俳優に加え、白黒写真家、さらには監督としての顔も持つ、斎藤工さん。映画をはじめとした“映像エンタメ”に深い愛を抱く斎藤さんに、愛する理由、またそれらが私たちに与える影響について伺いました。

延々と観てしまうので、自分でルールを決めました。

saitou takumi

――自粛期間中は、家にこもって何をなさっていましたか?

封を開けてなかった映画のDVDを観たり、字幕のない海外映画をじっくり観たり…。映画を紹介する番組をWOWOWでやっているので、時間をなるべく映画観賞に使うため、海外ドラマを観ることは自制していたんです。なので、まだ観てなかった『ウォーキング・デッド』や『ストレンジャー・シングス』を一気観しましたし、『愛の不時着』を観て、一人で泣いたりも(笑)。意識しないと朝からずーっと観続けるので、それはさすがにダメだと思い、映像作品が観られるテレビやパソコンは、午前中は触らない、という自分ルールを作りましたよ。

――まるで親にゲームを禁止された小学生みたいですね(笑)。

そう、まさにそれです。“光る板”は、午前中は禁止!(笑)

――改めて伺いますが、斎藤さんは、なぜそんなに映像エンタメに惹かれるのでしょうか?

そうですねぇ…。まずどんなテーマでも、映像エンタメにすることで娯楽性が生まれるのですが、一方で主題の社会性が強まる。それにより、物事にはいろいろな見方があるということを教えてくれます。’18年に作られた『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』という骨太な韓国映画がありまして、内容は、北朝鮮に潜り込んだ韓国人スパイが最高国家権力を持つ金正日に会い、あるミッションを遂行するというもの。“38度線”という国家間にある緊張感を扱ったという意味では、恋愛モノの『愛の不時着』と同じですが、その2作を比べただけでも、38度線に対する解釈や描き方の角度が、作品ごとに異なることがわかるんです。さらに、日本に暮らしている僕にとっては、“地続きの隣の国との緊張状態”というものは、情報はあるけれど実感はできない。でも作品を通じて、ある種の疑似体験はできる。映画は、時として自分から見える景色と真逆の景色を映し出します。それを見て「こんな世界があるのか」と感じることで、自分とは違う視点を得られる。逆に、全く違う文化を持つ国の作品でも、恋心や家族間の感情など、「同じだ」と思う描写に出合うと、共通性を見いだせる。

――なるほど。海外に行った際、違いに驚きつつも、親しい文化を発見したときにちょっとうれしくなる、あの感じですね。

そう、まさしくそれです。あともう一つ、映画は自分自身を深く知るきっかけにもなり得ます。たとえば、主人公の圧倒的な孤独を映し出した『ジョーカー』や、格差社会がテーマの『パラサイト 半地下の家族』といった映画は、描かれた悲しみや絶望が、自分の心の奥にある醜さや弱さ、貧しさなどに共鳴し、もしかしたらつらい思いをするかもしれないけれど、逆に癒されたり、救われることもある。そういった瞬間を求めて、映画を観ているところもありますね。ディズニーのようなポップな作品ももちろん好きですが、“誰にもわからない俺の孤独”みたいな、自分でもちょっと気持ち悪いと思う部分を救ってくれるような、恵みのある作品を求めている…そんな自分もいます(笑)。

さいとう・たくみ 俳優、映画監督。1981年生まれ、東京都出身。ドラマ『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)に出演中。今年から来年にかけ、映画『糸』や『シン・ウルトラマン』など、出演待機作が多数。

※『anan』2020年7月15日号より。

(by anan編集部)

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