ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。

言葉と風景、どっちが先? ポエジーの新発見に肯定されて。

ゆっきゅん

小野絵里華さんの詩集『エリカについて』と出会ったのは去年の9月のことで、メディアにたくさん出るような人でもないし、SNSの発信もあまりされていないので、実際会うとどんな方なのだろう……とは思いつつ、作品を通して勝手に親しみを感じていた部分も大きく、お会いしてみるとやはり思った通りでした。焼き鳥屋での女子会の会話を詩にできる人なのだから。たったひとりの私に届くような詩を書く人なのだから。そんな小野さんと話せて嬉しかったのは、「風景>言葉」というタイプの創作についての話。詩を書く人には、描きたい(描かざるを得ない)“風景”が先にある人と、“言葉”自体が先にある人がいて、小野さんは以前、谷川俊太郎さんの詩についての評論で、谷川さんとご自身について「風景>言葉」の詩人であるのだと書いていました。考えたことなかった視点でしたが、私もそうだ! と納得させられて。私も作詞をするとき、特に最近は、歌にしないといけない情景や人間が目の前(というより、頭の中)にあって、どうにか伝えられるように自分の中の不完全な言葉を尽くす、という感覚があります。小野さんはそうではないと思いますが、私には自分がずっと言葉に対して責任を持てていないような、どこか申し訳ない気持ちがあって。でもそれは、言葉よりも私が本当に描きたかった景色や気持ちがずっと先にあって、それのほうが素晴らしいからだったのかもと思いました。私の作詞は、実は言葉自体ではなく、そこから立ち上がってくる情景こそが作品です、みたいな認識があったことを知らされて。だから、その発見に肯定されたんです。そもそも、私のはじめのポエジーは天井から降りてきたものだったのだし、それでいいのだと思えました。そして、言葉より風景が先にある人の表現は読書体験から始まっていないって話にも、読書家コンプレックスが強い私の心が救われたのです。

最近、9月に発売予定のアルバム制作に取り組んでいて、作詞をするぞと喫茶店に向かうとき、元ネタにするでもなく、なんならその日は開かなかったりもするのに、バッグに『エリカについて』を携えて何度も家を出ています。お守りというかおまじない? 創作と言葉に向き合うときにいったん思い出しておきたくなるのが小野さんの作品です。作品の影響が直接出ている部分はきっとないけれど、早く小野さんにも聴いてもらうんだという気持ちでなんか頑張れます。カラオケ行ってくれるらしい!

ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun

※『anan』2024年7月10日号より。写真・幸喜ひかり 文・ゆっきゅん

(by anan編集部)

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