女優にとっての「年齢の壁」は「とても大きな壁なんです」梶芽衣子が語る

2021.2.15
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは女優の梶芽衣子さん。第2回は「脇役の大切さを学んだ、思い出の作品」。

誰しもが当たる年齢の壁を、時代劇で超越!

kaji

中村吉右衛門さんがドラマに出られる、しかも池波正太郎先生原作の時代劇と聞き、テレビ局の方に「どんな役でもいいから出してほしい」とお願いをし、出演が決まった『鬼平犯科帳』。吉右衛門さんは歌舞伎役者ですから、ご一緒できるなんてまずありえない。この機会を逃すまいと、ルール違反だと分かりながらも、お願いをしてしまいました。

28年間の出演ではたくさんのことを学びましたが、特に心に残っているのは、“脇役の大切さ”。私が演じた“おまさ”は密偵の役で、見張って尾行して報告する、毎話ほぼそれだけの芝居です。でも脇だからと手を抜いたら、“徒(あだ)や疎(おろそ)か”で終わりますし、何より作品が良くならない。それに、脇役でも光る仕事をすれば誰かの目に留まり、それがきっかけでセリフが増えることもある。実際私はそういう経験もしました。徒や疎かで終わらせない。たぶんそれってきっと、どんな仕事にも言えることなのでは、と思います。

今となっては、この役者の仕事が大好きですし、天職…とまでは言えませんが、この仕事をしながら人生を送れていることに、この上ない幸せを感じています。でも、そう思えるようになったのは、67歳か68歳くらい…。42歳でスタートした『鬼平』が終わる2~3年前に、やっと芝居が楽しいと思えるようになりました。なかなか長い道のりでしたね。

人間、特に女性は、誰しも年齢の壁に当たるときがあると思いますが、女優という職業にとっては、それはとても大きな壁なんです。例えば30代まで、恋愛モノのヒロインやキャリアウーマンをやっていた人が、40代でいきなり母親役にシフトできるかというと、なかなかそうもいかないのが現実です。私はそのタイミングで、あまり年齢を問われない時代劇に出演でき、同じ役柄をずっと追求できたのは、幸運だったと思います。ちなみにおまさは36歳でしたが、28年続いて番組終了時の私は70歳。随分年を取りました(笑)。

かじ・めいこ 1947年3月24日生まれ、東京都出身。2/11より公開の西川美和監督作品、映画『すばらしき世界』に出演。’70年代の代表作「女囚さそり」シリーズは、今なお大人気。

※『anan』2021年2月17日号より。写真・中島慶子 取材、文・河野友紀

(by anan編集部)