ユースカルチャーは若者に自由に消費してもらいたい。
「テーマはコロナになる前から決めてたんですけど、期せずして自分自身に向き合うようなテーマがばっちりの時代になってしまいました。反射っていうと、投げたものに何が返ってくるかわからないのも面白さだと思うんで、『恋とミサイル feat. UG Noodle』では神戸のシンガーソングライターのUG Noodleに歌だけじゃなく作詞もお願いしたんです。自分で歌詞を書くのってすごく大事だと思ってるんで基本、人にお願いしないんですけど。いつもと違う形で人の力を借りてみたいって思ったんですよね」
ドラムンベース調のトラックと中村佳穂さんの歌が放つエモーションが絶妙に融合するタイトル曲の「REFLECTION feat. 中村佳穂」は、コロナ禍における緊急事態宣言中にアイデアがまとまったそう。
「移動が制限される中、東京駅から日比谷に向かって音楽を聴きながら歩いてて、『こういうことができるんなら幸せだから大丈夫かも』って思ったんです。移動の自由が妨げられるっていうのは本来人間にとってかなり重いことだと思うんですよね。でも、こうやって音楽を聴きながら散歩するっていう行為はできる。その幸せを記録しておこうと思って作った曲ですね」
今作は「tofubeats丸出しアルバム」だと分析する。
「アルバムと同日に『トーフビーツの難聴日記』っていう初の書籍を出すんですが、そこにもめっちゃ本音書いてたりして(笑)、書籍含めて結構僕そのものって感じだと思います。でも、好き勝手やろうと思いながらも、人とコミュニケーションをとってちゃんとJ‐POPをやりたいっていう精神があるんだなとアルバムを聴くと思います」
シティポップがブームになる10年近く前から「プラスティック・ラブ」のカバーを発表していたことで知られるが、音楽シーンにおけるトレンドと自身の表現とのバランスを、どう考えているのだろうか?
「4枚ぐらいアルバムを出していて、『水星』や『LONELY NIGHTS』がたくさんの人に聴いてもらえたので、もうtofubeatsのことを説明する必要はないっていう楽さは感じています。今回も、自分の中でのブームはあるんですけど、世間一般のブームはそこまで意識しないで作ってみようと思いました。コロナ禍であまり遊びに行けなくなると、恥ずかしい話、昔好きだったものを体が欲したりするので、そういう雰囲気があるアルバムでもあると思います。TikTokとかで昔出した『水星』がシティポップとして流行ってますけど、自分としては『水星』はヒップホップR&Bであってシティポップではないんです。でもシティポップとして売れてるんだったらラッキーだなと(笑)。ユースカルチャーは若者のものなので、若い子に自由に面白く消費してもらいたい。そうやって上の世代の人がほったらかしてくれたから、今の僕があるんですよね」
5thアルバム『REFLECTION』。「REFLECTION feat. 中村佳穂」含む全16曲収録。初回限定盤(¥4,180)はこれまでのアートワークを12枚のポストカードにまとめたスペシャルパッケージ。通常盤¥3,080(ワーナーミュージックジャパン)
トーフビーツ 1990年生まれ、兵庫県出身。「水星 feat. オノマトペ大臣」がiTunes Storeシングル総合チャートで1位を獲得しメジャーデビュー。最近は、テレビドラマや映画の主題歌・劇伴等も手掛ける。
※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・小松香里
(by anan編集部)