社会のじかん

沖縄県知事選挙を前に…故・翁長知事の思いとは

ライフスタイル
2018.09.27
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「翁長知事と沖縄」です。

翁長知事の主張は辺野古への新基地建設反対でした。

社会のじかん

翁長雄志沖縄県知事が8月に急逝されました。翁長さんは元々は自民党員でしたが、2014年の知事選でさまざまな政党の人たちと団結、普天間基地の辺野古移設に反対する「オール沖縄」という枠組みで、それ以降の全ての選挙を戦ってきました。誤解されている方も多いのですが、翁長知事は、沖縄から米軍基地の全面撤退を求めていたわけではありません。普天間基地の辺野古移設で、沖縄に新しい基地を造ることに反対を唱えていたんですね。

辺野古には205haの巨大な新基地を建設予定で、そのためには美しい海、珊瑚礁を破壊し、約160haを埋め立てることになります。巨大基地にはいま以上の数のオスプレイを配備。沖縄住民は騒音と事故の恐怖にさらされます。翁長知事の前任・仲井眞知事は辺野古の埋め立てを承認しましたが、それを撤回するべく、国に働きかけていました。知事がたびたび東京を訪れ、安倍総理や政府要人に面会を求めていましたが、ことごとく断られたのです。昨年末、普天間の小学校に米軍ヘリの一部が落下。学校上空の飛行停止を求め、知事が官邸を訪れましたが、安倍総理は面会しませんでした。こういう聞く耳を持たない対応が、沖縄を蔑んで、軽視しているのでは、という政府不信にもつながっていきました。

日本の国土のわずか0.6%の沖縄県に、米軍専用施設の74%が集中して置かれています。もし、横田基地のそばに巨大な新基地を建設することになり、オスプレイが大騒音を立てて頻繁に飛び交うとしたら、東京都に住む人はどう思うでしょう? 私たちはどこかで、「遠い沖縄の問題」と思ってはいないでしょうか。しかしこれは、沖縄だけではなく、同じ日本の問題です。

かつて橋本龍太郎総理の時代は、当時の大田昌秀知事と会談を重ね、「普天間基地返還」という難しい交渉を成立させました。いまではまるで国と沖縄県の主張が平行線、対立関係にあるようにみえる報道を目にしますが、根気強い話し合いにより解決策は見つけられます。沖縄県知事選挙は9月30日に行われます。どの候補が選ばれるにせよ、沖縄の問題を日本全体で考えられるようにできたらと思います。

堀潤

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2018年10月3日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)



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