
写真・神藤剛
2026年7月30日、影山優佳さんがデビュー10周年の節目に初エッセイ集『影まで愛して』を発売。今回はその中から、「好きだということ」を特別公開します。
好きだということ
私は自ら「好き」と言わないオンナだ。過度な期待も、過度な心配もさせないように。踏み込まれることのないように。自分を守ってばかりいる。
恋愛の話、ではないですよ?
……そうでもあるかもしれないけどね。
私はサッカーが好きだ。試合は毎晩欠かさず観る。リアルタイムで複数試合同時に観たり、土日は何時間も何試合も往復する。選手名鑑の小ネタは毎年の楽しみで、試合後にはファンサイトやファンのYouTubeを覗きにいくのも、試合に対する思考が深まって良い。選手に注目することはないのかと聞かれることがあるが、勿論気になることはたくさんだ。腓腹筋、回旋、体幹の使い方、重心移動、トレーニング、ボディメイク、知ってもいいことならなるべくたくさん知っていたい。自分が5歳からプレーしていたのもあって、素人ながらに真似できることがあればこっそり取り入れて日常のフットサル活動にも役立てたいとか思っちゃっている。
現地に見に行った時の興奮と感動はこれまたひとしおで、芝の匂いとスタジアムの歓声が体中に染み込んでいく感じも、ボールの軌道の美しさも、選手の動き出しの一瞬も、ひっくるめてサッカーの全部が好きだ。
好きなチームの話、好きな選手の話、好きな監督の話。誰に遠慮することもなく、素直に話せていた。ただただ好きだから、他の話と同様に話せていた。
いつからかなあ。言葉を選ぶようになってしまって。
サッカーに関わる仕事が増えて、サッカー好きを代表するような立場で言葉を発する機会が増えた。特定のチームへの愛を表明することで、それ以外のチームを応援していないかのように受け取られてしまうことが増えた。私へのヘイトならまだしも、私が好きなものも含めて包括的に嫌われるようなことがあると、それがすごく悲しくて。自分のためと私が好きなものを同じく好きでいてくれている人のために、安心安全な言葉を選ぶようになった。
誰も傷つけない、誰にも刺さらない言葉。目的地をぼかした、抽象的な愛情。
そのせいで、私が好きだったものを嫌いになってしまったんじゃないかと思わせてしまっていたら、本当に申し訳ない。
いつも通りの気にしすぎで悶々としていると、前世の記憶が蘇ってくる。グループのファンだという方に「○○さん推しなんです」と言っていただくことがあった。グループが愛されている状況が私にとって何よりの幸せで、本当に嬉しかった。
でもそれと同時に「影山推しではないんだな」と思ってしまう自分もいた。
おかしな話だ。好きと言う感情も好きで繋がる関係性も幸せなことだ。しかし好きを表明する言葉は、直線的な愛であると同時に、それ以外への線引きでもある。
受け取る側がそう感じてしまうのだから、発信する側も同じだけ傷つくリスクを背負わなければいけないのだろう。
きのこかたけのこか。奢るか奢られるか。誰推しか。選挙だって同じ構造をしている。どちらかを選ぶと表明した瞬間、その言葉は鋭く「点」となる。
人には頂点がたくさんある。好きなチームも、好きな選手も、好きな食べ物も、好きな人も、私という輪郭の頂点として存在する。頂点が増えれば増えるほど、好きを沢山持てているほど、その人の輪郭はだんだん円に近づいていくものだと思う。
しかし、私たちは「好き」のひとつを口にした瞬間、その一点だけが切り取られて、鋭角に見られてしまう。あるいは、まるで対角線の向こうに立っているかのように思われてしまう。その言葉が本来持っていた温かみごと、削れていく感じがする。
好きって、本当はもっと丸みを帯びているものじゃないだろうか。
どんな文脈でも、好きって言われたら嬉しいんだよな。
好きという言葉が、もっとカジュアルで、もっとていねいな言葉になってほしいと思っている。「カジュアル」と「ていねい」は矛盾しているように聞こえるかもしれないが、「おはよう」みたいな言葉って、そう表現できないかしら?
軽くて、でも毎朝ちゃんと渡しあって。受け取るたびにほっこりする。
私なんてもう自分の身を過剰にまもる必要などないのだから、周りに恵まれて、沢山の愛をもらっているのだから、大きな好きをそのまま伝える勇気を持ってみようじゃないか。私は「好き」と言えないオンナだ。
影山優佳さんのエッセイ集『影まで愛して』は2026年7月30日発売!

『影まで愛して』
本書はアイドルグループ卒業後、俳優として活躍する影山優佳さんによる初のエッセイ集です。「本当の自分=影を伝えたい」という思いを込め、「ほめ言葉をそのまま素直に受け取れない自分」「自分に限界をつくり諦めてばかりの自分」 といった……「本当の影山優佳」を文章で明かしています。巻末には購入者だけが楽しめる撮り下ろし写真による「袋とじ」ページなど、影山さんのビジュアルも存分に楽しめる一冊です。
【影山優佳さんコメント】
25歳となった今年は芸能活動10周年の節目の年でもあります。自分を知ってもらうことが苦手な私のほぼ全てが詰まっています。読み終えた後には私はもう跡形もなくなってしまうんじゃないかというくらいにはありのままで曝け出しております。あれやこれや、アディショナルタイムの「袋とじ」の私まで、知り尽くしてもらえたら幸いです。
発売日:2026年7月30日
予価:2,200円
体裁:四六版並製
ページ数:本文ページ数176P/ビジュアルページ数20P(口絵4P+本文カラーページ8P+袋とじ8P)
Profile
影山優佳
かげやま・ゆうか タレント。2001年5月8日生まれ、東京都出身。0型。2016年5月8日「けやき坂46(現・日向坂46)オーディション」に合格しデビュー。多くのバラエティ・クイズ番組でも活躍、MENSA 会員になったことでも話題に。また『2022 FIFAワールドカップカタール』でコメントや予想で注目を集めた。2023年7月19日に卒業コンサートを開催し、グループを卒業した。現在はドラマや舞台など俳優業を中心に幅広く活動している。2026年7月、デビュー10周年の節目に初のエッセイ集『影まで愛して』を刊行。





























