独演会には老若男女が訪れ、チケットは入手困難。そんな大人気の実力派落語家・春風亭一之輔さんが、初のエッセイ集、『いちのすけのまくら』を上梓。落語が一級品なら、文章を書かせても一級品でした。

子どもが僕に、「このまま伸びていってもらいたい」と言うんです。

春風亭一之輔

――2男、1女のお父さんでもいらっしゃいますよね。お子さんたちもエッセイを読みますか。

一之輔 :いま、小学6年、3年、1年です。上の子なんか「へえ」とか言いながら読んでますね。たまに「ここウソじゃん」とかツッコむんですよ。いいだろ、そのまま書いたら面白くないんだ、脚色はあっていいんだって言い張ってます。

――お子さんたちに、高座を見せたりもするんですか。

一之輔:たまに連れていきます。感想を聞くと、「いいんじゃないですかねぇ、まっすぐ伸びていってもらいたいです」って言う(笑)。

――お子さんが、飄々としていて頼もしいですよね。一之輔さんがうっかり準備し忘れていた年賀状の文面を、しらっと息子さんに書かせた「年賀状」の回は、読んで噴き出してしまいました。

一之輔:息子が〈ことしもいちのすけをよろしくおねがいします〉って書き添えた話ね。あれは楽でした。でも、早く大きくなってもらいたい。「可愛さ」と「手が掛かる」を天秤にかけると、まだまだ大変ですからね。

――一之輔さんの「初天神」を見たことがあるんです。何も買わないよと出かけたお祭りで、息子の金坊がお父っつぁんに、あの手この手でおねだりする話ですね。あの噺の中で、一之輔さんがやる金坊の表情がすごくイキイキしていたというか。お子さんたちの表情を参考にしたりするんですか。

一之輔:こういう顔をするのか、と観察はしますね。子どもっていつもテンション高いかといえば、そうでもない。意外と冷めていたり。子どもの表情は間口が広いです。実際、表情とかを鏡を見て練習したりは僕はしないですからね。セリフの調子に、自然と表情もついていけばいいかなと思ってます。

――落語は声の芸でもあります。

一之輔:声の良さ、抑揚、ハリ、艶、リズム感とか、稽古でプラスアルファも出せるけれど、やっぱりアスリートみたいに、持って生まれたものは大きいです。

――単純計算で休みなしに1日2.5回高座に上がっている計算なんですが、ご自身でも、最近ノッてるなあ、なんかスランプだなあとかあるんですか。

一之輔:調子がいい悪いはありますよ、多少は。サイコーって日はないけど、お客さんに乗せられるときもあるし、30分なら30分、やりながら調整していく感じです。

――そういうところもスポーツみたいですね。

一之輔:僕は最初はテンション低いんです。だらーっと入っていくんです。いつも通りの感じで高座にも上がって、そのまましゃべり始めますね。落語って、おしゃべりですから。芝居の発表会みたいに、稽古してきたものをどーんと観客にぶつけるというより、「どうだい?」ってふつうの会話みたいに話しかける。で、自然に古典のネタに入っていくというのがいちばんいいのかなと。

しゅんぷうてい・いちのすけ 1978年1月28日生まれ、千葉県野田市出身。2001年、日本大学藝術学部卒業後、春風亭一朝に入門。NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞、国立演芸場花形演芸大賞など数々の受賞歴あり。年間900席を超える高座に出ている。公式サイト「いちのすけえん」http://www.ichinosuke-en.com/

『週刊朝日』で連載中のコラムが書籍化。執筆ツールは、現在、ガラケーから自慢のガラホに移行。連載から選りすぐった100本のコラムを、テーマ別にカテゴライズ。最終章には、落語好きで知られる俳優・東出昌大さんとの対談も収録されている。読むマクラともいえる味わい深さを体験して。『いちのすけのまくら』 朝日新聞出版 1500円

※『anan』2018年3月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)


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