篠山紀信の60年間を振り返る 116点の作品展示で見えるもの

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2021.05.20
1960年代から現在まで、第一線で活躍を続ける写真家・篠山紀信。莫大な数の雑誌の表紙やグラビアを手掛けた彼は、その完成度と新しい感性で今や「時代の創造者」とまで呼ばれる存在に。そんな彼が‘74年に『アサヒグラフ』誌で連載し、後にまとめられた写真集『晴れた日』は「時代の並走者」を自任する彼の特徴を凝縮した一冊。‘74年の様々な出来事を捉えたその写真集になぞらえ、篠山紀信が写した60年間のドキュメント作品を振り返るのが「新・晴れた日 篠山紀信」だ。

写真家・篠山紀信の60年間を振り返る初の大規模回顧展。

展覧会は2部構成で、第1部では高度経済成長期の時代にふさわしいエネルギーに溢れた新表現として評価された初期の代表作〈誕生〉や〈晴れた日〉、雑誌『明星』の表紙の仕事から生まれたアイドルの写真など、篠山の幅広い活躍の原点となる主要作品で構成。第2部では、‘80年代以降のバブル経済による変貌から、2011年の東日本大震災、同時代を生きる人々を捉えたシリーズ、東京オリンピックに向かい再構築される東京の姿までを紹介する。

「カメラマンは自分の生きている時代しか撮れないんだから、写真は僕にとって時代を複写していることにほかならない」と自らの写真哲学を語る篠山氏。長嶋茂雄や輪島功一、オノ・ヨーコなど、誰もが知るアイコン的存在をちりばめながら、広く社会の動きを捉え、昭和から平成、令和まで時代を鋭く切り取った本展。全116点の作品からは、創造と破壊、欲望と不安が渦巻く時代からも決して目をそらさず、絶え間なくシャッターを切り続けてきた彼の覚悟と美意識が伝わってくるはずだ。

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〈晴れた日〉1974年 東京都写真美術館蔵 ©篠山紀信
写真集『晴れた日』は、雑誌『アサヒグラフ』の連載に‘74年当時の作品を加えたもの。撮影対象は美術からエンタメ、スポーツ、政治、人々の暮らしまで、当時話題となった出来事だった。

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〈誕生〉1968年 ©篠山紀信
1963年に卒業制作が『カメラ毎日』で取り上げられ、注目される存在となった篠山。〈誕生〉は同誌で掲載された‘60年代の代表作の一つで、奄美・徳之島で撮影された。

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〈TOKYO NUDE〉[表参道・結晶のいろ]1986-92年 ©篠山紀信
‘80年代後半~‘90年代中頃までのバブル期、変容する東京を映そうと篠山は複数のカメラをつなぎ合わせイメージを連結させる“シノラマ”を使って制作を行った。

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〈ATOKATA〉2011-18年 ©篠山紀信
東日本大震災の年、篠山は4回にわたって被災地の撮影を敢行。大津波によってなぎ倒された木々や倒壊した建物など、その恐るべきエネルギーの爪痕とともに静かな自然の姿にも目を向けている。

新・晴れた日 篠山紀信 東京都写真美術館 2・3階展示室 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 開催中~8月15日(日)10時~18時(入館は閉館30分前まで) 月曜(8/9は開館)、8/10休 共通チケット一般1200円ほか TEL:03・3280・0099 ※やむを得ない事情により内容に変更が生じる場合があります。最新情報は同館のホームページ等をご確認ください。

※『anan』2021年5月26日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)

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