東京・原宿に日本で最初のカルティエのブティックが誕生してから、今年で50年。その節目を記念して、カルティエと日本の深い結びつきを紹介する展覧会「カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』展――美と芸術をめぐる対話」が開催中。1847年にパリで創業して以来、変わらぬ開拓精神で新しいスタイルを追求してきたハイジュエリー・メゾンが、実は日本と深いゆかりを持つことはご存じ? 日本をはじめインド、中国の東洋文化がカルティエのクリエイションの主な源泉となったのは、3代目のルイ・カルティエがビジネスに参画してから。

カルティエと日本を結ぶ過去、現在、未来へ続く物語。

高い審美眼を持ち、美術愛好家としても知られるルイが集めた日本関連の書籍や骨董品は、デザイナーたちに無限のインスピレーションを与えたという。例えば、繰り返し登場する藤や桜のモチーフは、日本の美術から着想を得ているといい、市松模様などの染め物の型紙に見られる抽象的・幾何学的な紋様は、カルティエスタイルの形成に大きな示唆をもたらしたとか。

会場の表慶館は、皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念して建てられた、明治期を代表する優美な洋風建築。建物の右翼エリアでは、メゾンが保有する1850年代から2000年代に及ぶアーカイブコレクションを中心に、約200点が展示される。帯留めをブローチ、印籠をバニティケースに変え、梅・桜・藤をモチーフにしたブレスレットやイヤリングなど、作品に息づく日本の美を目の当たりにできるはず。

カルティエと日本の結びつきは、過去にとどまらない。カルティエ現代美術財団は、30年以上にわたって日本の多様な現代アーティストをいち早くヨーロッパに紹介する役割を果たしてきた。建物の左翼エリアでは、松井えり菜ら若手ペインターをはじめ、荒木経惟、川内倫子、束芋、村上隆、さらに北野武ら国内外16人の作品が並ぶ。歴史あるメゾンが日本のカルチャーやアートシーンへ飽くなき好奇心を持ち続けていることは、少し意外かも。けれど、未知のもの、評価の定まっていないもの、世界中のあらゆるものに潜む美を見出そうとする姿勢こそ、ルイ・カルティエから脈々と受け継がれた魂であり、枯れることのないエネルギーの秘密といえるのかもしれない。

05. 《「日本風の結び目」ブローチ》

《「日本風の結び目」ブローチ》カルティエ パリ、1907年 Marian Gerard, Cartier Collection ©Cartier
水引や帯の結び目を思わせるモチーフは、創業から3代目のルイ・カルティエの集めた日本の品々を思わせる。

08. 《ブローチ》

《ブローチ》カルティエ パリ、1903年 Nils Herrmann, Collection Cartier ©Cartier
帯に施された刺繍、陶磁器に描かれた絵など日本独特の意匠が、多くの美しいジュエリーのヒントに。

アート カルティエ

ジークフリート・ビング著『芸術の日本』第1巻(Libraire centrale des Beaux-Arts、1888-89年より)Archives Cartier Paris ©Siegfried Bing
19世紀後半にフランスで出版された書物には、上のブローチのデザインの元となった藤の花の刺繍が紹介されている。

01. 《大型の「ポルティコ」ミステリークロック》

《大型の「ポルティコ」ミステリークロック》カルティエパリ、1923年 Marian Gerard, Collection Cartier ©Cartier
1923~1925年の間に制作された、神社の鳥居(ポルティコ)をかたどったミステリークロックの第1作。

《ティアラ》 1937年_2

《ティアラ》カルティエ ロンドン、1937年 Vincent Wulveryck, Collection Cartier ©Cartier
過去に日本で開催されたカルティエの展覧会で展示された数々の名品も再び登場する。

アート カルティエ

松井えり菜『宇宙☆ユニバース』(2004年)Fondation Cartier Collections ©Erina Matsui ©Katsuhiro Sakai
宇宙をバックにした巨大な自画像は、パリで開催されたグループ展で展示され、直ちにカルティエのコレクション入り。

24. 澁谷 翔「日本五十空景」chunichi
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澁谷翔『日本五十空景』(2024年)©Sho Shibuya, Fifty Sky Views of Japan
NYタイムズ1面にその日の空をペイントするライフワークで知られる作家が47都道府県を巡り、地方日刊紙に空を描く50点の連作絵画を制作。歌川広重『東海道五十三次之内』へのオマージュ。

カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展――美と芸術をめぐる対話 東京国立博物館 表慶館 東京都台東区上野公園13‐9 開催中~7月28日(日)9時30分~17時(金・土曜は~19時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(7/15は開館)、7/16休 一般1500円 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2024年6月19日号より。文・松本あかね

(by anan編集部)

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