8年の共同生活で築かれた強い関係性。
――東京に出て一緒に住むことは、最初から決めていたんですか?
加納:そうですね。でも「一緒に住みたい!」ってわけじゃなくて、あくまでお金がなかったから。住むエリアもこだわりなかったよな。
村上:うん。ただ先輩から「中央線沿線はやめとけ。売れない芸人、バンドマン、役者が多く住んでて、その雰囲気が漂ってる」って言われて。大田区にある、謎の御嶽山っていう駅に決めました。
――友達とはいえ、一緒に暮らすと変化はありませんでした?
加納:いや、別にベッタリでもないし、そもそも家に帰ってなかったです。バイトして、劇場が多い新宿駅東口近くの喫茶店でネタ書いて、花園神社で漫才の稽古して。
村上:うちも夜勤バイトしてたし、帰ったら加納さん寝てたりして。
――どっちかが料理を作るとか…。
加納:全然! バイト先でまかない食べさせてもらってました。
村上:米だけもらって、もやしをポン酢で食べて。飲みに行っても、後輩に奢るお金がなくて一人飲み。
――今日の撮影場所の尾山台にはいつ頃引っ越されたんですか?
村上:上京して4年後の、『笑けずり』(NHK BSプレミアムで2015年に放送された生き残りバラエティ番組)に出た頃ですね。
加納:自転車でファミレス行って、ネタ書いてました。懐かしいなあ。
村上:番組の影響でライブに呼ばれることが増えたから、加納さんにはネタ作りに専念してもらって、そのぶん私がバイトしてました。
――すごい! そんな下積み時代を経て、今は別々に。ルームシェア解消は寂しくなかったですか?
加納:いや別に。
村上:ばりドライ(笑)。加納さんは大学で一人暮らしを経験してるけど、うちはなかったんで、出ていかれた時は悲しかった。枕を濡らしました。
――お二人ともご結婚もされて。例えば、お互いの家族を交えてキャンプとかって……。
村上:なんでやねん。
加納:なんでやねん。
――失礼しました。友達から相方になって、二人の関係性が変わった部分はあるんでしょうか。
加納:ひとつターニングポイントがあるとすれば“相方になった時”じゃないですかね。「予定を合わせる」がなくなったし。
村上:うん。約束してプリクラ撮りに行く、とかなくなったもんね。
――プリクラ(笑)。呼び方は?
村上:昔は「あいぴー」って呼んでくれてたけど、今は「村上」。
加納:相方の話で「あいぴーがさあ」って言うのも変やからね。
村上:でもお願い事がある時は今も「あいぴー」やんな? 「あいぴー、新しいネタ頑張って」とか、そんなん言われたら聞くしかない。
加納:村上は「加納さん」よね。
村上:生かされてますから。うちはネタが書けないし、ほんまに意思がなくて。だから信頼してます。
――お互いを尊重して干渉し合わないのがいいのかもしれませんね。
加納:そうですね、むかつかないんですよ。喧嘩もしないし。
村上:うん。うちがネタに物申したり、「嫌や」って言うヤツやったりしたら喧嘩になってたかも。トップダウンがいちばん。
――波長が合うんでしょうね。
村上:そう、悪口を共有できるのも大きいです。その人の文句を言っておけば、うちらは仲がいい。
加納:共通の敵って常に現れるんですよ。いなくならない(笑)。
――二人でいる安心感は?
加納:一緒にいることを安心とは思わないですけど、『R‐1グランプリ』に一人で出た時の孤独はものすごかった。めっちゃ不安で、「これ、ピン芸人は毎回やってんねや」と。普段心強いとは感じないけど、一人になると心細いんやなと思いました。
村上:うちはいつも心細いけどな。
エイマッソ 幼馴染みの加納(右)と村上(左)が2010年にコンビ結成。『女芸人No.1決定戦 THE W』では’20年から2年連続で決勝進出。MBSラジオ『Aマッソのヤングタウン』が毎週木曜22~23時半に放送中。第9回単独ライブ『与、坐さうず(あた、いまそうず)』が8月26日から東京、愛知、大阪で開催予定。チケットの一般発売は7月23日~。ワタナベエンターテインメントライブ事務局 TEL:03・3746・1154
※『anan』2022年7月27日号より。写真・玉村敬太 取材、文・飯田ネオ
(by anan編集部)