TXQ FICTION「神木隆之介」とは一体何だったのか。自分を演じることで生まれた意識と無意識

「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」「魔法少女山田」「UFO山」。これまで放送された4作全てが大きな話題を呼び、注目を集め続けるテレビ東京の番組「TXQ FICTION」シリーズ。その最新作は、まさかの「神木隆之介」!? 神木さんが本人役で出演し、自身が開催したイベントで流した映像をきっかけに、10歳で姿を消した子役の“てるちゃん”を追うフェイクドキュメンタリー。先日地上波で最終話が放送されたばかりの今作を、神木さんとともに振り返ります。

Index

    ホラー好きの神木による“逆オファー”から実現した本作

    ── 今作が誕生するまでの経緯を教えてください。

    神木隆之介(以下、神木) 番組内で描かれていることと同じといいますか。もともと「放送禁止」シリーズ(※2003年から放送されているフェイクドキュメンタリーTV番組)がすごく好きで、TXQシリーズの「飯沼一家に謝罪します」にもハマり、ずっと楽しみに見ていたファンの一人なんですけど。もし、一緒に作品を作ることができたら幸せだな、たとえ企画が通らなくとも今作を作っている方たちとお話ができたら嬉しいなと思ってコンタクトを取らせていただきました。すると、ありがたいことに「ぜひ」とおっしゃっていただいて。

    ── 出来上がった作品を見てみていかがでしたか?

    神木 純粋に楽しめたかどうかはわかりませんが、これまで視聴者として見てきた作品と同じようなゾッとする感じはあったと思いますし、すごく面白かったです。ただ、TXQシリーズが大好きだからこそのプレッシャーがあったし、自分から一緒に何かやりたいとアプローチしたにも関わらず実現したらすごく不安で。自分はちゃんとできていただろうかと、できるだけ客観視するように見ていましたね。

    ただ、本当に嬉しかったです。大好きなシリーズのタイトルが「神木隆之介」ですよ? YouTubeのサムネイルに「神木隆之介」と載るわけですから。すごく光栄だと思いながらその事実に浸りましたし、“自分が神木隆之介でよかった”と初めて思ったかもしれません(笑)。

    「僕が作中で話していることは全て本当」

    ── 本人を演じるということの面白さはありましたか?

    神木 大体の流れや、言うべき言葉や質問などは用意されているので、それは頭に入れながらも、神木隆之介という一人の人間として純粋に“てるちゃん”のことを追っていくという意識でやっていました。監督の寺内康太郎さんが、台本にあること以外の質問や感想もどんどん言っていいと言ってくださったので、“自分が視聴者として見ていたらこう思うだろうな”と感じたことを伝えるなど、自由にやらせていただきました。ただ、僕が作中で話している過去のことや作品のことは全て本当のことで、演じてはいないし、本当に素。新鮮な感覚で、楽しくできたなと思っています。

    ── 寺内さん曰く、「神木さんが神木さんを演じるわけなので、演出は必要がない」「極力ファーストテイクを狙うようにしていた」とのこと。たとえば、2話で神木さんが“てるちゃん”の家を訪れ、ピンポンを押すシーンでは、誰が出てきてどうなるかという段取りは伝えられておらず、西口さん役の俳優さんとも、撮影の時に初めて顔を合わせたとか。

    神木 なので、初めて西口さんが扉から出てきた瞬間、「なんでカメラがあるんですか?」とブチギレられてしまったらどうしようとか、リアルに不安を覚えました。ほどよく歪で、ほどよくピタッと合うという不気味さが初めての経験でしたし、これまでの作品もこうして撮られているんだろうなと想像したり。そして、映っていない時にこそ大事なものが動いていたりするところがドキュメンタリーだなと。本当に、作り手のみなさんの職人技を体験させていただきました。

    ── 難しかったところはありますか?

    神木 無意識になることに意識的になるとダメだ、ということをすごく感じました。たとえば、“これを言わなきゃいけない。そこにどうたどり着こうかな”と考えた瞬間から怖くなります。その瞬間から、そこに向かっての演技になってしまうので。たどり着かなければいけないセリフに、いかに無意識でたどり着くか。やっぱり、少しでも演じていたり、何かを言わなければいけないから言おうとすると、わかっちゃうんですよね。求めているものにたどり着くために、長回しで撮っていただくなど、結構遠回りをさせていただきました。

    キャリアの長さが最大の武器であり弱点

    ── 子役がキーとなるストーリーでしたが、内容や展開を聞いてどんなことを感じましたか?

    神木 自分自身が子役を経験していることが最大の武器であるなと思いました。一方で、インタビュー記事や映像など、これまでに世に出た僕に関する情報はたくさんあって、作中でそれと違うことを一つでも言った瞬間に整合性が取れなくなってしまう。視聴者の方が、「これ、嘘ついてるな」となった瞬間、没入感がなくなり、冷めてしまうことは僕の弱点でもあったので、すごく気をつけました。

    でも、逆に、そこをフルに生かすことができたら、より現実と作品の境目をなくすことができるかもしれないなと。みなさんが僕の素に近い姿を見て、知ってくださっているが故に、惑わすことができるのではないかなと思いました。

    ── 正直、インタビューをしているこの瞬間も、目の前で話しているのは本当の神木さんなのかな? と思ってしまいます。

    神木 そうですよね(笑)。僕はホラーも怪談も大好きですし、「ほんとにあった怖い話」や「放送禁止」、「TXQ」シリーズ、「フェイクドキュメンタリーQ」が大好きなのも事実ですし、フェイクドキュメンタリーに出られている方のお芝居が、お芝居の中でも最高峰だと思っているというのは、本当に事実ですから。そこだけは強く伝えたいです!

    神木隆之介が語るフェイクドキュメンタリーの魅力

    ── 神木さんが思うフェイクドキュメンタリーの魅力を教えてください。

    神木 「放送禁止」シリーズのテーマでもありますが、“事実を積み重ねたものが必ず真実とは限らない”ところでしょうか。みんなが普通に生活を送る中で、やっぱり表のこともあれば裏のこともあり、事実と真実も違うだろうなと思うんです。フェイクとして日常のことを作るフェイクドキュメンタリーを見ていると、自分の近くに存在している平凡に見えるものの中に、とんでもない真実が隠されているんじゃないかと思えるといいますか。後ろで蠢いている真実というものが一瞬だけ見えた時のゾッとする感覚、何かいけないことを知ってしまったという恐怖感が大好きなんです。“僕一人だけ気付いちゃった”と一瞬だけ孤独になる時が、大きな霧の中に入ったような感じがして、めちゃくちゃ心地いいですね。

    役者さんたちがフラットに取材の受け答えをしている姿もいいんですよね。だからこそ、後ろに蠢いている真実の大きさに気づいた時に恐怖が生まれるといいますか。“あなた普通にしているけど、とんでもないことが起こっているよ!”と気づいてしまった瞬間こそが、フェイクドキュメンタリーの魅力の一つだと思います。

    ── TXQシリーズにハマったのも、そうした魅力に惹かれたのでしょうか。

    神木 そうですね。最初に見た「飯沼一家に謝罪します」は、そこで起きていることは“教授が謝っているだけ”でしかないし、派手なことが起こるわけでもないのに、嫌な空気や、ねっとりとした不穏を感じて、これはめちゃくちゃ素敵だわ! と思ってハマりました。そして、僕は「フェイクドキュメンタリーQ」も好きですが、こちらは触れちゃいけないものに触れてしまったようなゾッとする感じがすごくよくて、特に「サンクチュアリ」というエピソードが好きですね。よくわからないのに怖い、本能が「ヤバい」と訴えかけてくるような、自分の体温が変わったと感じるところに惹かれます。日常でなかなか味わうことができない感覚だからこそ、作品で味わいたいのかもしれません。

    Profile

    神木隆之介

    かみき・りゅうのすけ 1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。俳優。『ゴジラ-1.0』をはじめとする映画や、連続テレビ小説『らんまん』、『日曜劇場 海に眠るダイヤモンド』などのドラマで主演を務める。『千と千尋の神隠し』『君の名は。』など声優としても活動。映画『君のクイズ』が5月15日に公開される。

    TXQ FICTION「神木隆之介」

    information

    Ⓒテレビ東京

    TXQ FICTIONシリーズの第5弾。神木隆之介が本人役で出演し、10歳で姿を消した謎の子役“てるちゃん”の行方を追うフェイクドキュメンタリー作品。広告付き無料配信サービス「TVer」などで見逃し配信中(※配信期間は3月31日まで)。また、「TXQ FICTION」公式YouTubeでも随時配信開始予定。

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    ジャケット ¥264,000 シャツ ¥26,400(共にmarka / マーカ) パンツ ¥44,000(MARKAWARE / マーカウエア) PARKING TEL. 03-6412-8637 靴、ソックス(スタイリスト私物)

    写真・小笠原真紀 スタイリスト・伊賀大介 ヘアメイク・大野 彰宏(ENISHI) 取材、文・重信綾 構成・中尾雄剛

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