生活不安からポピュリズムの風がヨーロッパにも。
「五つ星運動」とはここ数年で急激に力を伸ばしているイタリアのポピュリズム的な新興政党の名前です。2009年にコメディアンのベッペ(ジュゼッペ・ピエーロ)・グリッロと政治運動家で企業家のジャンロベルト・カザレッジョによって結党されました。五つ星運動は、インターネット主義を謳っており、選挙候補者をネットで選ぶなど、直接民主主義を行おうとしています。これは新たな流れを作るには有効ですが、人々の期待や不満に左右されやすいという危険性もあるんですね。
五つ星運動が結党されたあたりから、EU内で、ギリシャ、スペイン、イタリアの財政難が問題になってきました。これら3国の赤字をドイツやフランスがフォローする状態。EUからは緊縮財政にして支出を減らすようきつい指令が出て、市民の生活を圧迫。五つ星運動はそんな市民の不満を解消すると公言し、大衆の支持を集めてきました。
昨年は、ローマ市長に37歳のヴィルジニア・ラッジ、トリノ市長に32歳のキアラ・アッペンディーノと、五つ星運動の2人の若い候補者が当選。12月に行われた憲法改正を問う国民投票でも、五つ星運動などの野党が既成政治への反対を掲げ支持を伸ばした結果、国民投票は否決され、与党のレンツィ首相が辞任に追い込まれました。
イタリアだけでなく、他のヨーロッパ各国でも、移民問題や生活不安から、既成の政治への失望感が広まっています。今年はフランスの大統領選、ドイツの連邦議会選挙など重要な選挙が続きます。フランスでは極右政党の党首マリーヌ・ル・ペンが有力な大統領候補に。この先、ポピュリストが率いる政党の勢いが増せば、EUが分裂する可能性もあるといわれています。
ヨーロッパの政情が不安定になると、リスクを回避しようと安定した円が買われるので、円安から円高にふれるでしょう。すると貿易国の日本は企業収益が落ち込み、法人税が減るので国は赤字国債を発行することに。ヨーロッパの問題は日本経済にも大きな影響を及ぼします。また、多くの国が「自国さえよければいい」と内側を向き、多様性を否定する機運が世界で高まるのはなんとか食い止めたいところです。