影山優佳エッセイ集発売記念、特別公開第2弾「ささくれ」

写真・神藤剛

2026年7月30日、影山優佳さんがデビュー10周年の節目に初エッセイ集『影まで愛して』を発売。今回はその中から、「ささくれ」を特別公開します。


ささくれ

寒空の下、スクランブル交差点。都合よく止まらずに歩き続けることは難しい街。

私は今、信号待ちの三列目。悴んだ手を見るとささくれが出来ていて、隣の人をチラリと見ると、お揃いのささくれ。私はもう慣れちゃって痛くないんだけど、この人にとっては、どうだろうか。

沁みるか、そりゃ。

そう考えているとどうしても、ぺろっとめくれた元皮膚の存在が気になってしまってぴっと勢いよく引っこ抜いてしまった。普通に、うっかり涙が出ちゃうような痛みだな。行儀良く整列しているここいらのみんなは、泣きたくなった時どうしているのだろうか。人知れず溢すにしても、赤から青になるまでの時間はあまりにも短い。

私たちは待ってくれなくて、飲み込んで、どこかに溜め込んでいるのだろうか。しんどい時、泣けるなら泣いたほうがいい。抱きしめられる対象があるなら、抱きしめたり抱きしめてもらったほうがいい。私たちは縁取られた物体で、どんな人にもキャパシティがある。

特定の品目を摂取しすぎるとアレルギー反応が出てしまうように、心がいっぱいいっぱいになってしまったら、涙という物質に変わって表出する。

 

とはいえ、どうしても「今は泣いてはいけない」という瞬間が誰しもある。

一度涙にしてしまったら、それとともに溢れ出てしまう取り返しのつかないものがあるとか、どうしても声を出してなくことができない事情があるとか、状況はさまざま。人前で爆泣きしていると、人々はその中心点から半径を引いた円のように避けていく。

泣いて済むなら警察もいりませんわな。

私たちは生まれたその瞬間から泣く権利がある。泣いたら褒められるところから人生が始まるというのに、泣ける環境はひとつひとつ撤去されていく。人生の不条理な点だ。そんな時に私は、不条理に勝手な「理」をつけることにしている。どうせ泣くなら、ただ泣くだけじゃあもったいないからな、と。

影山優佳なりの涙の出し方と止め方がある。

 

そうすると、プライドが高く、見え方を気にする私は、インカメに映る自分を見た瞬間、現実に引き戻される。

「これが何かの拍子にAirDrop痴漢のように漏洩したらどうしよう」

そんな想像をして、戦慄する。そして、観察モードに移行していく。

 

人って、こんな顔で泣くんだ。

頬の筋肉は、こんな動き方をするんだ。

今の声紋はこんなふうに取れているのでは?

 

自然な感情の昂りが、私という物体にどう作用しているのか。自身が格好の教材になる瞬間だ。たいてい、とんでもなくきしょい顔面をしているので、気持ちが切り替えさせられる。「笑っていた方がビジュいいじゃん」「神様も逆張りの俗世から離れているだろうし、ビジュが良いに越したことはないっすねとか、思うよね」などと意識が私らしい方向に逸れていく。

 

この思考法は、自分の弱さを正当化できないみんなにおすすめする。

心は体にあり、体は心である。溜め込むと、どこかに無理が来る。出すことをやめるのではなく、バルブの緩みを正すための点検のような出して止める作業。

これは、私なりの吐き出し方だ。

信号が青になる。人の波に押されて、私は歩き出す。前に並ぶあなたとの距離がつまる。圧をかけるように進んでしまった。これは、後ろの人のせいであると思うか、私の体幹や辛抱強さのなさのせいであるか。不正解は、ない。

影山優佳さんのエッセイ集『影まで愛して』は2026年7月30日発売!

『影まで愛して』

本書はアイドルグループ卒業後、俳優として活躍する影山優佳さんによる初のエッセイ集です。「本当の自分=影を伝えたい」という思いを込め、「ほめ言葉をそのまま素直に受け取れない自分」「自分に限界をつくり諦めてばかりの自分」 といった……「本当の影山優佳」を文章で明かしています。巻末には購入者だけが楽しめる撮り下ろし写真による「袋とじ」ページなど、影山さんのビジュアルも存分に楽しめる一冊です。

【影山優佳さんコメント】

25歳となった今年は芸能活動10周年の節目の年でもあります。自分を知ってもらうことが苦手な私のほぼ全てが詰まっています。読み終えた後には私はもう跡形もなくなってしまうんじゃないかというくらいにはありのままで曝け出しております。あれやこれや、アディショナルタイムの「袋とじ」の私まで、知り尽くしてもらえたら幸いです。

発売日:2026年7月30日

予価:2,200円

体裁:四六版並製

ページ数:本文ページ数176P/ビジュアルページ数20P(口絵4P+本文カラーページ8P+袋とじ8P)

Amazon

Profile

影山優佳

かげやま・ゆうか タレント。2001年5月8日生まれ、東京都出身。0型。2016年5月8日「けやき坂46(現・日向坂46)オーディション」に合格しデビュー。多くのバラエティ・クイズ番組でも活躍、MENSA 会員になったことでも話題に。また『2022 FIFAワールドカップカタール』でコメントや予想で注目を集めた。2023年7月19日に卒業コンサートを開催し、グループを卒業した。現在はドラマや舞台など俳優業を中心に幅広く活動している。2026年7月、デビュー10周年の節目に初のエッセイ集『影まで愛して』を刊行。

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写真・神藤剛

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