日本の中絶をめぐる様々なDATA
思いがけない妊娠の数…1年間で推計約61万件
※大須賀 穣、秋山紗弥子、村田達教、木戸口結子(2019)日本における予定外妊娠の医療経済的評価
人工妊娠中絶の数…1年間で約12万6000件
※令和3年度厚生労働省「衛生行政報告例の概要」
人工妊娠中絶の年代別割合
10代…7%。20代…45%、30代…37%、40代…11%
※令和3年度厚生労働省「衛生行政報告例の概要」
人工妊娠中絶というと未成年者が多いイメージがあるが、年代別で最も多いのは20代。人工妊娠中絶は決して“他人事”ではなく、身近な問題として捉え、正しい知識を持っておくべきことなのだ。
性教育の遅れや緊急避妊薬の入手の難しさが予期せぬ妊娠の背景に。
女性の人生を大きく変えることになりかねない、思いがけない妊娠。日本では年間約61万件の予期せぬ妊娠があると推計されており、人工妊娠中絶の数は年間12万件を超える。性教育などを行うNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんは次のように語る。
「私自身、大学時代に中絶を経験し、いかに自分が避妊について無知だったかを痛感しました。正しい性の知識を得ることの大切さを認識し、それがピルコンの活動の原点になっています」
思いがけない妊娠を防ぐため、覚えておきたいのが、緊急避妊薬(アフターピル)。性交後72時間以内に服用すれば高い確率で妊娠を阻止できる。医師の診察不要で薬局等で安価に購入できる国は多いが、日本では医師の処方箋が必要な上、1万円以上かかることも。薬の存在を知っていても、価格や受診がハードルになり入手できないという女性も多いのが現実。
「予期せぬ妊娠の背景には、性教育の遅れだけでなく、緊急避妊薬の入手のしにくさも関係している」と染矢さんは言う。産婦人科医らと共に「#緊急避妊薬を薬局で」プロジェクトを推進し、女性が緊急避妊薬を迅速に購入できるようにするための政策提言も行っているがまだ実現には至っていない。
「中絶に関しても身体への負担が大きい、古い手術法がまだ行われていて、普段の避妊法の選択肢が少ない上に高額など、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)に関する課題が日本には山積みです。新たな選択肢が増えることで、女性が自分の意思で心身を守れる社会になってほしいと願っています」
知っておきたい! 自分の身を守る新しい選択肢について
緊急避妊薬の薬局購入をめぐる動き
緊急避妊薬は排卵を遅らせる作用があり、性交後48時間以内に服用すれば85%、24時間以内なら95%の妊娠阻止効果がある。世界約90か国では医師の処方箋不要で購入が可能。日本でも薬局購入を望む声が高まっており、パブリックコメントが4.5万件以上集まるも実現には至っていないが、ホットなトピックに。
経口(のむ)妊娠中絶薬に関する議論
服用によって妊娠を止め、子宮を収縮させ、子宮の内容物を排出する経口妊娠中絶薬。日本では認められていないため、身体への負担が大きい古い手術法で中絶が行われている。厚生労働省は3月中にも薬事分科会を開き、承認の可否を示す見通しだ。
※3月17日現在。
そめや・あすか NPO法人ピルコン理事長。大学在学中にピルコンを設立。卒業後、民間企業を経て、現職。若者や保護者向けの性教育や講演活動などに注力。公衆衛生学修士、公認心理師。
※『anan』2023年4月5日号より。イラスト・REDFISH 取材、文・音部美穂
(by anan編集部)