意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「出産育児一時金」です。

喜ばしいことだが政策として中途半端な点も。

society

2023年度より、出産育児一時金の支給が原則、42万円から50万円に引き上げられることになりました。財源は74歳以下の世代の医療保険料でまかなわれていましたが、今回の増額分は、’24、’25年度の2年間で、75歳以上の後期高齢者の約4割にあたる、年収211(’25年度は153)万円を超える人の医療保険料を引き上げて充てることに。いままでは若い世代が高齢者の年金を支えていました。少子化克服のため、今度はお年寄り世代が若者たちのために少しお金を割いてやってくださいということです。ただ、国民同士でお金を回すのか、ほかに財源はないのかという声も上がっています。

出産にかかる費用は病院によって異なり、不透明なところがありました。一時金が増額されると、その分値上げをしても構わないと考える病院も出てくるのではという懸念もあり、厚生労働省は各病院やクリニックに対して、出産費用をホームページで公表するよう促しています。

一方で、後期高齢者が支払う医療費の窓口負担額は昨年10月から変更に。一定以上の所得のある約370万人の負担額が1割から2割に引き上げられました。日本の医療費は年々増大し、’19年度には44兆円、約30年の間に倍以上に増えています。

今回の出産育児一時金の増額は、子育て政策に力を入れているというメッセージを伝える意味ではいいですが、少々中途半端ではないかとも思います。出産費用をすべて国費負担にするとか、大学卒業まで面倒をみる、あるいはゆりかごから墓場までの社会福祉政策を行うなど、細々とした策で対処するのではなく、若年層から高齢者層まで一体保障のなかで組み直さなければ、本当の意味で「分配なくして成長なし」にならないのではないでしょうか。一部の人だけ受益があるのは、社会的協力を得られなくなる恐れも出てきます。

北欧の福祉国家では、国民は税金の使い道に敏感で、納得いかない場合は選挙で反対の意を表します。そこは見習いたいですね。自分が年間どれほど税金を支払い、何に使われているかに意識を向けることは、民主主義社会に生きる者の責任でもあると思います。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。

※『anan』2023年1月25日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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