
Ⓒいまい/講談社
漫画『シルバー・スクリーン』の作者、いまいさんにインタビュー。
本当は、家に資料として映写機を置けたならいいのですが(笑)
「キネマ長夜座(ながよざ)」というミニシアターを舞台に、訳ありげな人たちが集う人間模様を描く『シルバー・スクリーン』。作品からは著者のいまいさんが持つ映画愛と映画館へのリスペクトがひしひしと伝わってくる。
「企画の最初の頃はインド映画やアクション映画などジャンルやテーマで魅力的な作品を紹介しようとも考えていたのですが、作品は映画館ではなくサブスクでも観られるじゃないかと。であれば『やはり体験なのではないか。映画館に実際に行かないと体験できないものを描写した方がいいのでは』と思い直し、いまのようなストーリーになりました」
どしゃ降りの夜、キネマ長夜座にずぶ濡れで飛び込んできた大柄の青年。有坂楓(ありさか・かえで)と名乗った彼の訳ありな佇まいを心配した先輩スタッフの壇(だん)や映写技師の元久(もとひさ)らの好意により、住み込みスタッフとして働くことに。楓の造型には、自身の経験が色濃く投影されているという。
「幼稚園の頃から、みんなと同じように普通にやれるようになりたいと思っていました。けれど、どうしたらそうできるのかもわからなかったし、自分の感情をうまく言語化することもできなかった。いまも楓が苦しむと、自分も一緒に迷走することがあります。ただ、いまは担当編集さんが俯瞰した目でサポートしてくれるのでありがたいですね。そんなふうに、助け合う仲間同士の関係も描いていきたいです」
作中ではまだ謎の多い楓の出自をほのかに匂わせる描写もあり、秘密が明かされていくこれからの展開も気になるが、本書のいちばんの魅力は、映画や映画館が、どれほど多くの人々の孤独を救ってきたか、その懐の深さを描こうとしていることだ。

Ⓒいまい/講談社
「楓も最初は壁を作っていたけれど、映画を通して少しずつ他者と向き合えるようになっていきます。あれも、実は自分にも似た経験があるんですよね。オフィスで働いていた頃、辞める最後の1年くらいにやっとマンガの話ができるランチ友達ができたんです。年齢や性別を超えて人と人とが心を開き、新たな関係を築く橋渡しをしてくれる。マンガや映画などカルチャーにはそういうパワーがあるんだなと感じます」
また、いまいさんの画力の高さにも注目。登場人物ひとりひとりの豊かな表情に加え、フィルムが回っているときの光や映写機の緻密な描写などにはうっとり見入ってしまう。
「本当は、家に資料として映写機を置けたならいいのですが(笑)、写真を観察したりと時間がかかりましたね、でも実際に取材させていただけたり、ありがたく楽しい体験でもありました」
Profile
いまい
マンガ家。岐阜県出身。今年3月に商業デビュー。出張編集部で現在の担当者と出会い、講談社のWebマンガサイト「コミックDAYS」にて本作連載中。
information
『シルバー・スクリーン』1巻
本書では、映画や映画館にまつわるエピソードも多く語られるが、それもこれも著者の映画愛が集めた知識の賜物。おまけマンガで取材時の様子も楽しめる。講談社 792円
写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
anan 2507号(2026年8月5日発売)より































