意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「架空アカウント」です。
真偽の見分けがつきにくい今、選挙が危ない
8月、立憲民主党の栃木県連の男性党員が、生成AIで作った「中村りほ@立憲民主党」というアカウント名で架空の女性党員になりすまし、発信していることが発覚し問題になりました。「この人は実在するのでしょうか」と問い合わせをいただき、僕がそれに答える形で調べたところ、立憲民主党の栃木県連も現場レベルでは把握していたが、政党が個人の活動に圧力をかけてやめさせるのはデリケートな問題でもあるため対応に苦慮していた、ということでした。その後、各メディアが追いかけて報道し、立憲民主党も会見を開き、アカウントは凍結されました。
ほぼ同じ時期に防衛省では、認知戦対策の強化のために新たな専門部署を設けると発表しました。日本を「新型軍国主義」などと主張する中国などの偽情報に対処するためです。情報を収集、分析、評価し、対抗する発信まで一元化しようとしています。これは岸田政権下で定められた安全保障戦略の中でも明記されていたため、既定路線ではありますが、偽情報を直ちに発見し、それを正す発信をすることはますます重要になってきています。
ただ、情報の精査を国が手がけることについては反対の声も出ています。国にとって都合の悪いことを「認知戦を仕掛けられた」と世界に発出することも可能になりますし、相手方も「国のプロパガンダだ」と別の認知戦を繰り広げれば、泥沼化してしまいます。やはり、真偽の検証には、独立したメディアや民間企業が率先して関わっていくべきなのではないでしょうか。
選挙でデマや誹謗中傷を拡散し、注目を集める問題は近年続いています。生成AIの精度は上がっていますから、今回の事件のようにAIを駆使して、架空アカウントで選挙を撹乱することは今後も起きる可能性があります。プラットフォーム側も、政治に関する主張で、本人確認が取れないアカウントはすぐさま凍結するなどの迅速な対処が必要になると思います。
選挙が正当な手続きで行われ、個々人が投票先を正しく判断できるようにするにはどうしたらいいのか。法制度なのか、民間の自助努力なのか、本気で考えなければいけないと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

SNSを見ても、衝撃動画や美人すぎる○○動画が、逆に全部AIに見えてきて疑心暗鬼な五月女です。混乱している間に真実を見失ってしまいそう。AIが人に寄せるなら、人間が別の生物に寄せ差別化する? などと考えるのに時間を費やしてしまいます。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。10/5~18、外苑前の「ギャラリーハウスMAYA」で個展を開催。近著に『桃太郎、エステへ行く』。
anan 2515号(2026年10月14日発売)より































