“アートの街”へ変貌を遂げた群馬県前橋市 「白井屋ホテル」ほか立ち寄りたいスポット

ライフスタイル
2024.10.24
群馬県の中央部からやや南に位置し、約33万人が暮らす県庁所在地、前橋市。この街が今、国内屈指の“アートの街”へ変貌を遂げ、注目を集めています。著名な作家からローカルな才能まで、芸術にひたる最旬の旅はここで決まり!

【前橋】アート推しが熱視線!? 想像力が息づく街をぶらり散策。

旅行 ホテル

街・アート・人が交錯する“アートの前橋”。
2013年にオープンした市立美術館「アーツ前橋」を皮切りに、著名なアーティストたちの作品が出迎えてくれる「白井屋ホテル」が2020年に開業。そして昨年は、複数のギャラリーとレストラン、住居が入る複合施設「まえばしガレリア」がお披露目となり、年々アート推しの熱視線が集まっていく前橋。かつてはシャッター街だったという場所がなぜ、今や知る人ぞ知る芸術都市に? 今回の取材でお会いした方たちに聞いてみると、その背景には一人ひとりが時間をかけて育んできた、クリエイティビティがあった。

「始まりは2011年の震災後、前橋市内初となるコミュニティラジオ局に勤めていた岡正己さんが、街と人を巻き込む楽しい企画を次々と実施したこと。例えば、各々が好きなことを部活にして、同じ想いを持つ人と繋がる『前橋○○部』。次第に街の人たちの中に、面白いことを作るマインドが育っていった気がします」(喫茶マルカ店主・村井美予さん)

実際に街を歩けば、地元の方が持つ小さなギャラリーと独創性を感じる個人店が点在し、飲食店や雑貨店にも作家の展示スペースが設けられていることが多い。今年10月に2年ぶり、2回目の開催となった「前橋ブックフェス」や、不定期開催の「River to River 川のほとりのアートフェス」など、街ぐるみでアート関連のイベントがあることも。

そして何より、前橋の街中で特別な存在感を放つのが「白井屋ホテル」。江戸時代から約300年も続き、2008年に惜しまれながら廃業した老舗旅館「白井屋旅館」(’70年代にホテルに建て直し、改名)を、芸術界を牽引する国内外の才能たちが集結し、再生。ホテル内に作品が展示され、アーティストがゲストルームの内装を手がける“アートホテル”として大きく生まれ変わった。

「白井屋ホテル」は老舗を大胆にリノベーションしたヘリテージタワーと、前橋を流れていた旧利根川の土手をイメージして新築されたグリーンタワーの2棟からなる。そこで出合える作品は、“前橋”や“白井屋旅館”への深い理解や想いを持って制作された新作が多いのが特徴。例えば、日本を代表する建築家の藤本壮介が改装を手がけた、ヘリテージタワーの吹き抜け。1階のラウンジから4階のゲストルームスペースまでを貫く屋内広場のような空間は、街の人と世界中からやってくる人が出会い影響し合って、前橋が白井屋とともに成長していくようにという願いが込められている。そしてこの吹き抜けには、アルゼンチン生まれの現代美術家レアンドロ・エルリッヒの『ライティング・パイプ』が。「目に見えない生き物の静脈」をイメージしたという作品は、かつて館内に張り巡らされていた配管の姿とも重なり、“白井屋旅館”だった頃の記憶を今に伝えている。

もちろん、“泊まれる作品”も注目。藤本壮介、レアンドロ・エルリッヒをはじめ、イタリア建築界の巨匠ミケーレ・デ・ルッキ、イギリスを代表するプロダクトデザイナーのジャスパー・モリソンがそれぞれ独自の感性を客室という形に昇華。他タイプの部屋には、国内外で活躍する作家の絵画や写真作品、インスタレーションが添えられている。

日帰りで訪れるなら、グリーンタワーに設置されたフィンランドサウナを楽しみ、現代美術家・宮島達男の作品を眺めながらととのう、“アート浴”を。想像力で満ちた空間に身も心もひたりながら、芸術の秋を満喫してみては?

【前橋】東京駅から前橋駅まで、北陸・上越新幹線とJR両毛線を乗り継ぎ、約1時間30分。車では高速道路を利用し、都内から約2時間で前橋市内に到着。関東圏からは、日帰りでも行ける距離なのも魅力。

白井屋ホテル

“鑑賞”ではなく、“体験”するいま最もアツいアートホテル。
フィンランドサウナは1名¥5,000から利用でき、最大4名、80分まで。4つの時間帯から選び、前日までに予約が必要。客室料金は3万900円~。●前橋市本町2‐2‐15 TEL:027・231・4618  https://www.shiroiya.com/

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「藤本壮介 ルーム」。前橋市のビジョン「めぶく。」から着想を得て、ベンジャミンの枝を配置。全ての客室には群馬の歴史などを読む「上毛かるた」が。

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ビジターもランチやアフタヌーンティーが楽しめるラウンジ。要予約。

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エントランスで出迎えてくれるのは、写真家・現代美術作家の杉本博司による「海景」シリーズ、『ガリラヤ湖、ゴラン』。

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上から吹き抜けを眺めた景色はまるで絵画のよう。2階以上のアクセスは宿泊客のみ。

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チェアの横にある白い小屋の内外には宮島達男のデジタルカウンターの作品が。

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外観はコンセプチュアル・アーティスト、ローレンス・ウィナーの作品が彩る。

アーツ前橋

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東南アジアの現代美術から、社会の姿や価値観を捉える展覧会「リキッドスケープ 東南アジアの今を見る」が12/24まで開催中。●前橋市千代田町5‐1‐16 TEL:027・230・1144 営業時間10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで) 水曜休 https://www.artsmaebashi.jp/

まえばしガレリア

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ギャラリー×レストラン×民泊。泊まれるアートスポットがここにも。
ギャラリーとレストラン、住居が入る複合施設。レストランでは群馬の食材を使った本格的なフランス料理がいただける。住居はAirbnbで宿泊可。2枚目写真のスタジオタイプは1泊¥25,000。●前橋市千代田町5‐9‐1 営業時間11:00~19:00 月・火・祝日休 https://www.towndevelop.jp/

※『anan』2024年10月30日号より。写真・高橋マナミ

(by anan編集部)

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No.2419掲載2024年10月23日発売

秋の推し旅2024

アート、美食、温泉、自然、クラフト…etc。大好きなものを求めて様々な形の秋の旅をお勧めする特集です。長野×北アルプス国際芸術祭、前橋×街中アート散策、京都×名所と甘いもの巡り、函館×ローカルフードを満喫、金沢&福井×日本海の美食と洗練の工芸、高知×美しい水の恵み、癒しを求めて道後温泉&秋保温泉、というラインナップです。

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