結成20周年を迎えてもフレッシュに突き進む、3人の今をパッケージした最新EP。
「20年前のことを思い出すと、テクノロジーは進化しているじゃないですか。でも、バンドの変化はないですね(笑)。相変わらずです」(近藤洋一・ベースとコーラス)
「でも、続けることに意味があった感じは、今しています」(木内泰史・ドラムスとコーラス)
サンボマスターの揺るがなさは、9月9日にリリースされた『はじまっていく たかまっていく E.P.』にもメッセージとなって詰まっている。特に表題曲にある《呪いを解きにきた》というリフレインの力強さには、救われる人も多いだろう。
「ずっと歌詞について聞かれてきたんですけど、最近思うことがありまして。“僕たちが衝撃を受けた音楽の国”にずっと暮らしているからなんじゃないかなって。ロックも、パンクも、ソウルも、ヒップホップも、ジャズも。だから、そこから変わらないんじゃないんですかね」(山口)
幅広いジャンルに影響を受けている彼ら。「はじまっていく たかまっていく」では、様々な音楽に向けた愛情も、めくるめく展開の中から感じられる。メッセージは不変ながら、アレンジは広がりを増しているのだ。
「いつも古いものから新しいものまでレコードを買っているのが、いいのかもしれないですね。まあ、努力でもなんでもなく、バンドを組む前からやっていることですけど。あとは近藤くんと木内くんが、社会と接点を持ってくれているのがいいんじゃないんですか? 僕だけだったら、原液で濃すぎるので(笑)」(山口)
「この曲、こうなったらめっちゃヤベーじゃんっていう、ワクワクを求めて作りましたね」(近藤)
「型にこだわりもないし、サンボマスターだからこうしなきゃいけないっていうのもなくて、今こういうことがしたい、じゃあこういう形にしたら面白いんじゃないかっていうことを、迷わずにやりたいんですよね。自分たちにブレーキをかけてしまったら、面白くないから」(木内)
フレッシュな音楽性を更新しながらも、バンドらしいぬくもりが損なわれないところも彼ららしさだ。今作に収録されている「忘れないで忘れないで」も、終盤にシンガロングが響き渡る流れがたまらない。
「ロックバンドをやっていたら、スタジアムでシンガロングが起きる光景を思い浮かべるじゃないですか。ずっと、そういう曲が欲しいと思っていて、やっと形になりました。でも、今はお客さんが目の前にいないから、寂しいですよ」(木内)
「作為的なことは言いたくないっていうのが正直あります」と語る山口さんの言葉が頷ける通り、まっさらな思いを届けてきた彼らにとって、ライブは特別なもの。今作収録のライブ音源からも、それは感じられる。
「サンボマスターは、僕の想像した遥か上を行ってしまっているので。フジロックのGREEN STAGEや、横浜アリーナに立てるなんて、3人とも思っていませんでしたからね。現実に追い付いていないところはあります。売れよう! と思ったこともないから。だから、展望としては、これからも感謝です」(山口)
CDには新曲2曲に加え、「日本列島ルーツの秘蔵音源」と題したライブ音源を収録。EP『はじまっていく たかまっていく E.P.』【完全盤(CD+DVD)】¥1,980 【通常盤(CD)】¥1,200(Getting Better Records)
左から、木内泰史(ドラムスとコーラス)、山口隆(唄とギター)、近藤洋一(ベースとコーラス)。 2000年結成、’03年にメジャーデビューし、数々の名曲を生み出してきた。’21年1月9日に「ラブ フロム サンボマスターat横浜アリーナ」開催予定。
※『anan』2020年9月23日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・高橋美穂
(by anan編集部)