アルバム『大人の涙』はマカロニえんぴつならではのグッドメロディ、心に染み入る歌詞、繊細なアレンジでありつつも、“大人”ならではの奥行きや多彩な遊び心がたくさん詰まった作品になった。

悲しみを整頓させて、人一倍優しい人間になっていけたらいい。

Entame

左から、高野賢也(Ba)、はっとり(Vo&Gt)、田辺由明(Gt)、長谷川大喜(Key)。

「どの曲で描かれている人たちも、自分のために涙を流すというよりは、人の痛みや辛さに共鳴して涙を流す人たちに思えました。そういう涙はきっと大人の涙なんだろうなと。我々も30歳を迎えて、懐の深い大人になっていこうという思いも後押しし、アルバムタイトルにしました」(はっとり)

「音数をあまり多くせず、聴かせるところは聴かせるけど、ピアノリフやギターのハモリのところは一歩下がって演奏しました。それを“大人なアレンジ”と捉えてます」(高野)

「以前は弾いてないと不安になるところがあったんですが、落ち着いて自分が弾くフレーズを伸ばせるようになりましたね」(長谷川)

1曲目の「悲しみはバスに乗って」は温かみと切なさのあるミドルテンポのアンサンブルから、途中でテンポが速くなり、サビで一気にエモーショナルに開けるアレンジがとても聴き応えがある。

「このアレンジは今までやってきたことの集大成ですね。メンバーが歌と歌詞を活かそうという思いでアレンジに臨んでくれている感じがして嬉しかったです」(はっとり)

「歌詞も含めていい曲だなと思いました。そういう時は自分も一緒に歌っているように、耳に残るアクセントになるフレーズを弾きたくなるんです。それでいて、歌が聞こえるような意識をしました」(長谷川)

「サビのエレクトリックピアノは大ちゃん(長谷川)の『ここは俺に任せてくれ』っていう気合がすごかった。すごく味のあるフレーズを弾き始めたので、ギター陣は出る幕がないなと思いました(笑)」(はっとり)

「悲しみはバスに乗って」は特に人生の悲喜こもごもを感じさせる歌詞になっている。

「人は一人で生きてはいなくて、今はいない誰かに思いを馳せたり、誰かと手を繋ぐことでこれから進む道への不安を紛らわせていると思ってます。“悲しみ”という言葉がタイトルにもありますが、決して重い歌ではなく、希望に満ち溢れた歌として書きました。経験した悲しみが自分の中に蓄積されていくのはしょうがないこと。それを無理に忘れたりなかったことにしようとしても染みて滲んでいくものだから、自分の中で整頓させて、人一倍優しい人間になっていけたらいいなと思ったところはあります」(はっとり)

ラストに収められたはっとりさんの弾き語りによる「ありあまる日々」ともリンクする歌詞だと話す。

「『ありあまる日々』は、もう戻れない日々を憂いています。でも、そもそも憂いたってしょうがないよっていうことを言いたい歌でもある。この曲を悲しみを受け入れていこうと捉える人もいれば、悲しみを咀嚼しようと捉える人もいるんじゃないかな。そこは聴く人に委ねたいですね。だから、自由度高めなアルバムだと思ってます」(はっとり)

マカロニえんぴつのアルバムというと、遊び心が爆発した曲が1曲収録されているイメージがあるが、今作はまず、メロコアとスカコアとハードコアとオペラがミックスされたような「Frozen My Love」が収められている。

「はっとりと『メロコアをやろう』って話したところから始まったミクスチャーな曲ですね。めちゃくちゃ楽しみながら作りました」(田辺)

「リズム隊は2人とも汗だくでレックしましたね」(高野)

「久しくこれだけ速いBPMで演奏してなかったからね(笑)」(田辺)

そしてもう一曲、ヤユヨのリコさんを招いた昭和歌謡のデュエット曲「嵐の番い鳥」も収録されている。

「俺が『昭和歌謡をやりたい』って言い出したところから始まりました。でも、フォーマットに沿ってただ俺がしっとり歌っても仕方ないと思ったのでリコちゃんを誘いました。完全にウケ狙いです(笑)」(はっとり)

振り切ってとことん遊んでしまえるようなムードは、大人ならではの余裕なのだろうか。

「確かにおっしゃる通りですね。これまでは1曲面白い曲があったけど、今回は2曲あります。踏み外すことは前からやってますが、悪ふざけにいかないぎりぎりを狙って嗜んでる感じが大人なのかもしれない(笑)」(はっとり)

5

メジャー2ndフルアルバム『大人の涙』。ドラマ主題歌「愛の波」「リンジュー・ラヴ」などを含めた全13曲収録。【初回生産限定盤(CD+Blu‐ray/CD+DVD)】各¥6,600 【通常盤(CD)】¥3,300(TOY'S FACTORY)

マカロニえんぴつ 2012年結成。2022年末、「第64回日本レコード大賞」で「なんでもないよ、」が優秀作品賞を受賞。

※『anan』2023年9月6日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) 取材、文・小松香里

(by anan編集部)

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