年上女性への淡いトキメキ。しかし相手はよりによって…。
「最初はグルメとラブコメにしようと思ったんです。第1話のポトラッチ丼はその名残(笑)。ラブコメらしく、ふたりの間に緊張感を持たせたかったのですが、3話目を描いているときにある秘密をふと思いついて、ようやく形が定まりました」
主人公の直達は高校進学を機に叔父の家に居候することになるが、駅に迎えに来たのは榊さんという見知らぬ女性。叔父の家はクセのある大人たちが暮らすシェアハウスだった。
「高校生の男の子が住みたいのは、女の子がいっぱいいる家かなとも思ったのですが、それより海賊船みたいな家なんじゃないかなと思って、そういうキャラを揃えてみました」
そして肝心の秘密というのは、直達と榊さんの家族に関すること。前作は、単行本2冊分のネーム(絵コンテ)を最初に全部描き上げてから本番に入るという、かなり特殊な進め方をした田島さん。今回のように雑誌の掲載話ごとにネームを描き、物語を詰めていく一般的な進め方は、手探りな部分が多いようだ。
「描きたいシーンはなんとなくあるけれども、お話はキャラクターが持ってきてくれるんです。榊さんが最初から不機嫌そうだったのは、こういう理由だったのか、と後々になって私自身もわかりました」
明かされたら関係性が変わってしまいそうな、爆弾的秘密を抱えて進む物語は、冷静に考えると結構重い。その秘密をシェアハウスのメンバーの誰が、どこまで知っているのか、何気ない会話の積み重ねで徐々に見えてくる様は、ミステリーのような緊迫感をはらんでいる。しかし必要以上に重くせず、ほんわかとした雰囲気すら漂っているところは、田島ワールドここにありといった感じで、思わず頬が緩んでしまう。
「自分としては、定番の物語を詰め込んでいるだけで、奇をてらっているつもりは全然ないです。何かしら問題を抱えていたり、過去に囚われていても、そればかり考えて生きてるわけじゃない。日々笑ったり、ちゃんと働いて税金も納めているんだよってことじゃないでしょうか」
隠喩的な本作のタイトルに関しても「描いていくうちに、だんだんわかってくるんじゃないかなぁ」とのこと。海賊船に同乗したつもりで楽しみたい、日常の冒険譚だ。
たじま・れっとう 『モーニング』に読み切り「ごあいさつ」「官僚アバンチュール」「おっぱいありがとう」などを発表後の初連載「子供はわかってあげない」が各方面で高く評価される。
『水は海に向かって流れる』1 OLの榊さん、なぜかマンガ家になった叔父、女装の占い師、メガネの大学教授、そして今どきの高校生・直達の共同生活。1巻からすでにドキドキの連続です! 講談社 620円 ©田島列島/講談社
※『anan』2019年7月17日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)
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