社会のじかん

3年間で1400人の留学生が失踪! 経営難私立校の裏側を堀潤が解説

ライフスタイル
2019.05.24
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「留学生失踪」です。
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留学生を経営難の私大の水増し要員にしてよいのか?

東京福祉大学では、昨年度だけで約700人の留学生が所在不明となり、この3年間で不明者はおよそ1400人に上ることがわかり、問題になりました。正規の留学生には定員があり、試験に合格することが必須です。ところが同大学では2016年度から「研究生」という枠組みで募集、3年間に留学生の定員の約6倍、5700人が入学していました。なかには日本語が全くできない学生も。これにより学費収益は12億円増加。収益を上げるために、受け入れを拡大していた可能性があり、文科省で調査を進めています。

少子化により、厳しい経営状態に追いやられている私立学校は増えています。日本私立学校振興・共済事業団によると、大学・短大を運営する660法人の17%・112法人が経営困難な状態であることが判明。そのうち21法人は経営改善をしないと2019年度末までに破綻する恐れが出てきています。昨年から、18歳人口が減少期に入っており、経営環境の悪化が懸念されています。これに対し留学生の数はうなぎ上り。日本学生支援機構によると、2018年5月時点で大学院、大学・短大、専門学校、日本語学校などの留学生は29万8980人。10年前と比べ約2.5倍に膨らんでいます。

東京福祉大学の研究生枠は、日本に出稼ぎに来たい外国人にとって、簡単に受け入れてもらえる受け皿になっていたともいえます。ここまで極端でなくても、ほかの私学でも似たケースはあり得ると思います。最初は学ぶつもりで日本に来た留学生も、学費と生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れ、そのうちに勉強する意欲を失い、学費も支払えなくなり、失踪してしまう。もしかしたら、人手不足のコンビニを支えているのは、こういう学生たちなのかもしれません。しかし、単に労働力のみを求めるのではなく、外国人の若者たちをどのように教育し、コミュニティの一員として機能してもらうかを真剣に考えなければなりません。

政府はいま、大学教育の無償化を掲げていますが、経営能力もなく外国人で水増ししているような学校まで無償化となると、大学行政も根本から考え直す必要があると思います。

堀

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2019年5月29日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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