「コースもあるけどアラカルトで楽しめる。価格帯も行きやすく。僕はお酒も好きなんで、ワイン、クラフトビール、紹興酒、台湾ウイスキーも揃えて」。自分が本当に行きたい店を妻と共に作りたい……シェフの九鬼修一さんが独立するにあたって描いた夢が、8月にオープンした木場の中華料理店『XIANGPEN PEN』で形になった。
ホテル中華や『筑紫樓』といった王道から、中国のローカルな食文化を探求する代々木上原『Matsushima』等まで、多様な経験を積んだ九鬼シェフのお料理は、素材感の生きた確かな骨格の広東料理に、シェフならではのツイストが利いたスタイル(そんなのときめくに決まっている!)。例えば香港クリスピーチキン・脆皮鶏(チョイペイカイ)は赤鶏さつまを使用し、中はジューシー、皮はパリッパリの丁寧な仕事と技術力の高さに満ちた逸品。そこへ雲南省などで見られるミントとパクチーと発酵唐辛子のソースを合わせる新鮮さがたまらない。
店名は中国語で「いい香りがぷんぷんする」。大きい店では難しかった熱々の料理も、ここでならできる。カウンターキッチンから登場する料理は何もかもが良い香りの湯気をたっぷりと纏っている。どーんと料理が供され、香りが立ち上り、そこへ人が顔をほころばせて寄せ合う。そんな理想の風景が、夜ごとこの店では繰り返されている。
アラカルトメニューより、右・赤鶏さつまの脆皮鶏(1600円)、左・澄んだ清湯スープにムギュムギュの海老雲呑が浮かぶ香港 海老雲呑麺(1200円)、中央・香港鮮魚の蒸し物(1名1500円~※予約推奨)、オレンジワイン(1200円~)、紹興酒(1200円~)。
香噴噴(XIANG PEN PEN) 東京都江東区東陽3‐16‐9 18:00~23:00(22:00LO)、土・日・祝日17:00~22:00(21:00LO) 月曜休+不定休
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。
※『anan』2023年11月8日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)