
香港映画と香港カルチャーが大好きな、ぼる塾の田辺智加さんと酒寄希望さんが、東京にいながら香港気分を味わえる「香港贊記茶餐廳飯田橋店」へ。茶餐廳(チャチャンテン)は、香港スタイルの気軽なカフェレストランのこと。香港生まれのオーナー、チャン・マンワイさんと、映画『旅立ちのラストダンス』について語り合った前編(映画編)に続き、後編は茶餐廳の人気メニューを食べ尽くします!
Index
What?

映画『旅立ちのラストダンス』とは?
邦題『旅立ちのラストダンス』が意味するのは、「破地獄(はじごく)」という道教の伝統的な葬儀儀礼のこと。若くして亡くなったり、事故で亡くなったりした、“本来の寿命を全うできずに死んだ者”が安全にあの世へ渡れるよう、地獄の門を破って魂の通り道を開く儀式とされる。
物語の舞台となるのは、九龍半島・紅磡(ホンハム)という、葬儀店が集まるエリア。やむを得ず葬儀業者に転職した中年男性トウサンと、葬儀を取り仕切る道士であり、伝統を重んじるマン師匠が、衝突しながら互いの価値観を受け入れていく。
香港映画界の伝説的コメディアン、マイケル・ホイとダヨ・ウォンが、32年ぶりにスクリーンで顔を合わせたことでも話題に。第43回香港電影金像奨では、過去最多タイの18部門でノミネ―トされ、5部門を受賞。批評家から2024~2025年において「最も力強い香港映画の一つ」と絶賛された。
意図せず裏メニュー化した、人気の一品とは
マンワイ まずはドリンクからどうぞ。

手前、酒寄さんの〈アイスレモン水/凍檸檬蜜〉と、奥、田辺さんの〈アイスコーヒーミルクティー/凍鴛鴦〉
酒寄 私のは〈アイスレモン水/凍檸檬蜜〉。さっぱりしていておいしいです。
田辺 ビタミン大事よね。私のはちょっと変わっていて、〈アイスコーヒーミルクティー/凍鴛鴦〉。名前の通りアイスコーヒーとミルクティーが一緒になったような味なんですけど、意外と飲みやすいです。
マンワイ アイスコーヒーミルクティーは茶餐廳の定番ドリンクなんですけど、初めてだとちょっと不思議な感じがしますよね。日本ではまず見かけないので、わざわざここに飲みに来る人もいるんですよ。料理も早速できあがってきました。一皿目は〈カレーフィッシュボール/咖哩魚蛋〉。魚のすり身をだんごにして揚げて、カレースープで煮込んでいます。

裏メニュー!? カレーフィッシュボール
田辺 うわーおいしそう、熱いうちにいただきます!
酒寄 おだんごがプリプリですね。
田辺 ショウガがしっかり効いていて、体の底からパワーが出てくるような味です。
マンワイ 以前、ふたりがお店に来てくださったとき、このメニューはなかったですよね!?
田辺・酒寄 なかったです。
マンワイ もともと定番なんですけど、メニュー表を作り直したときに間違えて抜けちゃって、いつの間にか裏メニュー化しちゃったんです(笑)。うちは常連さんが多いので、みなさんメニューを見ることなく、当たり前にオーダーしてくれるのですが。
田辺 写真で見たことがあって、ずっと気になっていたんです。今日もここに来るとき、ふたりで「フィッシュボールってなんだろうね」って話していたので、いきなり食べることができてうれしいです。
マンワイ 意図しない裏メニューなので、次回もぜひオーダーしてください(笑)。作りたての〈チャーシュー/叉焼〉もどうぞ。

肉厚の叉焼は一枚一枚が濃厚な味わい。
酒寄 お肉がしっとりしていて、うまみがみっちり凝縮してますね。
田辺 中まで味がしみ込んでいて、口いっぱいにおいしさが広がります。
マンワイ ちなみに飲茶や中華料理店では、平皿の上にお椀状の器が乗った状態でセットされていますよね。基本的に料理はお椀によそって、その下の平皿には肉や魚の骨などを置くのが、香港スタイル。覚えておくと便利ですよ。
田辺 そうなんですね! ちなみに韓国料理とかだとお椀を持たずに、テーブルに置いたまま食べるのがマナーとされていますが、香港の場合はどうなんでしょう。お皿を持って食べてもいいんですか?
マンワイ ごはん茶碗は持っても大丈夫。茶碗を持たないときは、右手にお箸、左手にレンゲを持って食べることが多いですね。
酒寄 香港映画の食事シーンで、白いごはんにおかずを乗せて食べているのをよく見るのですが。
マンワイ そうですね、みんなよくやります。
酒寄 これ食べなさい! って一緒に食べている人におかずを乗せてあげたりして、親密な感じが伝わってきていいなあって思います。
田辺 わかるわかる。

香港では、男性が食事を取り分けることが多いそう。
通は迷わずオーダー! サンドイッチとその食べ方
マンワイ 次は〈コンビーフ&タマゴサンドイッチ/蛋牛治〉です。うちの店ではいろんなサンドイッチを用意しているのですが、茶餐廳のサンドイッチといえばこのコンビーフ&タマゴか、ランチョンミート&タマゴです。
田辺 コンビーフって脂が多いのかなと思ったのですが、全然そんなことないですね。ふわふわタマゴの奥からコンビーフのうまみがやってくる感じ。
酒寄 本当にこの組み合わせ、ぴったりでクセになりますね!
田辺 パンも蒸しているような柔らかさ!
マンワイ 実際のところサンドイッチは、初めての香港旅行でわざわざ食べようとは思わないですよね。だけど何度も香港に行っているような方には、人気の食べ物のひとつなんです。
田辺 私、こないだここに来たとき、ハム&タマゴサンドイッチをいただきました。
マンワイ ありがとうございます。もっと言うとこのサンドイッチは、トーストしたパンで作るとプラス110円なのですが、香港や中国の人はトーストのほうがお気に入りだったりします。こないだ日本人のお客さんが、トーストのサンドイッチをオーダーされたので、思わず聞いてみたら、案の定、香港にしょっちゅう行かれている方でした(笑)。

パンをトーストしてもらうこともできます!(+110円)
幼少期の味を再現した、フレンチトースト
マンワイ 次の料理はたぶん、初めて召し上がるんじゃないかなと思うのですが、〈シンガポール焼きビーフン/星洲炒米粉〉です。
酒寄 香港だけどシンガポールなんですか!?
マンワイ 香港で独自に進化した一品で、カレー味の焼きビーフンなんです。

病みつきになる味わいの〈シンガポール焼きビーフン/星洲炒米粉〉
田辺 カレー粉の香りが食欲をそそりますね。野菜やエビなど具もたっぷり!
マンワイ 茶餐廳ならではの焼きそばで、いわゆる中華レストランにはないメニューです。田辺さんはうちの〈ポーローヤオ/菠蘿油〉がお気に入りだそうですが、今日は違うスイーツも食べていただきたくて、〈カヤジャムフレンチトースト/咖吔西多士〉を用意しました。

こちらのカヤジャムは、バンダンリーフとココナッツミルクで作った自家製!
田辺 えー、うれしすぎる! ここに来るといつも迷うんですけど、ポーローヤオがおいしすぎて、フレンチトーストは未体験だったので。
酒寄 もうお腹いっぱいだけど、フレンチトーストはいただきます(笑)。パンの間に挟まっている緑色のが、カヤジャムですか?
マンワイ そうです。香港のフレンチトーストは卵液をつけて、油で揚げるんですけど、何も挟まないか、ピーナッツバターを間に塗るのが一般的です。このカヤジャムは、私が子どもの頃に食べた味を再現していて、パンダンリーフとココナッツミルクで作った自家製のジャムなんです。もともとはシンガポールやインドネシアでよく食べられているジャムで、最近は香港で見かけることも少なくなったと思います。
田辺 私、シンガポールも大好きなんですけど、まさかここでカヤジャムに出会えるなんて感激です。
酒寄 しかも手作り!
田辺 こんなに食べたのに、ペロッと行っちゃいますね。
マンワイ せっかくなので、ポーローヤオもどうぞ。

次に流行るのはこれ!? カリふわ食感がたまらない「ポーローヤオ」
田辺 うわーどうしよう(笑)。ポーローヤオって、見た目からメロンパンみたいな味を想像する人が多いと思うんですけど、実は全然違うんですよね。
酒寄 表面がカリカリで、中がふわふわな食感がたまらないです!
田辺 バターとの相性もよすぎます。ほんとこれ、日本で流行るのは時間の問題だと思います。それにしても香港の粉ものって、どうしてこんなにおいしいんだろう。
マンワイ 最後は口直しに、これも茶餐店にしか置いてない〈あずきミルク/紅豆冰〉というドリンクです。
酒寄 かき氷をジュースにしたような感じですね。
田辺 懐かしい味…。これ、うちのじいちゃんに飲ませたいなあ!

なつかしい味わいの「あずきミルク」
Information

映画『旅立ちのラストダンス』
ウェディングプランナーのトウサン(ダヨ・ウォン)は、コロナ禍で多額の負債を抱え、葬儀業者への転身を余儀なくされる。結婚式と葬式は大きく異なり、さまざまな困難に直面。その最大の難関が、ともに葬儀を取り仕切る「葬儀道士」のマン師匠(マイケル・ホイ)に認められることだった。利益追求を第一とするトウサンと、伝統を重んじるマン師匠は、考えの違いから絶えず衝突。しかしマン師匠の息子で、選択の余地なく家業を継いでいるパン(チュー・パクホン)や、道士の素質を持ちながら女性ゆえにそれが叶わない娘のマンユッ(ミシェル・ワイ)など一家と関わるうちに、トウサンの心にも変化が。葬儀で行う伝統的儀式「破地獄」の真の意味に気づいていく。
絶賛公開中。映画『旅立ちのラストダンス』https://lastdance-movie.com/
Profile
酒寄希望
さかより・のぞみ 4人組お笑い芸人「ぼる塾」のメンバー。著書に、ぼる塾の日常や知られざるエピソードを綴ったエッセイ『酒寄さんのぼる塾日記』『酒寄さんのぼる塾生活』『酒寄さんのぼる塾晴天!』(すべてヨシモトブックス刊)がある。
田辺智加
たなべ・ちか 4人組お笑い芸人「ぼる塾」のメンバー。スイーツを愛し、著書に『あんた、食べてみな! ぼる塾 田辺のスイーツ天国』(マガジンハウス刊)がある。YouTube「ぼる塾チャンネル」ほか、「ぼる塾田辺の食べるわよチャンネル」も好評。
restaurant

香港贊記茶餐廳飯田橋店(ホンコン チャンキーチャチャンテン イイダバシテン)
東京都千代田区飯田橋3-4-1 マンワイビル1階・2階
11:30~23:00 無休 TEL. 03-6261-3365





















