意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国葬」です。

開催決定経緯に問題あり。国を分断する結果に。

society

7月に銃撃を受けて亡くなった安倍元首相の国葬が9月27日に日本武道館で行われました。参列者は約4200人。うち700人強が海外から参列。会場の外の一般献花には想定以上の人が駆けつけ、長蛇の列となり、2万6000人近くが花を手向けました。並んでいる方に取材したところ、長期政権で世界に日本の存在を示したことに感謝する声がいくつも聞かれました。

その一方で、国葬に反対の声を上げる市民グループが武道館や国会議事堂周辺でデモを行いました。日比谷公園、大阪、広島などでも反対の集会が開かれ、憲法改正や非正規雇用、ジェンダー問題など安倍政権が残した課題に対して各グループが訴えていました。直前の世論調査では、反対が賛成を上回っており、9月5日時点で国葬中止を求める署名は40万人を超えていました。

国を二分するような状況。これだけ分断が深まったのは、国葬の基準が曖昧で、国会が開かれずに閣議決定し、国民に対して丁寧な説明のないまま実行されてしまったことが大きいです。

戦前には「国葬令」があり、皇族と、国家に功労があった者には、特別の意味をもっての国葬が開かれました。ところが何を功労とするのか規定が難しく、戦後、国葬令は失効しました。戦後に皇族以外で国葬が執り行われたのは、1967年の吉田茂元首相だけです。当時の天皇が「なんとかしてやってくれ」と言い、国会議員のなかで根回しがなされ、国葬を開く機運を作ったと関係者は話しています。

ちなみに佐藤栄作元首相は国費以外に国民から寄付を募った「国民葬」。中曽根康弘元首相は内閣と自民党の「合同葬」の形をとりました。今回の国葬にかかった費用は警備費などを含めて総額約16.6億円といわれています。

岸田首相は、国葬を開く理由の一つに、弔問外交を掲げていました。今回のような開催経緯の不透明さは、世界に対しても、ガバナンスの利いていない国という印象を与えかねません。人々の悼む気持ちまで分け隔てられていったことは残念でなりません。今回どういう議論があったのかを記録に残し、次世代の教訓として伝えることは大事な責任ではないかと思います。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年10月26号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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