凝りを放置すると手足が麻痺することも!?
在宅ワークが増えた昨今、整形外科医でカイロプラクターでもある竹谷内康修さんの医院では、首や肩、腰の痛みを訴える患者が増えているという。
「オフィスと違って仕事をする環境が整っていない家で、長時間パソコンに向き合うようになったことが原因だと思います。もともと、スマホやパソコンを見る時間が増えて姿勢が悪くなっていたところに、在宅ワークが追い打ちをかけた印象です」
でも凝りなんて病気じゃないしと、放置している人は要注意。悪化すると、深刻な事態になりかねない。
「凝りというのは首や肩、腰の筋肉が異常に緊張した状態のこと。それを放置してさらに悪い姿勢を続けていると、やがて背骨を構成する椎骨(ついこつ)やその中を通る神経までダメージを受けて、もっとひどい痛みやしびれ、手足の麻痺が生じることもあり得ます。そうなると、治療は困難。手術が必要になることだってあるんです」
最悪の事態を避けるには、早めの対応が肝心。セルフケアで、凝りの段階から解消しておきたい。
「自分で簡単にできる、2ステップのケア法をお教えします。ステップ1は、緊張した筋肉をゆるめるメソッド。ステップ2は、体を支える筋肉を鍛えて悪い姿勢を防ぐメソッドです。ただ、腰に関しては筋肉さえゆるめばOK。歩幅が大きくなるなど可動域が増えることで自然と筋肉が鍛えられて、正しい姿勢をキープできるはずですよ」
BAD CASE
スマホをいじっているうちに前かがみに。
スマホを目線より低い位置で持つと、首が前に傾いて背中が丸くなる。頭の重さは約5kg。首が前に30度傾くとその重さは18kgに、60度傾くと27kgに増えるので、首により負担が。
仕事に集中するあまり猫背に。
画面が目線より低いと、顔を近づけようと背中が丸まってしまう。椅子の背もたれに寄り掛からず腰で上半身を支えているので、疲れて骨盤が倒れがち。腰にも負担がかかる。
良い姿勢と悪い姿勢をチェック!
【OK】背骨のS字カーブは、頭の重さや体を動かすときの衝撃、負担を和らげる。肩は後ろに引いて胸を張る。腰は反らしすぎず、骨盤を立てて楽な状態に。
【BAD】首が前に倒れて背中が丸まり、S字カーブが崩壊。背骨が頭の重さを効率よく支えられず、首・肩・腰に負担がかかって凝りやすい状態。
スマホ首
首を前に倒してスマホを見ていると、筋肉がこわばって常時頭が前に傾いた状態に。ひどくなるとS字カーブの首部分が真っすぐ伸びる“ストレートネック”になり、背骨を通る神経が圧迫されてしまうことも。
パソコン肩
前のめりになってパソコンを長時間使っていると、猫背になって肩が前に丸まってしまう。すると肺が圧迫されるため十分に呼吸ができず、自律神経のバランスが乱れるなど様々な不調の原因になることも考えられる。
テレワーク腰
背骨が正しくS字カーブを描いていると、腰は少し反り気味に。しかし背中を丸めたまま長時間座っていると骨盤が後ろに倒れてカーブが崩れ、腰に負担がかかってしまう。悪化すると、椎間板ヘルニアなどになることも。
【スマホ首】に効くメソッド
首が前に倒れるスマホ首が定着してしまった姿勢を改善! こわばった筋肉をほぐし、正しい姿勢を保つ筋肉をつける。
STEP1:ゆるめる
【10秒キープ×3回/左右を替えて同様に】首の前側のストレッチ
スマホ首の人は、首の前にある斜角筋(首を動かすために働く筋肉)が収縮してこわばっていることが多いので、斜角筋を伸ばしてほぐすストレッチを取り入れよう。立った状態で行ってもOK。
1.椅子に座り、左手で座面の前側を持ち、右手は左の肩に当てて。リラックスして座りつつも、猫背にならないように注意。
2.首を伸ばして真上を見る。肩に置いた手や座面をつかんだ手を意識し、肩や鎖骨が上がらないようにするのがポイント。
3.真上を見た状態から、顔を右に向ける。左前側の首すじが伸びるのを感じながら10秒キープ。ここでも、肩や鎖骨は上げないで。
STEP2:安定させる
【力を入れて抜く動作×10回】チンタック
首の前側の深層筋を鍛えて、頭を本来の位置、つまり体の真上に来る姿勢で安定させるためのトレーニング。“チンタック”と呼ばれている。ストレートネックを解消して、ゆるやかなカーブのある首を目指そう。
1.自然な姿勢で立って、背筋を伸ばす。ストレートネックの人は、普通に立ったつもりでも写真のように頭が前に出ていることが多い。
2.首の前にある筋肉に力を入れて、アゴをできるだけ後ろに引く。力が入ったと思ったら2秒キープして力を抜く。
【NG】頭を後ろに倒すのはNG 。アゴを引いてもうまく力が入らず、首の前にある筋肉を鍛えられなくなってしまう。
【OK】人差し指で軽くプッシュしながらアゴを引く。これなら、首が反ってしまうのを意識的に防ぐことができる。
【力を入れて抜く動作×10回】強度UP
床に腹ばいになり、ヒジを90度に曲げて上体を起こす。そのままアゴを引くと、重力に抵抗する力が加わって負荷がアップする。
編集部選:スマホ首にいいアイテム。
セルフケアを助けるこだわりの設計。
数千人の姿勢改善をアシストしてきた猫背改善専門スタジオ「きゃっとばっく」の理学療法士、トレーナー、鍼灸あん摩マッサージ指圧師が開発したエクササイズツール。首や背骨をこのツールに乗せ、様々なエクササイズを行うことで、ストレートネックを改善したり、背骨本来のS字カーブを取り戻す助けになる。完成までに3年費やしたというこだわりの逸品。Re‐arch spine¥6,600(きゃっとばっく TEL:03・6228・1946)
お昼寝タイムに使える首サポーター。
人間工学に基づいて設計された構造。空気を入れて首に巻きつけると、アゴや後頭部、首などを支え、正しい姿勢をサポートしてくれる。新幹線や飛行機で座ったまま眠ったり、本を長時間読む、スマホを見るといったときも首が疲れにくい。ポンプ内蔵なので、手で押すだけで空気注入が完了。空気量を調整することで、好みの硬さにできる点も便利。スタイルポータブルネックフィット¥4,880(MTG TEL:0120・467・222)
竹谷内康修さん 竹谷内医院院長。整形外科医、カイロプラクター。著書に『頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える』(徳間書店)ほか。
ハイネックブラウス¥17,600(NOMBRE IMPAIR/ノンブルアンペール吉祥寺パークストア TEL:0422・26・8300) その他はスタイリスト私物
クロスバックトップス¥4,900 パンツ¥6,900(共にYES/KIT)https://www.kitstore.jp/
※『anan』2021年11月10日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・松木育未(LIGHT management) 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)