたちが畳み掛けるように登場するのに、ただの脇役というのは存在しなくて、その人が何か大事なことをやったり、それぞれが影響し合って物語が動いたり。どの役もちゃんと自分の人生を懸命に生きているから、主人公がいる物語でも群像劇のような面白さがある。宮藤さんという人が、一見目立たない人にも温かい目線を注いでいるのを感じます。それに、宮藤さんはパンクバンド(グループ魂)もやられていますけれど、脇役のように見えてる俺らも生きているんだぜっていうパンク精神が、根底にはあるような気もしています」
俳優を目指す前から宮藤作品の大ファン。「腹がよじれるくらい笑ったし、泣いたし。自分が好きな笑いとかカルチャーの原点はそこだと思う」と話すほど。ドラマや映画でコメディリリーフ的役柄を担うことも多いが、笑いの素地に数々の宮藤作品があるのは間違いない。本作『もうがまんできない』で演じるのも、お笑いコンビの片割れだけれど…。
「じつはあまり肩書で役を見てないかもしれないです。弟役とか、サラリーマン役とかもそうなんですけど、肩書を意識すると、どうしても自分の中にある“芸人さんってこうだよな”みたいな先入観が邪魔してへんに偏ってしまう気がして。今回の作品に限らず、大事にしているのは、この脚本が目指しているものはなんなのかを理解するということでしょうか。社会に対するメッセージなのか、とにかく面白くしたいのか感動させたいのか…。そして、その感動をもう少し分析して、自分の出ているシーンの意味は何か、与えられた役割は何かを掘っていく。ただ、それを表現する方法も無限にあって、そのときの自分のインスピレーションやいろんなタイミングが絡み合っています。撮影が終わった後に、あれはそういう意味だったのかって気づくことも多いですが」
舞台にも積極的に出演しているが「10代のときに見た岩松了さんの舞台の影響が大きい」と話す。
「『シダの群れ』という舞台でしたが、繊細で難しくて。舞台という限られた空間で、こんなに奥行きのあることができるんだって、自分の中の扉が開いた感じがしたんです。そこからずっと、もっと演劇に触れたいって気持ちが続いています」
ウーマンリブvol.15『もうがまんできない』 古い雑居ビルの屋上。お笑いコンビのふたり(仲野・永山)が解散を決意した頃、向かいに建つ新築の高級マンションではセレブ妻と浮気相手がパーティで鉢合わせし…。4月14日(金)~5月14日(日) 下北沢・本多劇場 作・演出/宮藤官九郎 出演/阿部サダヲ、仲野太賀、永山絢斗、皆川猿時、荒川良々、宮崎吐夢、平岩紙、少路勇介、中井千聖、宮藤官九郎 指定席8000円ほか 大人計画 TEL:03・3327・4312(平日11:00~19:00) https://otonakeikaku.net/stage/3078/ 大阪公演あり。
なかの・たいが 1993年2月7日生まれ、東京都出身。13歳で俳優デビュー。ドラマや映画で存在感を発揮し、ドラマ『拾われた男』などに主演。4月9日放送の単発ドラマ『ひとりぼっち』(TBS系)にも出演。
ジャケット¥52,800 Tシャツ¥31,900 パンツ¥57,200(以上Taiga Takahashi taigatakahashi.com)
※『anan』2023年4月12日号より。写真・まくらあさみ スタイリスト・石井 大 ヘア&メイク・高橋将氣 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)