ポール・スミスのディレクションと共にピカソのさまざまな“時代”を辿る国際巡回展、「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」

現在、国立新美術館で開催中の国際巡回展「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」。巨匠、パブロ・ピカソの作品を“時代”ごとに緩やかな時系列で辿る展示空間のディレクションを、英国を代表するファッションデザイナー、ポール・スミス氏が手がけたことで話題になっている。


天才画家のたぐいまれなスピリットに迫る 展示空間の魔法

09: ストライプ/ストライプはポール・スミス氏のデザインのトレードマークのひとつ。ピカソの描く女性像に描き込まれたストライプに呼応して選ばれたカラフルなストライプで彩られた壁面は、無地の背景とは異なる効果をもたらす。(「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

2023年、パブロ・ピカソの没後50年を記念する展覧会がパリで開催されたとき、ある演出が話題になった。それは英国を代表するファッションデザイナー、ポール・スミス氏が展示空間のディレクションを手がけるというもの。

ポップでカラフル、ときに内省的な色調を帯びた空間で、生涯、大胆な挑戦を続けた巨匠の作品を鑑賞する試みは大きな反響を呼んで、20万人以上の来場者を記録。その展覧会を基にした国際巡回展が現在、東京・六本木にある国立新美術館で開催中だ。

ピカソは91歳で亡くなるまで、画家としていくつもの“時代”を遍歴したことで知られる。対象の捉え方、画面構成に大胆な変革をもたらしたキュビスム、青を基調に色を絞り描き続けた「青の時代」と呼ばれる期間。絵画にとどまらず、60歳を過ぎて南仏で陶芸作りに夢中になったときもあった。会場はそうした“時代”を緩やかな時系列で辿りながら16のセクションに分かれる。ポール・スミスさんは言う。

「展示は彼のさまざまな時代がベースになっています。親友を失い、夜通し絵を描いていた『青の時代』は寂しさの漂う部屋。隣は明るいピンクの部屋で、ここには古代イベリア美術の影響を受け前向きになっていった頃の作品を展示しています。各部屋にその時代ごとの気持ちがこもっているのです」

それぞれの部屋で異なる壁の色やプリントされているモティーフ、照明の明暗のもとで作品の前に立つと、鮮烈でマジカルとさえいえるそのエネルギーに圧倒される。自由で力強く、時に絶望に堕ち、時に天真爛漫なピカソの存在がすぐそばで感じられるようだ。

「ピカソは一生、子どものように絵を描き続けていたいと語っています。子どもは自由な発想を持ち、正直な気持ちで表現することができる。それが彼の憧れだったのです」 

00: トロンプ・レスプリ(精神を欺くもの)展覧会は、ピカソがゴミ捨て場から拾ってきた自転車のサドルとハンドルを組み合わせたアッサンブラージュ(寄せ集め)作品《牛の頭部》から始まる。展示室の壁一面にもサドルとハンドルがずらり。(「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

05: アッサンブラージュとコラージュ壁紙の一部や木片などをキャンバスに貼り付けるコラージュの技法は、描かれたものと見分けがつかず、錯覚を起こさせる。展示室の壁にもコラージュに用いられた壁紙の模様と似たプリントを施し、視覚的な効果を増幅。「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

07: 子ども時代ピカソが息子を描いた《アルルカンに扮したパウロ》で、パウロの衣装と同じハーレクイン(ダイヤ柄)のパターンが壁面を彩る。ピカソは生涯、繰り返し子どもを描いた。それは主題であり、インスピレーションの源だった。(「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

08: 闘牛スペイン生まれのピカソにとって闘牛は特別な意味を持つ。闘牛場に足繁く通い、牛や闘牛士をモティーフに生涯にわたり多くの作品を制作した。闘牛士の持つ赤いムレータ(布)、血の色を思わせる濃密な展示空間。(「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

15: 展覧会のピカソピカソの生前に開催された展覧会は数百に及び、記録にあるだけでも400点以上のポスターが残されている。かつて展覧会がやってくると、街中にポスターが貼られた、その光景を思い起こさせる空間を最後に展覧会は幕を閉じる。(「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景)

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世界で大変なことが次々に起こるなか、日常生活の中に遊び心を持つこと、子どものようなオープンマインドを持ち続けることが大切だとポール・スミスさん。ピカソとポール・スミス、ふたりが連れ出してくれる「遊び心の冒険」にジョインしてみては?

information

ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ

国立新美術館 企画展示室2E 東京都港区六本木7-22-2 開催中〜9月21日(月)10:00〜18:00(毎週金・土曜は20:00まで。入場は閉館の30分前まで)火曜(ただし8/11は開館)、8/12休 一般 ¥2,400ほか TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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写真・中島慶子 取材、文・松本あかね

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