ねむようこさんの『神客万来!』は洋館のホテルを舞台に、訪れる人たちと新人客室係のやり取りを描いた物語…と書くと不思議なところは特にないが、このホテルの特徴はお客さんが人間ではないこと。1日1組限定で、神様やおとぎ話のキャラクターなどが願いごとを叶えにやってくる、“人外専門”ホテルなのだ。

超有名人ばかりが訪れるそのホテルの人気の理由は?

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「アイデア自体は担当さんからいただいたのですが、私がちょうど妊娠中で過渡期だったこともあり、今まで描いてきた恋愛モノや仕事モノはちょっと違うかもと迷っていたんです。ファンタジーはもともと好きだし、面白い絵がたくさん描けそうだったので、魅力的に感じました」

訪れるのは、お供え物よりジャンクフードが好きな五穀豊穣の神様や、見た目はいかついけれども可愛いものが好きなドラゴン、ずきんを脱ぐと地味になる赤ずきんちゃんなど。

「大事にしているのは誰もが知っているキャラクターで、共通のイメージがあること。知っているつもりでも意外な悩みを持っていたりして、人間じゃないけど人間くさい一面を描けたらいいなと思っています。たとえば桃太郎なんかも勇ましくて頼りになるイメージがありますが、ちょっと残念なイケメンにしてみたりなど、楽しみながら描いてます」

超VIP(?)たちのお相手を務めるのが、どんなホテルなのか何も知らずに働き始めた、みちる。訪れる客に驚き、振り回されながらも、さまざまな要望に応えていく。

「ファンタジーは自分で世界を作ることができるのが魅力ですが、その世界のルールにほつれが見えた瞬間に、読む人は興ざめしてしまうのが難しいところ。それと自分でも面白いと思うのが、作画のしかたがいつもと違うんです。リアルな女性像を描くようなマンガだと、ポーズとかを写真で撮って参考にして、絵もリアリティを重視していたのですが、今回はその作業があまり必要ないというか、イメージを大事にしたほうが描きやすいんですよね」

もうひとつ、マンガを描くうえでの心境にも大きな変化が。

「今までは、求められていることを必死にすくい取っていたのですが、普段思っていることをもうちょっと作品に落とし込んでもいいんじゃないかなって思うようになっています。その点でも、ファンタジーは気持ちを乗せやすいのかもしれません」

珍客たちの意外な素顔に加え、ねむさんの新たな一面も楽しめそう!

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『神客万来!』1 客層もおもてなしも少々特殊な、ツバメ屋ホテル。家族経営のこのホテルでそもそもなぜ、みちるは働くことができたのか…。『週刊漫画TIMES』で連載中。芳文社 620円

マンガ家。2004年『FEEL YOUNG』でデビュー。女性誌・青年誌などジャンルを問わず活躍。近著『君に会えたら何て言おう』は妊娠・出産がテーマ。©ねむようこ/芳文社

※『anan』2020年7月8日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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見立ての甘さや準備不足などから壁にぶち当たる経験と、そんな自分の未熟さを省みるという意味の日です。何かに挑戦するというのは勇気のあることですが、周りから無謀だと止められるほどのことであれば、冷静になって考え直すのも大切なことです。日々実力をつけながら、味方を得たうえで改めて挑めばいいのですから。

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