意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「円安と物価高」です。

放っておけば改善する問題ではない。稼ぐ力が必須!

society

現在、1990年代以来の円安が急速に進んでいます。一番の危機は、当時と違い、今の日本は“稼ぐ力”が失われてしまっているということです。

2008年のリーマンショック以降、アメリカは金利を低く抑える金融緩和政策をとっていました。そうして市場にお金を回した結果、インフレが起きてドルの価値は下がってしまいました。これでは国民生活が疲弊する、ドルの強さを取り戻そうと、米連邦準備理事会(FRB)は、6月に0.75%の利上げを決めました。世界中の主要な中央銀行もアメリカに合わせる形で利上げを行っています。ところがその波に乗れなかったのが日本です。

日本は実質賃金が’90年代から上がっていません。さらに金利まで上げたら、国民はお金も借りられずに逼迫します。日銀は、大胆な金融緩和を継続することにしました。すると投資家たちは円に替えたところで実入りはないので、円を売りドルに替えます。そのため、ますます円安が加速しているのです。

欧米諸国が利上げできたのは、リーマンショック後の世界的不景気を経ても、賃金は上昇してきたからです。38の先進国が加盟するOECDの1997年~2018年の実質賃金の推移を表すグラフを見ると、どの国も右肩上がりなのに対して、日本だけがゼロラインよりも下で、ゆるやかに下降。日本は物価が高騰しているにもかかわらず、賃金が下がっているのです。今では日本の平均賃金は、アメリカの約半分。日本の賃金は、OECD平均よりも下回っており、GDP世界3位の経済大国とは到底思えない状況です。

日本はサービスが充実していてモノが安く手に入るので、賃金が上がらなくても暮らしはなんとか成り立っているように見えますが、いつ崩れてもおかしくない状態だという危機感をぜひ共有していただきたいと思います。政府は物価高に対して、ガソリン代を補助していますが、一時凌ぎの補助で乗り越えられる問題ではありません。日本は稼ぐ力を持たなければならず、それには、デジタルや新エネルギーなど新規事業への投資が必要です。また、グローバルな人材の育成も行わないと、新しい産業は生まれないと思います。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年7月27日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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