前作『春、死なん』が野間文芸新人賞候補になるなど作家としても注目される紗倉まなさん。新刊『ごっこ』は3編を収録した作品集だ。
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「他の小説を何度も書き直して行き詰まっている時に、編集者さんから『息抜きに恋愛小説を書いてみませんか』と言われて。“息抜き”という言葉に救われて、力を抜いて自由に書けました」

という本作は、人と人の繋がりの不可思議さを絶妙なタッチで描き出す。最初に書いたのは、「はこのなか」という短編。中学校時代からの女友達に思いを寄せる女性の話だ。

「私もすごく好きな親友のことを友達以上に気にしたり心配したことがあります。友達同士って、相手に恋人ができると彼との付き合いを優先されてしまったりしますよね。突き放された友達がこんなふうに思いを馳せていることもあるよな、と考えながら書きました」

次に執筆したのが表題作の「ごっこ」。ドライブ中、助手席の男に癇癪を起こされた女性が語り手だ。カップルのケンカと思いきやこの二人、単にデートしているわけではなく…。

「密閉された空間でこんなことが起きたら嫌だな、というものを詰め込みました(笑)。強がっている感じでこちらを馬鹿にしてくる男性と、その男性を冷静に見ながら心のどこかで馬鹿にしている女性、という構図を書いてみたかったんです。片方が振り回されているように見えて、本当の意味で相手を振り回していたのはどちらなのか、という話です」

また、「見知らぬ人」は自分も浮気をしている妻が、夫の浮気相手と対峙する。「ごっこ」同様、会話のなかで二人のパワーバランスが変化していく様子がスリリング。

「世の中にはあえて既婚者の男性ばかり狙う女性がいる、という話を聞いて、どんな価値観なんだろうと思って。二人の会話を書いていたら、どちらも持論を展開して止まらなくなりました(笑)」

3編とも友達、恋人、夫婦の間の、友情や愛情では説明できない揺らめく感情が鮮烈に描かれていく。

「“友達”といっても、実際は友達未満だったり友達以上の気持ちがあったりして、自分たちの関係性をどう言葉に落とし込めばいいのか分からない時ってありますよね。3編ともそうした、枠からこぼれた人たちの話になりました」

紗倉まな『ごっこ』 10代の頃から自由奔放だった女友達、タクボ。彼女が結婚した今も、戸川にとってタクボは特別な存在で…。「はこのなか」ほか2編を収録。講談社 1650円

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さくら・まな 2012年、SODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。小説『最低。』『凹凸』『春、死なん』やエッセイなど、執筆活動でも注目されている。『最低。』は映画化もされた。
撮影・渞忠之

※『anan』2023年3月29日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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⽬標に向かって突き進む情熱が⾼まっていますが、今はその勢いをあえて⾒せず、控えめに過ごすのが成功の秘訣です。⾃信や実⼒におごることなく、始めたばかりの頃の素直さを思い出しましょう。物事をスムーズに進めるためにも周りとの調和を図って。結局、等⾝⼤の⾃分を受け⼊れることが⼤きな成果へと繋がるのです。

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