
ⒸMagica Quartet/Aniplex,Madoka Project
願いの代償と抗えない運命を描き、多くのファンに衝撃を与えた『魔法少女まどか☆マギカ』。待望の最新作公開を記念し、少女たちが紡ぐ切なくも美しい物語の魅力を大特集! 本作の総監督を務めた新房昭之さんとキャラクター原案の蒼樹うめさんによる対談をお届け。
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『ワルプルギスの廻天』の新デザインができるまで
蒼樹うめ(以下、蒼樹) 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』(以下、『ワルプルギスの廻天』)のデザイン作業は若干複雑で、シナリオが決定稿になる前から断片的に作業が進んでいたんですよね。まず、2015年に開催された「〜シャフト40周年記念〜MADOGATARI展」用に作られた新作映像のために、まどかの新衣装をデザインしました。『ワルプルギスの廻天』で実際に登場する衣装はさらにそれをブラッシュアップしましたが、あれがまず最初のデザインだったと言えるかもしれません。それと同じくらいの時期に、『ワルプルギスの廻天』から登場した新キャラのデザインの前身にあたるような絵の起こしもしていたと思います。
新房昭之(以下、新房) いつも通りの流れでできたデザインもあれば、あとから振り返るといろんな人のアイデアが重なってできた、経緯がよくわからなくなっているようなデザインもあったりで、不思議な流れが途中にあった気がします。
蒼樹 シナリオができる前、劇団イヌカレー(泥犬)さんが作った大量のメモというか、スケッチがあったんです。そのデザインが先にあって、そこから魔法少女のデザインを起こしてみる、みたいな形で作業していきました。その中に、あとから完成した『ワルプルギスの廻天』のシナリオに合わせて採用されたキャラもいた…、みたいな流れだったと思います。
新旧の魔法少女の違いをデザインで表現
新房 『ワルプルギスの廻天』に関しては、最初から“魔法少女”対“魔女っ子”という構図に持っていきたいという想いがあったんです。ここで言う魔女っ子とは東映動画(現:東映アニメーション)で作られていた、クラシックな作品ジャンルのイメージです。だから魔女っ子は魔法少女と敵対する存在ではあるものの、“魔女”のように異形のものになってはダメだ、ということはあらかじめ決めていました。
蒼樹 魔女っ子と魔法少女の違いは瞳と制服でも表現しています。魔女っ子たちは瞳孔が魔法少女と明らかに違うんです。あれはデザインの段階で意識して描き分けていて、谷口淳一郎さん(キャラクターデザイン/総作画監督)によるアニメのキャラクターデザインでもその差がわかるように描かれていました。制服に関しては、魔女っ子は中のシャツが黒っぽくなっています。
新房 蒼樹先生には、魔女っ子たちが持っているステッキのデザインにチャレンジしていただきましたよね。
蒼樹 そうでしたね。
新房 「魔女っ子はほうきがあれば空を飛べるけど、魔法少女は飛べない」という違いを設定として考えていたんです。そう考えると、ほうきにあたるアイテムのステッキは、その見え方が重要でした。ちなみにこのルールは『ワルプルギスの廻天』以前から考えていたものなんです。だからこれまでの作品で魔法少女が一見飛んでいるように見える描写があったかもしれませんが、あれはあくまでジャンプなんですよ。
蒼樹 今作で新たに登場する紫丁香とセルマ・テレーゼに関しては、彼女たちの前身にあたるキャラクターのデザインをブラッシュアップしていく過程で「不人気なキャラクターを作りたくない」という想いがありました。丁香は最初から眼鏡をかけていたんですけど、「絶対に地味キャラとは思わせないぞ」、と。セルマも最初からツインテールの髪型で、こちらもベタなツインテールだと無個性なキャラクターだと思われかねないので、ボリューム感や耳のところの毛とのバランスなどにこだわりました。どちらもちゃんとヒロインに見える、華のあるキャラクターとして描いてあげたかったんです。そのためにデザインの要素を足したり引いたり、かなり試行錯誤を繰り返して全体のバランスを調整しました。
既存のデザインを変えるテーマを設定
蒼樹 継続して登場する6人の魔法少女たちに関しては、方向性として、新しさがしっかりあるものがいいというご指示をいただいていました。でもそれがかなり難しくて、最初のうちは悩みましたね(苦笑)。以前のデザインが自分に染み付いてしまっていたので、そこから大きく変えることにとても臆病になってしまったんです。ほんのわずかなアレンジを加えたデザインを上げ続けてしまって、そのたびに「もっとです!」と返ってきました。
新房 そうでしたね。
蒼樹 たぶん2回くらいそういうやりとりを繰り返して、3回目くらいで踏ん切りがついて。そこから私の中で勝手にテーマを決めたんです。というのも、どうして魔法少女の衣装が変わったのか、理由が欲しかったんですよね。私はデザインする時に理由を求めてしまうタイプで、単に「新しくなる」というだけだと、とにかく作りづらいので。
新房 その時、決めたのはどんな理由だったんですか?
蒼樹 『[新編] 叛逆の物語』では最後、悪魔になったほむらの力が強くなって終わるので、その影響を受けてデザインが変わったんだ、と。『ワルプルギスの廻天』では全員が何らかの形で力を縛られているんですが、まず、そもそもほむらの衣装以外、全員肌の露出が下がっています。さらに、例えばまどかなら胸下のところに鍵が付いているし、マミさんの服ははっきりと拘束衣がモチーフです。そして、ほむらだけは露出が上がっているんですよ。解放されているから。
新房 なるほど。衣装のデザインによって作品の世界観を伝えるということをされたんですね。
蒼樹 とはいえ、『まどか☆マギカ』はすごくたくさんの方の力で一つの作品になっているものなんだと、こうしてお話をさせていただくたびにあらためて感じます。ありがたいことに『まどか☆マギカ』を私の代表作と言っていただくことが多いのですが、私のキャリアを五重塔みたいな形で考えた時、真ん中に大きく柱として置いてはいけない作品だと考えているんです。なぜなら、私ひとりのものではないので…。でも、自分という柱を周りからしっかりと支えてくれる、大きな存在であることは間違いないです。
新房 それは『まどか☆マギカ』に関わっているみんながそれと近い意識を持っているんじゃないでしょうか。蒼樹先生も含めて、メインスタッフ“みんな”の力で『まどか☆マギカ』らしさは形作られているんだと思っています。
Profile
新房昭之
しんぼう・あきゆき アニメーション監督・演出家として、多数の作品に参加。劇場版『まどか☆マギカ』では総監督を務める。
蒼樹うめ
あおき・うめ 漫画家、イラストレーター。『まどか☆マギカ』シリーズでキャラクター原案を担う他、アニメにもなった漫画『ひだまりスケッチ』、『微熱空間』が連載中。新房昭之、虚淵玄、シャフトとユニット「Magica Quartet」を組んでいる。
Information

ⒸMagica Quartet/Aniplex,Madoka Project
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
悪魔となった暁美ほむらは、鹿目まどかを見守りながら、この世界をほしいままにしていた。しかし、ある日突然、そんなほむらの日常を揺るがす大きな異変が訪れる…。
anan 2510号(2026年9月2日発売)より
































