堀潤さん・馬渕磨理子さんと考える。社会不安に揺れる時代のお金との正しい向き合い方

世界では戦争が長引き、日本では円安・物価高が続き、給料は上がらず、生活は厳しい。不安だらけの今、どう乗り切ればいいのか。本誌連載「社会のじかん」の堀潤さんと、経済アナリストの馬渕磨理子さんにお金との向き合い方を語ってもらいました。


Profile

馬渕磨理子

まぶち・まりこ 経済アナリスト。一般社団法人日本金融経済研究所代表理事。『LiveNewsα』(フジテレビ系)、『Nスタ』(TBS系)レギュラー。著書に『馬渕 磨理子の金融・経済ノート』(東急エージェンシー)など。

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。『堀潤LiveJunction』(TOKYOMX)が放送中。著書に『災害とデマ』(集英社)など。

稼ぐ力をつけるために新しい自分を見つけよう

 お金に関しては、稼ぐ、貯める、増やす、節約など様々な面がありますが、社会不安の多い今、何から始めたらいいと思いますか。

馬渕 まず稼ぐ力をつけることが先かなと思います。限られたお金で節約だけをしていると心が貧しくなってしまいますから。特に若い世代は知識や技術を磨いて自分の力を高める。そうすれば複業などで稼ぐ場を広げられますし、基盤を固めて初めて、増やすことを始められるのではないでしょうか。

 自分の価値を見出してお金にするというのは、アイデンティティを守ることにもなりますよね。僕はNHKを退職してフリーランスになる時、自分の得意なことに値段をつけることから始めました

Keyword解説

自分の得意なことに値段をつける

映像制作、講演、ファシリテーターなど、得意とする仕事のギャランティを自分で値付けしたという堀さん。使用者に言われるままの値段で働くのではなく、自分の価値を自分で守ることはこれからの時代には必須。

馬渕 私は就職氷河期で苦労したので、20代はガムシャラに、頂いた仕事は求められる以上のものを返そうとしました。資料代の方が高くついて赤字のことも(笑)。

 自分に投資されたんですね。

馬渕 はい。そういう投資によって知識も増えますし、信頼を得て、仕事も広がりました。独立してから、同じような仕事内容でも違う値段がつくことを知りました。金融業界にいるので、商材を紹介してほしいと頼まれることがありますが、暗号資産のようなリスクの高い商材の広告ほどギャラは高い。でもリスクの大きなものはお引き受けしないようにしています。

 投資関係は、不安を煽る情報も多いので、そういうものとは距離を置いた方がいいですね。

馬渕 例えばNISAは20〜30年かけて5〜7%の年利回りがコンスタントに出ればいいという地道なものです。ところが、世の中に不安が広がると、リスクが高いものにも手を出さないといけないのでは? という気にさせられます。特にSNSはアルゴリズムによって情報が偏ってしまいます。「これに投資すれば20倍になる」などの情報は、あなたのお金を奪い取ろうとする詐欺広告と思っていただいた方がいいと思います。

 馬渕さんがおっしゃると説得力がありますね(笑)。

馬渕 ホルムズ海峡の問題で原油が入りにくくなって、石油を扱う会社の株価が高騰しましたが、誰かの情報を見て投資先を判断するのではなく、ご自身で株価チャートを見ていただけたらと思います。簡単に無料で見られますから。

 一次情報にあたるというのはとても大事ですね。

Keyword解説

一次情報にあたる

ネット上にあふれる情報は玉石混交で、それを誰が発しているのかは重要。二次情報、三次情報は、発信者の解釈が加わり真実から離れていく恐れがある。できる限り自分で調べ、直接見聞きしたものをもとに判断して。

馬渕 高騰するなどの情報は、株価が上がり始めてから広まるので、入手した時点で高値掴みになって、そこから下がる危険もあります。

 残念ながら本当にいい情報は限られた人にしか届かない。得た情報はすでに知れ渡っていると考えた方がいいですね。新NISAが始まってすぐの頃には、株価が急落した時に、投資初心者の方がパニックになって手放してしまったということも起きました。

馬渕 ニューヨークダウの長年の動きを調べましたが、1929年の世界恐慌の後、89%株価が下落して戻るまでに約25年かかったんです。リーマンショックでは50%安でしたが、コロナショックでは38%と下げ幅が次第に小さくなり、戻りの時間も短くなりました。政府も歴史に学んで、金融緩和と財政出動(給付金や支援金)をして、いち早く回復できるようになったんですね。もちろんリスクはありますが、大きなショックにならないよう政府も対策していますから、投資は長い目で見ていれば慌てることはないと思います。

 個人のお金も、世界情勢や国の財政の影響を受けます。経済の仕組みや世界の流れを知っておくことがお金を守る術になりますね。

馬渕 情報収集でいうと、一度、日経、産経、読売、朝日、毎日、地元紙(東京ならば東京新聞)を読み比べていただくと面白いです。同じニュースでも切り取り方が異なっていたり、1面に取り上げる記事にも違いがあります。違う意見を知るのも勉強になりますし、どの新聞の意見が自分に近いかもわかるようになると思います。

 SNSはもちろんですが、大手新聞社やテレビ局のニュースも、「なるほど。でも本当かな?」とテンプレートのように語尾につけて接していただけたらいいですね。どの角度から捉えるかによって出来事の見え方も変わりますから。

馬渕 背景やなぜその政策をとるのかという視点を持つと見通しもつけやすくなるかもしれません。

 例えば「電気代が高くてしんどい」ではなく、なぜ高いのか考えてみる。電気代には再生エネルギーを普及させるために「再エネ賦課金」が含まれています。ホルムズ海峡が封鎖されて原油が入りにくくなっても、20%以上は再エネで賄えています。私たちがコツコツと自国生産エネルギーを増やす負担をしていると思うと少しは納得できるのではないでしょうか。

馬渕 昨年はトランプ関税、今年はイラン戦争と、経済が混乱しています。でも、ショック療法的な発言をして、世界を混乱させるのはトランプ大統領の手法。彼が大統領である限り、定期的に株価の変動はあるとあらかじめ理解していると振り回されずにすみます。

 不安な世界情勢でも、付加価値を生み出している企業は成長しています。人も同じ。自分に付加価値をつける、「昨日とは違う自分」を生み出していただきたいです。些細なことからで構いません。知らない道を歩いてみるとか、興味ある人に思い切って連絡を取ってみるとか。小さなチャレンジの連続が自分の世界を広げ、新しい稼ぐ力につながるかもしれません。

Keyword解説

自分に付加価値をつける、「昨日とは違う自分」を

同じことをしていても成長につながらない。新しい自分を生み出し、自分に付加価値をつける。好きなこと、興味があることを発信すると、それが誰かにとっては、対価を払ってもいい貴重な情報になることもありうる。

馬渕 ぜひ、ご自身を高めていっていただきたいですね。

 「パスポートを取ってみる」というのも付加価値をつける一つの方法だと思います。日本人のパスポート保有率は10%台ですが、取れば海外への興味も広がります。今は円安で燃油サーチャージも高く、「海外なんて行けない」と思うかもしれませんが、いつまでも同じ状況が続くわけではありません。次のチャンスにすぐ行動できるよう、備えることも大事です。

馬渕 備えという意味では、私は非常食やトイレットペーパーを買い置きしています。日本は災害大国ですし、普段の基盤を整えておけば、物が不足しても無闇に不安にならずにすみます。

 残念ながら、資本主義は何もしなければ安く買い叩かれる仕組みになっています。「私、安くないので」と価格交渉をする、そんなマインドセットも大事です。ぜひ、ご自身が主役の楽しいビジョンを思い描いていただけたら!

Keyword解説

マインドセットも大事

昔のように、会社員になって定年まで勤め、退職金で住宅ローンを返済して上がりの時代ではない。自分の労働に対して、価格交渉をできるか否かでも差がついてしまう。安く買い叩かれないよう自分を守る意識を持とう。

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馬渕さん・ジャケット ¥482,900 シャツ ¥66,000 スカート ¥253,000 ネクタイ ¥41,800 靴¥103,400(以上THOM BROWNE/THOM BROWNE JAPAN TEL. 03-6712-6348) ソックス、ピアスは本人私物

写真・小笠原真紀  スタイリスト・武政(馬渕さん)ヘア&メイク・美樹(ThreePEACE)取材、文・黒瀬朋子

anan 2498号(2026年6月3日発売)より
Check!

No.2498掲載

お金の教科書 2026

2026年06月03日発売

物価高が暮らしを直撃し何かと不安の多い昨今。将来のために、家計の見直しや節約から、増やす技術まで、賢くお金と付き合う方法を一から学ぶ特集です。

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