社会のじかん

天皇を「象徴」ではなく「元首」に? どうなる「憲法改正その後」

ライフスタイル
2017.04.30
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「憲法改正その後」です。
社会のじかん

改憲派、護憲派の両方の意見にぜひ耳を傾けてみて。

今年は日本国憲法施行から70年。安倍総理は、憲法改正に向けて、国民の理解を広げようと積極的になっています。憲法改正は自由民主党が結党されたときからの党是(党の基本方針)ですから、安定政権のいまこそチャンス。安倍総理は、自民党総裁任期を3期9年に延ばしましたので、早ければ来年度中、もしくはオリンピック後に行われるのではないでしょうか。

現在、衆議院と参議院の憲法審査会で、どの程度改正するか揉んでいる最中ですが、与党内でさえ、足並みが揃いません。自民党は憲法9条第2項「戦力の不保持」を削除しようとしていますが、公明党は9条変更には真っ向から反対。これでは進まないので、自民党は公明党以外の党と組む、または自民党だけで賛成を勝ち取ろうと、議席数を増やすべく、解散のタイミングを狙っています。

憲法改正には衆・参両院それぞれ3分の2以上の賛成と国民投票による承認が必須です。それを記す憲法96条からまず変え、3分の2から過半数に押し下げ、改憲しやすくしようとする動きもあります。改憲となれば、1条ずつ審議され、そのたびに国民投票しますので、一気にすべての条項が変えられるわけではありません。

自民党は改憲草案を党のホームページにアップしています。変更の理由をQ&Aでわかりやすく解説していますから、ぜひ目を通してみてください。

第1条から、天皇を「象徴」ではなく、「元首」とすると変えているんですね。ほかにも家族制度を重んじるなど、“戦前回帰”と懸念する声もあがっています。僕個人は、13条の「すべて国民は個人として尊重される」が「人として」に変わっているところなどが気になります。個人なら、どんな幸福の追求も個人の自由ですが、「人としてどうなの?」と言われてしまうと、個人より地域社会、さらに国家を優先させるような全体主義に、次第につながってしまうかもしれません。

5月3日の憲法記念日には、護憲派も改憲派も大規模な集会を開きます。憲法は国の顔ですから、自分はどう思うのか、考えるきっかけにしていただけたらと思います。

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年5月3・10日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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