個人の努力で感染拡大阻止を! 知っておきたい“性感染症”について

ビューティ
2024.10.16
セックスやオーラルセックスなど性的交渉によって感染する病気、性感染症。なかには不妊につながる病気もあるので、感染予防を徹底したい。

性感染症

性感染症

個人の努力で感染拡大阻止を。

性的接触によって感染する性感染症は、誰もが罹る恐れのある病気、と産婦人科専門医の稲葉可奈子先生。

「パートナー一筋だから大丈夫と思っても、パートナーが誰かから感染している可能性があります。性感染症は症状が出ないことも多いので、無自覚で感染を広げる人がいるのです」

患者数が急増している梅毒も、初期だと症状が出にくい。

「梅毒急増の理由は不特定多数の相手と性交する人が増えているせい、とする説がありますが、それは疑問です。なぜなら、ほかの性感染症の数は概ね横ばいだから。それより、感染に気づかず広げる人が多いこと、検査を受ける人が増えたことが原因かと。性感染症は、個々の予防と全体の感染拡大防止が重要。性交渉のときはコンドームを使い、おりものが変、性器まわりが痒いなどの変調があればすぐ婦人科や泌尿器科で検査を受けて、陽性なら思い当たる人すべてに連絡してください」

【梅毒】感染に気づきにくいので要注意。

・どんな病気?
梅毒トレポネーマという細菌による感染症で、粘膜や皮膚の傷からうつる。セックスのほかオーラルセックス、アナルセックスでも感染。口の中に傷があれば、キスも危険。日本では1967年以降感染報告数が減少していたが2011年から増加傾向になり、2021年以降大幅に増加している。治療には、抗菌の飲み薬や注射を用いる。

・症状
性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹が出たりする。自覚症状はいったん治まるが、放置すると脳や心臓、血管などに合併症を引き起こし、障害が残る恐れも。

・注意!
症状が出たり治まったりするので、感染に気がつきにくい。妊娠中に感染すると、死産や早産になったり、生まれてくる赤ちゃんの神経、骨に影響が出る恐れも。

性感染症

梅毒報告数の推移
※2021年は、第1~52週2022年10月8日時点集計値(暫定値)、2022年は第1~44週2022年11月9日時点集計値の報告を対象。厚生労働省ホームページより

【尖圭コンジローマ】ワクチンで発症を防ぐことが可能。

・どんな病気?
イボの中に存在するヒトパピローマウイルスの6型、あるいは11型などによる感染症。このウイルスは、子宮頸がんの原因になるヒトパピローマウイルスとはタイプが異なる。セックスの際、皮膚や粘膜の小さな傷から感染。塗り薬による治療のほか、切除したりCO2レーザーで蒸散させたりして、イボを取り除く治療法がある。

・症状
性器のまわりや膣内、肛門に小さく尖ったイボができる。イボは淡い紅色や褐色をしていて、カリフラワー状やとさか状と表現されることが多い。

・注意!
感染から発症まで数週間~数か月かかるうえ、治療しても再発が多い。なお、子宮頸がん予防のHPVワクチンを接種することで、この病気の発症も予防できる。

【性器クラミジア感染症】無症状が多く日本で一番多い性感染症。

・どんな病気?
クラミジア・トラコマチスという細菌が引き起こす病気で、性交渉や性的接触の際に、性器や喉、腸などに感染。細菌を含んだ体液のついた手で目をこすると、珍しいけれど目にうつるケースも。国内では感染者数が40万人以上ともいわれていて、日本で最も多い性感染症にあたる。細菌を退治する抗生物質の飲み薬で治療する。

・症状
女性の場合はおりものが増える、下腹部が痛む、不正出血などの症状があるが、無症状なケースも多く、気がつきにくい。男性は尿道の痒み、排尿時の痛みなどが起こる。

・注意!
オーラルセックスによって喉に感染した場合は、咽頭炎になることも。女性は子宮の入り口に起きた炎症が子宮や卵管に広がり、不妊や流早産の原因になる恐れがある。

【後天性免疫不全症候群(エイズ)】ウイルスによって免疫力が低下する。

・どんな病気?
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して免疫力が低下し、様々な病気を発症した状態を指す。感染している人の体液や血液、母乳を介して、粘膜や傷口からウイルスが侵入。日常生活において感染することはまれである。以前は不治の病として扱われていたが、今は早期に治療を開始することで、通常の生活を送ることができる。

・症状
感染したときは自覚症状がほとんどない。初期に喉の痛みや倦怠感などが出ることも。エイズを発症すると免疫力が低下して、その他の感染症に罹りやすくなる。

・注意!
HIVを体内から完全に取り除くことはできないが、早くから飲み薬を使うことで、ウイルスの増殖を抑えることが可能に。感染が疑われる場合は、早めに検査を受けよう。

産婦人科専門医 稲葉可奈子先生 Inaba Clinic院長。気軽に受診できる婦人科を作りたい、と渋谷駅直結、東急プラザ渋谷内という立地に開院。著書に『シン・働き方~女性活躍の処方箋~』(きずな出版)があるほか、『女性の体のきほん』(ナツメ社)の監修を担当。

※『anan』2024年10月16日号より。イラスト・黒猫まな子 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)

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