メリル・ストリープ&アン・ハサウェイ── 2人が明かす『プラダを着た悪魔2』の舞台裏

『プラダを着た悪魔』の公開から20年。あの伝説のファッション誌“ランウェイ”編集部が、メリル・ストリープとアン・ハサウェイのコンビで再びスクリーンにカムバック。プロモーションのために日本を訪れたお二人にインタビューを行いました。新作の舞台裏やこの20年で激変したファッション業界について、そして変わらない俳優としての矜持といったテーマをユーモアとリスペクトを交えながら語ってもらいました。

Index

    「誰もがみな、新しい役割に合わせて適応していく必要がある」

    ── 1作目から20年、ファッション業界をめぐる景色はどう変わりましたか?

    メリル・ストリープ(以下、メリル) 1作目を撮ったのは、iPhoneが発売される1年前。スマートフォンの登場によって業界全体が激変したように感じます。ビジネスモデルも、雑誌業界も、すっかり変わってしまった。1作目の時点でもすでに雑誌業界は危うい状態でしたが、今では本当に、オンラインへ誘導するための広告みたいなものになってますよね。ファッションはストリートから湧き上がるようになって、業界のキュレーターたちはむしろそれを必死で後追いしている。どうやって採算を取るか、その仕組みも様変わりしてしまいました。

    アン・ハサウェイ(以下、アン) SNSのインパクトは、いくら強調してもしすぎることはないと思います。特にファッションのようにビジュアルがすべての世界では。1作目で描かれていたファッション業界というのは、はっきり区切られたものすごく内向きで閉鎖的な世界でした。「誰を中に入れるか」を決めるゲートキーパーがいましたが、その概念は完全になくなりました。ある意味で民主化されて、個人のスタイルが花開いていったし、「ファッショナブルである」道はひとつではなくなり、自分なりの解釈に完全に委ねられている。それは本当に素敵なことだと思います。

    ── 劇中の二人と同じく、お二人にも“葛藤”や“プレッシャー”を受けるような場面があったかと思います。どのように乗り越えて、今のお二人があると思いますか?

    メリル 俳優というのは、他の業界と比べてちょっと特殊な仕事。だってこちらは、作品が終わるたびに次々と失業し続けているような状態だから。何ひとつ確かなものはありません。しかし、ある意味で他の業種のたくさんの人たちが、現在同じような状況にある気がします。私の父は同じ会社で40年間勤め上げましたが、今の若い人にはもう想像もつかない世界ですよね。だから、私たちはみな同じように新しい役割に自分を合わせて新しい現実に適応していかなくてはいけないと感じています。楽観的でいなくちゃって。

    ── アカデミー賞俳優のメリルさんからそうお聞きするとは、少し意外でした。

    メリル 関係ないわよ。オスカーを獲った人なんて、何人もいるんだから(笑)。

    アン そうですよね。オスカー像が、何かを解決してくれるわけじゃないですから。今回の映画は、本当にさまざまな人々によって、愛を込めて作られた作品です。観る人を喜ばせたい、楽しんでもらいたいというその一心で。1作目と同じで、皆さんがそこから何を受け取ったとしても、それはあなたが“あなた”だからこそ。私にとってこの作品の核心は、「私たちは本当の意味では一人では生きていけない」ということだと思っています。人は、誰かと一緒にいるときに一番いい仕事ができると思うから。

    「本作はファッション版『トップガン マーヴェリック』」

    ── この20年間、世界中の観客に楽しみにされ、愛されてきた特別な作品です。撮影現場やプロモーションを通して、この作品がみんなにとってどういう存在になっていると感じましたか?

    アン 完成した映画を観たとき、自分自身にとっても強く反応できる作品に仕上がっていて本当に幸せでした。同時に、これは自分のためだけのものじゃない、関わってくれたすべてのスタッフ・キャスト、そして観てくださる方たち全員にとって本当に大切な作品なんだ、と実感しました。だからこそ、楽しみにしてくれている方たちの希望や期待を意識しながら、自分の主観ではなく、もし自分が出演者ではなく一観客だったらこれは満足できる作品だろうか、と考えていました。

    正直な感想としては、いろんな価値観があるから、全員が全員満足するとは限らないかもしれない。でも、きっと多くの人が愛してくれる作品になっていると思います。意見が分かれるポイントやバカバカしいシーンもあるけれど、それぞれが大いに楽しんでくれることでしょう(笑)。結論、この映画はただただ、“愛と喜び”についての映画なんです。

    メリル これはファンタジーですから。面白い側面と、一人ひとりの深部に流れているシリアスなものとが両方あるんです。

    ── 本作には数多くのトップメゾンや企業が協力していると伺いました。実際のセットや衣装に囲まれて、前作とのスケールの違いを感じる場面はありましたか?

    メリル 1作目のバジェットは今回の何十分の一くらいで、当時パトリシア(・フィールド)のアシスタントをしていたモリー・ロジャースが、今作ではコスチューム・デザイナーを務めています。1作目を撮影していた当時、多くのメゾンやデザイナーがアナ(・ウィンター)を怒らせることを恐れて、コラボを渋っていました。だから本当に、衣装集めには苦労した記憶があります。ニュージャージーの古着倉庫まで行って、誰も欲しくないようなビンテージを買い漁ったり。当時、協力してくれたのはヴァレンティノだけでしたが、そのなかで前任のパトリシアはよくあれだけのワードローブを寄せ集めてくれたなと思います。今回では1作目のヒットもあって、みんなが協力したいと申し出てくれました。

    アン この映画はファッション版の『トップガン マーヴェリック』なんです。あの映画にドッグファイトがあったように、私たちにはランウェイがある。

    メリル まさにキャットファイトよね。

    アン 撮影中に適応しなければならなかったのは、パパラッチと、ロケに集まる大群衆。私たちのファッションが、撮影の段階で先回りして“消費”されてしまっていたんです。先ほどメリルが話していた “新しい現実に適応する” 話とつながるんですけど、ミラノでの一部のシーンは、クローズドな環境を徹底して撮影を行いました。だから観客にも「ご心配なく、まだ全部は見ていませんよ」と言える。それが私たちにとっての “爆発シーン” であり、この作品なりの “エピック(壮大さ)” だと思います。

    役作りのために互いに刺激を与え合っていること

    ── 撮影中、お互いからインスピレーションを受けた部分があれば教えてください。

    アン 私、幸運なことにメリルさんのお子さんとも友人なんです。3度のアカデミー賞を受賞している方が「自分は他の人と変わらない」と言っているのを見ると、つい「誇張じゃないの?」と疑いたくなります(笑)。でも、実際に近くにいると、彼女が本当に地に足のついた、本物の方なんだと分かる。それが私にも大きな刺激を与えています。「自分が何者であろうと、それと並行して “ちゃんとした一人の人間” であろう」と思える。それは本当に勇気をもらえることなんです。

    メリル ありがとう。私こそ、アンと仕事をするたびに学ばせてもらっているわ。とくに演技という点では、生きているすべての瞬間に対して、常にオープンであろうとすることを実践してる。長く保ち続けるのは難しいけれど、本当に素晴らしいことよね。アンは、押しても押しても起き上がってくる、あの“起き上がりこぼし”のお人形みたい。だからこそ、1作目は多くの人々に愛されたんだと思うの。

    アン 私、わざと“大きく”演じることがあるんです。だって、出してから引いていく方が、抑えてから出すよりスムーズだから。今回もデビッド(・フランケル監督)から1テイクのあとに、何も言わずハンドサインで「もう少し抑えて」と言われたりして。私はもう「次に何を言われるか分かるわ」って構えていて、彼はただ手で“抑えて”ってジェスチャーするだけ。それに対する私の返しはいつも「じゃあ、月を楽しませるのは誰なの?」って。だって、私の演技は時々、月にも見えちゃうくらい大きいから(笑)。

    ── 20年ぶりに同じ役を演じるにあたって、ウォーミングアップはされましたか?

    メリル アンはYouTubeで2シーンだけ見ただけで、1作目を観返さなかったと言っているけれど、私は“どんな映画だったか”を思い出すために、まず作品を観返しました。そうやって少しずつミランダを思い出していった。決め手はウィッグでした。被った瞬間に、「あ、彼女はこの人だ、そこにいる」って分かったの。やっぱり衣装やヘアメイクといった外見は、役作りにおいてもものすごく助けになるんです。衣装、それから靴。そうやって彼女の全部を、思い出していきました。

    アン 製作が決定して、7月にクランクインの予定だと聞き、ワクワクしていた直後に、公開は翌年5月だと知らされました。撮影終了から公開まで9ヶ月もないというのは、ポスプロ期間としてはとても短い計算なんです。これは大変な挑戦になるぞ、とプレッシャーを感じるとともに、「悩んでいる暇はない、ただやるしかない」とも思いました。それが大きなモチベーションになりました。

    素晴らしいキャストの皆さんと再びタッグを組めたことも大きかったですし、何より私を“あの空間”に引き戻してくれたのは、音楽でした。1作目のセオドア・シャピロのスコアを聴き返したら、それがリズムになって、弾むような感覚が自然と戻ってきました。あと思い出したのは、1作目のときの私は、実はキャラクターをきちんと理解できていなかったということ。それでもデビッドが見事な編集で私を救ってくれました。そう考えると、キャリアを重ねた今のほうが、役柄を理解できている分プレッシャーは少なかったかもしれません。

    ── 映画のなかで、お気に入りの衣装はありますか?

    メリル 私の一番のお気に入り? 1日の終わりに楽屋で履く、もこもこのUGGのスリッパかしら。スクリーンの中の衣装だと…たくさんありすぎてもう一度観返さないと(笑)。

    アン 私の衣装じゃないんですけど、ミラノのガッレリアをミランダが歩いているシーンで、メリルが着用していたアルマーニが本当に素晴らしかった。撮影現場で見たとき、こんなにゴージャスな衣装は見たことがないと思ったくらい。その日は午前2時から本作で最後の撮影だったんです。絶対に忘れられません。あとは、アンディが最後に着る “ファイナル・ルック” ですね。

    メリル 私もあの衣装が、一番好きよ。

    アン “真のスタイル” とはこういうことなのかと、これからご覧になる方たちにも思っていただけると思います。

    information

    『プラダを着た悪魔2』

    監督:デヴィッド・フランケル

    出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチほか

    5月1日(金)GW 劇場公開

    配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

    © 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved

    取材・文 市谷未希子

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