マースのシャルキュトリー、井さんのジャージー牛のリエット、グラツィアーノのヴィネガーでマリネした愛媛の鯛……。代々木上原『クィンディ』のメニューには、使用する素材の生産者の名前が丁寧に記されている。それは商品に付加価値をつけるためのお飾りではなく、自分たちが生産者と生活者をつなぐ“メディアとしてのレストラン”でありたいという意思表示のように思える。「だからスーパーマーケットを併設しています」と、オーナーの塩原弘太さん。食べて気に入った食材や調味料は併設ショップで購入することができるのだ。商品はそのどれもが、塩原さんたちが実際に出会い、信頼している作り手たちのもの。しょっつるなどの魚醤を扱うのも、受け継がなければ失われてしまう日本の食を紹介する場所でありたいという思いがあってこそ。
志は高いが、その一方で間口は広く、「家族でも気兼ねなく行けるような店でありたい」と言う。元々、塩原さんもシェフの安藤曜磁さんもファインダイニングの世界で活躍してきた人たち。そんな彼らが子供も歓迎する全方位型の店を始めたのには理由がある。「上はいくらでもあるんです。ただ食文化を俯瞰したとき、ベースとなる日常の食の場が足りないと思った」。日常に本物を根付かせる。そんな強い想いを持ったレストランだけが作れる未来、その前向きな予感が、『クィンディ』には満ちている。
ランチプレート¥1,800。MARSのシャルキュトリー、井さんのジャージー牛のリエット、Grazianoのヴィネガーでマリネした愛媛の鯛、春のサラダ、自家製の発酵バター、コンフィチュール、天然酵母のパン。“Quindi”はイタリア語の接続詞。食と社会をつなぐ接続詞として、食の未来を描くレストラン、いや、運動体となっていくのかもしれない。
東京都渋谷区上原2‐48‐12 東洋代々木上原コーポ101 TEL:03・6407・0703 ランチ11:30~13:30LO ディナー18:00~22:00LO ショップ11:00~23:00 水曜休
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
※『anan』2018年4月18日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)
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