渡辺あやさんのオリジナルブラックコメディに主演。
「真は大変なことから、ことなかれ主義で逃げ続けてきた人。好感度という鎧をつけて立ち回ってきたけれど、転職した大学で不祥事の嵐にひとり放り込まれ、その鎧がいとも簡単に剥がれます。その時に出る情けなさはしっかり出そうと意識して演じました。コメディということで、本人はいたって真面目で必死なのに人には滑稽に見える姿を、共演者のみなさんとバランスをとりながら出せたらとも思いました」
脚本は『カーネーション』や『ジョゼと虎と魚たち』などで知られる渡辺あやさんによるオリジナル。そして、出演者には松重豊さん、國村隼さんら、錚々たる役者がずらり。
「時世を切り取る鋭い観察眼でもって書かれた渡辺さんの脚本の強さがあってこそ、これだけのキャストが集まったと思いますね。会議室に一堂に会するシーンがあるんですが、みなさん本気で演じて、本気でふざけるんです。真面目に、コミカルに、絶妙なバランスでのお芝居を真っ向から受けられることは、今回主演という立ち位置でやらせてもらったからこそ味わえた贅沢でした」
また、「聞くだけでワクワクする」というユニークなタイトルには、ある想像を巡らしている。
「渡辺さんが僕の仕事モードな振る舞いを見て、お考えになったのかもしれません。というのも、所属するトップコートの社訓が“クリーンな品とポップさ”なんですけど、僕には初対面の方とお会いする時に、その2つを徹底して意識する癖がついてるんです。渡辺さんがそこを見抜いてタイトルをお考えになり、真のキャラにも取り入れたら面白いと思ったのではないかと。答え合わせはしていないので、想像ですけどね」
芸能界にいる以上、意識せざるを得ない好感度。どう考えている?
「CMもやらせていただいてますし、常日頃気にしています(笑)。実際、日本の芸能界は好感度に支えられている面も大きいと感じますね。たとえばハリウッドスターは選挙で支持する候補者を明言しますけど、日本では『これを言ったら、こうなるだろうな』という結果が発言に常にくっついてくるというか。かといって、海外の見様見真似で好き放題言うのも違うと思うんです。その国それぞれの宗教や文化があり、国民性も異なりますから。ただ、もう少し日本に風が通るようになるといいなと。エンターテインメントも、見てくださる方の心に風を通したり、癒したりするものであってほしい。僕は、作品の意図や本質をそのまま届けることも役者の仕事だと思っています。なので、ネットのコメントに左右されて、本質から外れることは避けたいんです。そのためにもテレビドラマが前に全部撮り終えられるフォーマットで作れるといいですね」
『今ここにある危機とぼくの好感度について』 元局アナの知名度とキャリア、そして抜かりなさを買われ、大学の広報職に就いた神崎真。転職先で研究不正疑惑やテロ予告など次々と問題が勃発。何とか言い逃れようとするが、クセの強い上司や正義感に溢れる新聞部の学生たちに振り回されてしまう。『今ここにある危機とぼくの好感度について』4月24日より毎週土曜21:00~NHK総合にて放送。
まつざか・とおり 1988年10月17日生まれ。神奈川県出身。2009年、『侍戦隊シンケンジャー』主演で俳優デビュー。'19年、『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。公開待機作に『いのちの停車場』『孤狼の血 LEVEL2』など。EX『あのときキスしておけば』が4月30日スタート。
※『anan』2021年4月21日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・TAKAFUMI KAWASAKI(MILD) ヘア&メイク・髙橋幸一(Nestation) インタビュー、文・小泉咲子
(by anan編集部)