今年、選考会で満場一致で松本清張賞を受賞しデビューを果たした波木銅さんは21歳の大学生。受賞作『万事快調(オール・グリーンズ)』は、田舎の工業高校の女子生徒たちが現状を打破するため無謀な計画を立てる、痛快な青春小説だ。女性らを主人公にしたのは明確な理由がある。

田舎の女子高校生らが犯罪を計画? 現役大学生による痛快なデビュー作。

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「マチズモの縮図のような場所を設定し、そこで女性の主人公たちがどう立ち向かうかを書きたくて。自分の世代にもマチズモや排他的な雰囲気はあるし、それが払拭されたほうが自分も生きやすいと感じます」

クラスで3人だけの女子。朴秀実は読書家で学校外ではフリースタイルのラップにいそしんでいる。岩隈真子は漫画好きのオタクで毒舌家。クラスでのけ者の2人と違い、映画好きの矢口美流紅(みるく)は笑顔を絶やさず男子生徒とも仲良くしている。友達同士でもない3人だが、未来に希望が持てない点では共通。

「朴は自分を真面目だと思っているけれど実はそうでもないイメージ。岩隈は一番ナイーブで内向的だからこそ、露悪的に振る舞っている。矢口は男性優位社会に迎合することで地位を保っているけれど、本当は朴たちに近いキャラクター。お互いに対して偏見を持っている3人が連帯していく話にしたかった」

ある時、偶然に朴が入手したのは、なんと大麻の種。3人は園芸部を作ってこっそり栽培しようと計画する。

「一種のクライムノベルにすることは最初から考えていました。近年の『万引き家族』や『パラサイト』の影響もあるかと思います。現状を脱出するための正攻法が用意されていない世の中で、正攻法に進めなかった人たちの話を書きたかった」

3人の会話も楽しく、実在の作品名がポンポン飛び出すオタクっぷりでも読ませる。これは波木さんの好みも反映されているそう。

中学生時代、伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』を読んで小説の面白さを知り、自分でも書き始めた。ジャンルにこだわりはなかったが、多数派からの圧力への抵抗がこめられた小説を書くことが多かった。

「今の世の中に対する疑問や不満を表明するというか、現代が抱える問題を描写してこそ小説を書く意味があるのかなと思っています」

若い世代が、世の中をどう見てどう作品に掬い取るか、今後も要注目。

『万事快調(オール・グリーンズ)』 田舎の底辺工業高校。クラスでたった3人の女子が、ひょんなことから大麻の栽培を計画して…。なんとも型破りなクライム青春小説。文藝春秋 1540円

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なみき・どう 1999年、茨城県生まれ。大学在学中の今年、本作で松本清張賞を史上2番目の若さで受賞。選考会では満場一致で受賞が決まったという。次回作はまた違うテイストのものを構想中。©文藝春秋

※『anan』2021年8月25日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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