問われる報道の意味。問題のその先を見据えて。
BBCの報道によると、「デジタル・ニュース・リポート」というオックスフォード大学ロイター研究所が依頼した調査で、世界的にニュース離れが進んでいることがわかりました。調査は今年1~2月に47か国の成人9万4943人を対象に行われ、回答者の39%がニュースを積極的に避けることが「時々ある」「よくある」と答えており、7年前よりも10ポイント増加しました。
これはニュースの現場にいても実感します。「ニュースを見ると気持ちが塞いでしまうので避けます」という声が、コロナ禍以降すごく増えました。世界で戦争や紛争が起こり、辛すぎるニュースが多いこと、目の前の暮らしで精一杯で外のニュースに目を向ける余力がない、というのが主な理由です。
また、ニュースを積極的に見なくても、見出しを目にしたり、SNSで誰かが話題にしていることから、話題のニュースを受け取る機会が増えました。ただ、フェイクニュースが横行したり、生成AIによる血の通わない、情報をただ伝えるだけのニュースばかりになる危険性もあり警戒が必要です。
僕自身は、問題を伝えるだけで終わらせず、「ソリューションジャーナリズム」という、その問題を解決するにはどんな方法があるのか、知恵を集めるためのニュースに特化するよう心掛けています。悲惨さを伝えることに主眼を置いていないので、暗い話に終わりません。 当事者が発信する市民メディアは非常に重要だと思っていますが、同時に、報道機関のような「第三者が関わること」も大きな意味があると考えます。これからの報道機関は、解決策を共に考え提示するようなシンクタンク機能や、市民サポート、ソーシャルセクターとしての機能をもっと重要視した方がよいのではないでしょうか。
報道機関も、人や資金が不足し、組織を守るため視聴率やビュー数を稼ぐことを目的に安易なセンセーショナリズムに走ると、過激な報道ばかりになり、余計に視聴者から敬遠されます。
従来のようにマスメディアが権威を持ち、一方的に伝えるのではなく、多くの人が参入できるオープンジャーナリズムが広がるといいなと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2024年10月2日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)