笑って泣いてお腹がすく、渡辺俊美さんのお弁当エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』が文庫に!
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「本を出してミュージシャンというより“お弁当の人”と言われることが増えました。最初は違和感があったけど、今は普通に受け入れてます」

渡辺俊美さんが、息子の登生さんのために高校3年間、毎日つくり続けた弁当の記録と、渡辺さんならではの弁当づくりのこだわりを綴ったこのエッセイが単行本化されたのは、6年ほど前のこと。彩り豊かで愛情のこもった数々の弁当だけでなく、当時シングルファーザーだった渡辺さんと登生さんの仲がいいけどベタベタしない、男同士の交流に温かな気持ちになった人も多いはず。

「もともと食の小説やエッセイがとても好きだったので、レシピ本みたいな枠ではなく、読むとよだれが出るような本にしたいと思っていました。それと書きたかったのは息子のこと。親子関係には自信があるので」

料理をするのも好きだった渡辺さんは、「パパの弁当がいい」というひと言で嬉々として弁当づくりを始めるが、張り切りすぎて1か月ほどで早くも疲れてしまう。そこで楽しく続けるために、調理時間は40分以内、1食にかける値段は300円以内、おかずは材料からつくる、という3つのルールを導入することに。

「弁当をつくり始めたのは、東日本大震災発生から間もない2011年4月なのですが、ちょうど地震の影響で仕事がなくなってしまった時期であり、自分のなかで達成感が欲しかったんです。だからルールを設けてゲームにしようと思って。そうしたことで何がよかったって、『つくってあげたのに』という感覚が一切なくなったんです。達成できたら、とにかく僕が楽しいわけだから。これは本には書かなかったんだけど、ルールをクリアできた日は、350ではなく500ml缶のビールを飲んでもいいってことにしてました(笑)」

息子の勧めで震災直後にツイッターを始め、日々の弁当の写真を投稿したのもモチベーションに。とはいえ一番大きな力になったのは、いつも完食してくれることだった。

「震災の前後で変わったのは、人の役に立ちたいと思うようになったこと。それまで人のためってどこか偽善的と、反発する気持ちもあったんだけど、息子であれ、僕が生まれ育った福島の人であれ、喜ぶ姿を見るとやっぱり気持ちがいいんですよね。仕事でもそれが自分のエネルギーになっていることに気がつきました」

今回、文庫化にあたって読み返したところ、弁当づくりに関しては「以前のほうが腕がある」と感じたそう。というのも文庫版には番外編として、幼稚園に通う5歳の娘との「お弁当物語」が収録されているのだが、同じ弁当づくりでも何もかも勝手が違うようなのだ。

「音楽にたとえると、息子の弁当は『好きにアルバムつくってよ』と言われたノリなんだけど、娘のは『必ず売れるような、みんなの歌をつくりなさい』って言われた感じ。制約がとにかくたくさんあるんです。しかも娘には弁当の中身を前もって伝えて表情をうかがい、怪訝そうにしていたらちょっと直すんです。だって嫌われたくないですもん(笑)。お弁当って、相手によって物語が全然違ってくるのも楽しいですよね」

これまでコミカライズ、そしてドラマ化もされてきたが、この秋には井ノ原快彦さんとなにわ男子/関西ジャニーズJr.の道枝駿佑さんが親子役の映画が公開される。

「音楽の世界でもそうなのですが、今はバージョンアップとかブラッシュアップみたいに、もともとあるものに手を加えるとさらに新しさを感じたりもする。この作品もそうなったのが素直にうれしいですね。ほんと、何回でもいい出汁がとれる鰹節をつくっちゃった心境です(笑)」

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食べることは生きること。そんな根本的な思想に立ち返らせてくれる。

「自分のためにつくったとしても、人の目は常に意識したほうがいい。お弁当も最終的には身だしなみだと思うんです。SNSにアップするのはそういう意味でおすすめだけど、いいところだけでなく、ダメな部分も見せたほうが人間らしくて好感が持てますよね。続ければきっといいことがありますよ、僕みたいにね」

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わたなべ・としみ 1966年、福島県生まれ。’90年、TOKYO No.1 SOUL SETを結成。THE ZOOT16名義でも活動。2010年、同郷の山口隆、松田晋二、箭内道彦らと猪苗代湖ズを結成。本作を機に、料理関連の仕事も増量中。

文庫『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』 「高校3年間、毎日お弁当をつくる!」という目標を掲げて始まったシングルファーザーのお弁当ライフ。親子の交流をメインに、秘伝の調味料や徐々に増えた弁当箱コレクション、特製おかずのレシピも紹介する涙と笑いのお弁当エッセイ。マガジンハウス 650円

※『anan』2020年6月24日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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