“新しい資本主義”を掲げる岸田政権。再分配をテーマに、暮らしは良くなる?
堀潤(以下、堀):この2年、コロナ禍で国民は弱りきってしまいました。そこで岸田政権は「新しい資本主義」を掲げました。
五月女ケイ子(以下、五月女):それはどういうものですか?
堀:いままでの資本主義は、市場の自由競争に委ねて、勝ち上がる人は勝つ仕組みだったんですね。ところが競争が進みすぎて、お金持ちや大企業は成長するけれど、そうじゃない人は吸い上げられてしまう、格差が広がってしまいました。世界的にそういう事態は起きており、岸田政権は、市民が安心して物が買えて、暮らせるように再分配をする「成長と分配の好循環」というのを目指すと謳ったんです。これが実現できるかどうかが今後の大きなポイントになります。
五月女:ぜひ、分配してほしいです! これから景気は良くなりますか?
堀:暮らしのレベルでは良くなる可能性はあると思います。コロナ禍が落ち着いて人の流れが戻ってくるでしょうし、再分配策をしっかりやりましょうと言っているので、2022年の参議院選挙の前には、与党も選挙に勝つために、大盤振る舞いするんじゃないかと思います。
五月女:給付金みたいなことですか?
堀:給付金だけでなく、住居費の負担軽減、学費の補助や省エネ家電のサブスク化、企業にとっても活動しやすい税の仕組みの導入など、国民の納得することをして、はずみの年にすることは間違いないでしょう。
五月女:最近、お金の価値が変わってきているのを感じるんです。前は買えていたものが買えなくなってしまった。子供の遠足のおやつの300円で買える範囲がかなり限られてきたなあと(笑)。
堀:政府のインフレ誘導が効いているんでしょうね。日本は、価格が安いほうへと競争が進んで、利益を得られないからお給料も減る、さらに物が売れなくなってまた値段を下げる…というデフレの悪循環が続いて抜けられなかったんです。国はもっとお金を刷ってたくさん市場に供給してお金の価値を下げ、インフレに持っていこうとしています。そうすると所得も上げられるようになるだろうと。
五月女:でも、所得はそんなに増えてないですよね? なぜなんでしょう?
堀:企業の賃上げが足りていないのも要因の一つです。こういう状況を「スタグフレーション」といいます。企業としてはリーマンショックのようなことがいつ起きるかわからないので、従業員に還元せず、お金を貯めておきたいんですよね。
五月女:もっとみんなのお給料に回してほしいです。あ、もしかして、私のイラストの稿料も上げてくださいって言ってもいいのかしら? 実は仕事を始めたころから、イラストレーターのギャラってたぶんほとんど変わってないんです。お菓子の値段は上がっているのに(笑)。
堀:そういうことは日本の各地で起きているようですね。経営者にとってもSDGs、持続可能な発展は大事なキーワードなんです。従業員のみなさんや取引先のみなさんから搾取するような現状はいけませんよ、という旗振りですね。大企業には課税を強化する形で、大きな利益を上げた企業から税金を集め、それを従業員の暮らしを支えることに回す、社員の雇用を守った会社には税金で優遇するというようなことで進みそうです。
五月女:税金を払ってよかったなと思えるような分配策をやってほしいですよね。
ほり・じゅん ジャーナリスト。「8bitNews」代表。「GARDEN Journalism」主宰。『モーニングFLAG』(TOKYO MX)、「ABEMA Prime」(ABEMA)ほか、レギュラー多数。
そおとめ・けいこ イラストレーター。オンラインストア「五月女百貨店」では、新年の商品も取り揃えている。LINEスタンプも展開。『乙女のサバイバル手帖』(平凡社)が発売中。
※『anan』2021年12月29日‐2022年1月5日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子
(by anan編集部)