新興文芸の胎動が聞こえてきた大正末期。東京で新雑誌『文藝春秋』が産声を上げたのと同じ年、大阪では小山内薫が率いるプラトン社が『苦楽』の創刊に着手。永美太郎さんの『エコール・ド・プラトーン』は、そのプラトン社に集う文士たちの群像劇だ。だが、最初に浮かんだアイデアは、少し違っていたそう。
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「女性マンガが好きなんです。時代を遡って掘っていくうちに、大正時代の少女雑誌の挿絵や挿絵画家たちに興味が湧いて、そんなマンガを描いてみたいと思ったものの、さすがにテーマがニッチすぎる(笑)。その世界の隣に近代文学があり、こちらの切り口からいこうと思いました」

1巻で活躍するのは、川口松太郎と直木三十五。さらに、芥川龍之介や谷崎潤一郎、菊池寛など、のちに文豪と呼ばれる作家たち。岡本かの子や夫の一平、少年時代の太郎なども登場する。

「文芸史や大正の文壇については好きでなんとなく読んでいたんですが、連載が決まってから改めて調べ直しました。ネームを組み立てていくうちに『こういうエピソードがあったらいいのに』とアンテナを立てておくと、新しい発見があったりする。ただ『たくさん調べました』というだけの表現はマンガとして面白くないので、史実に忠実でありつつも、肉付けやさじ加減には腐心しています」

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永美さんが仰ぎ見ている作家のひとりが、故・杉浦日向子。

「師匠でもある山田参助さんともよく話していたんですが、杉浦さんって作中のセリフを生み出す達人なんですよね。彼女のマンガのように、作品のムードにハマる印象的な言葉を見つけられるかも勝負です」

舞台がレトロな分、作画も苦労が尽きない。たとえば当時の生活描写や着物の描き方。

「着物姿とか、実は正確に描けたからといって絵として決まらないんですね。日本髪や着物が美しく見える角度も、当時の美的感覚とともに絵に織り込めたらいいなと思っているので、ネットで見つけた資料や郷土資料などを頼りにしています。ちなみに、本作を描くようになってから、自分でも着物を着るようになりました。また、著名な文豪たちの顔は、教科書などでよく知られている分、リアリティとデフォルメの加減が難しい。さっぱりした線が好きなのですが、軽すぎる絵柄になると史実の重みが薄れてしまうので、説得力を持たせるタッチはどういうものだろうと。試行錯誤は続いています」

岩田専太郎ら挿絵画家たちの物語が始まる2巻の刊行が待ち遠しい。

『エコール・ド・プラトーン 1』 新雑誌の創刊に関わる文士たち。編集者として活躍した後、第1回直木賞受賞者となる川口松太郎を軸に、熱き交流が描かれる。トーチweb(to-ti.in)で連載中。リイド社 720円©永美太郎/リイド社

ながみ・たろう 1984年生まれ、兵庫県出身。京都造形芸術大学卒。書店員、山田参助氏のアシスタントを経て本作が初連載。大正~昭和初期の群像劇を描くことは10年来の悲願だったとか。

※『anan』2019年5月1日-8日合併号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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