アニメ化もされた『甘々と稲妻』では、料理でつながる父娘の成長を温かく描いた雨隠ギドさん。
「前作とは違うものを、と思ってラブコメになりました。だけど蓋を開けてみたら家族の要素も意外と出てきて、描きたいものってブレないんだなと思っているのですが(笑)」
両親がいなくなり、幼い妹弟を養うべく、売れないながらも少女マンガ家として励む久我一郎。そんな彼のもとに、美人で仕事もできるアシスタント・五色しおりがやってくる。……と、ここまでは現実的な展開なのだが、五色さんは自称「流れ星の民の姫」だそうで、とあるハプニングでふたりは婚姻関係に。
「強制的な許嫁とか、出会ってすぐに恋人になるような展開は、ラブコメのお決まりですよね。ハプニングの描き方は、実際に起こったらどうなんだろうっていう視点を持ちつつ、一方が嫌な思いをすることのないようにしたいと思っています」
しかもこの婚姻関係は、五色さんにとって不都合と思える行動を久我くんがとると、体調が悪くなるなど彼に何らかの罰が下されてしまう、なかなか厄介なもの。それでもふたりは焦ることなく、誠実に愛を育んでいくのだが、その純粋さに読む側は当てられっぱなしなのだ。
「『こっ恥ずかしすぎる』みたいな感想をいただくと、普通はもう少し抑えようとするのかもしれないですけど、私はギアを上げてアクセルを踏みたくなります。恥ずかしい話を描きたいんです(笑)。照れる理由ってパーソナルで、その人にとって大事な部分だったりもするので、なぜ照れてしまったのか考えてもらえたら、めちゃくちゃ嬉しいですね」
一体どんなふうに想像して、ギアを上げるのかも気になるところ。
「のろけ話を聞くのが好きなんです。恋愛じゃなくても、夢中になっている物事や楽しかったことを話しているときって、その人自身も魅力的に見えますよね。島から来た五色さんはほぼ全部が初体験だから、その喜びを私たちが追体験して、新鮮な気持ちになれるのだと思います」
最新刊の3巻では、五色さんを連れ戻そうとする両親も登場して、これまでとは一転して不穏な空気も。
「ラブコメでありがちなことを、あえてこのふたりがやったらどうなるのか、これからも“恥ずかしく”描いていきたいです。この初々しさがずっと続いたら立派ですよね(笑)」
『おとなりに銀河』3 婚姻契約の解除方法を探るなか、五色さんを島に呼び戻すべく両親がやってきて、久我くんとも対面! 互いを思いやる気持ちに心が温まる、ラブストーリー。講談社 748円 ©雨隠ギド/講談社
あまがくれ・ぎど 2007年デビュー。代表作に『甘々と稲妻』『終電にはかえします』『まぼろしにふれてよ』など。本作のほか「ゆらゆらQ」を連載中。
※『anan』2022年1月12日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)