
左から、松岡禎丞さん、入野自由さん、内田雄馬さん
『超かぐや姫!』劇中でプロゲーマーグループとしてツクヨミに登場する「Black onyX(ブラックオニキス)」。圧倒的な人気を誇り、かぐやたちに立ちはだかる通称・黒鬼を演じた、入野自由さん、内田雄馬さん、松岡禎丞さんにご登場いただき、黒鬼や本作の魅力について語っていただきました。3人でのインタビューは実は今回が初めて。webでは、本誌(anan 2495号)に載せきれなかった内容も追加したロングバージョンでお届け。新たな“祭り”が始まります。
── 作品が注目されると同時に巷では黒鬼人気も高まっていますがどう感じていますか?
入野 えっ、巷で? 聞いてる?
松岡 『超かぐや姫!』が盛り上がっているとは聞いています。
内田 同じ3人だったらかぐやたちじゃないの? って。
入野 そうだよね。だから黒鬼たちが表紙と聞いてびっくり。でも嬉しいです。我らのエースは乃依なんじゃない?
松岡 乃依を演じたと、まだ自分自身でも信じられていないんですよ。台本をいただいたときも衝撃でした。香盤表を見て「なるほど…駒沢乃依っていうのね」。と思ったあと、キャラ表を見て「え、間違っている?」となりました。そこで自然とアバターは誰か女性が演じて、中身を自分が担当するのだと切り替えたんです。
入野 よくあるよね。
松岡 ですが何度見ても何度見ても僕なんです(笑)。
── それぞれの役をどんな風に演じられたんでしょうか。
入野 僕はツクヨミのゲーマーである帝アキラを意識して、アニメライクな芝居をしようと思いました。恋愛シミュレーションゲームに登場するキャラみたいな甘い成分も足して、人間というよりキャラを演じる意識。ディレクションを受けて僕なりにあざとめにやってみたり。自分の中ではかなり極端な芝居をしたんですが、監督と話したとき「それがすごく良かった」と言ってもらえて。つまり現実世界の“酒寄朝日(帝アキラの本名で彩葉の兄)が演じている”というところにリンクしてたんですよ。
内田 朝日もツクヨミの中では帝としているんですよね。お兄ちゃんとして彩葉に言葉をかけるときの優しさや温かみとのギャップが面白いし、なによりちょっとした言葉の人間味が素敵なんです。入野さんのお芝居の素晴らしさを実感しました。
松岡 本当に。「ブラックオニキスが夢見せなきゃいけない」も、入野さんじゃない人が言っても説得力に欠けると思います。
入野 え、待って、なんでこんなに褒められてるの?(笑)
── 松岡さん演じる乃依の「ぴえん」も良かったですよ。
松岡 あれは声を維持するのが限界でした。もう少し行こうかなと思いましたがひっくり返ってしまいそうでした。
入野 松岡くんはキャラ表で衝撃を受けたあと、どういう声にしようって思ったの? 高くしようとか、逆に低くしようとか。
松岡 両極端の方向と中間のところを全部作って行きました。どこかに当たればいいなと思って。
内田 なるほど。
松岡 ですが前日に喉を使いすぎて、当日は声がガラガラだったんです。ヤバいなとも思いましたが「今までのお芝居の方向性で大丈夫です。無理に男の娘を演じなくていいです」と言っていただきました。それでホッとしたのですが、何度か録って「少し可愛らしくしましょうか」とも言われて。綱渡りでした。
内田 行ってみないとわからないですよね。しかも今回オーディションではなくオファーをいただいたので。お話をいただいた時にはもうこの座組だとお伺いしていたので、楽しみな反面どういうお芝居のバランスにするべきかはけっこう考えましたね。合わせて声のバランスもとらなくてはいけませんし。
入野 帝ももしかしたら低かったかもしれないね。
松岡 僕は帝のトーンはあれが正解だと思いました。すごくお兄ちゃんしていましたよ。「やればできんじゃん」なんて自然に言えません。僕だったら遊びたくなります。「やれば、できんじゃん!!」
── だいぶ強めの(笑)。
松岡 どこまで極端にやるかという勝負になりますよね。
入野 自分自身の考え方として、どんなキャラクターも一人の人間であるっていうのがあって。基本的にはステレオタイプなカッコいいキャラ、イケメンキャラにはならないようにしてる。でも今回は、極端に言えばそうなってもいいくらいの振り切り方をしないと、と思って、楽しみながら演じました。雷は想像がつくよね。いちばんハマってる。
内田 本当ですか? 全然喋ってないのでドキドキしてましたよ。
入野 でも全部印象的なセリフだったよね。ちゃんと残してるよ。
内田 「また祭りが始まるな」「リーダーの言うことは絶対」。
松岡 あとアドリブの、あの…。
内田 「勝ち確〜!」のところ(笑)。でも言葉数は少なくても絵がいろんな表情を見せてくれて、キャラクターが膨らんでいく感じはありました。なので、雷が良かったですと言われると嬉しく感じますね。
── 作品の人気の理由はどんなところにあると思われますか?
入野 推し文化が詰まっているのが大きいと思いますね。劇中でも誰かを推したい、応援したいという気持ちが描かれていますけど、その力は『超かぐや姫!』という作品全体に対しても働いていると思うんです。ファンの人たちが作品を推したいと思ってくれている。クラウドファンディングのような応援する仕組みと親和性が高かったんだろうなと思います。
内田 僕は映像表現のすごさを挙げたいです。テンポ感がものすごくいいんですよ。今って先が気になってなんでも早送りで観てしまう文化もあるじゃないですか。でも『超かぐや姫!』は通常の速度でもキャラクターの表情がコロコロ変わるし、気がついたら自然と世界観に入り込んでいる。1カットごとが素晴らしくて、制作陣のセンスというか、強い発想力を感じました。
松岡 ネット文化の描き方も絶妙なんです。僕には20年くらい前に流行った組曲『ニコニコ動画』(ニコニコ動画内で人気の曲をメドレー形式にした楽曲)を映像化したような作品に思えました。今はネットにもいろいろな側面がありますが、あの頃の、ネットは楽しいものなんだという気持ちを思い起こさせてくれました。
入野 確かにいろんな要素が詰まってるよね。ライブもあるし。
内田 KASSENシーンだけで1本作れちゃいそうですしね。
松岡 この作品、日常も描けばバトルも描きますし、どうしたら考えつくのだろうと思います。ストーリーの流れもお芝居の感じも全て生っぽいんですよ。
松岡 あとは、この作品でいちばん遊んでいたのは夏樹ですね。
入野 夏樹?
内田 夏樹?
松岡 花江夏樹(ツクヨミで実況解説を担当している乙事照琴役)。
入野 下の名前で言わないで。
内田 (笑)。この作品は、デフォルメ要素もあってアニメーションならではの良さが出ているけれど、お芝居は生っぽくて、しっかりと人間を描いているところがすごいです。
── ボカロやネットミームについてはいかがでしたか?
入野 改めて僕は疎いんだなって思いました。聞いたことはあるけど、実際に使えるかっていうとそういうわけでもない。ニコニコ動画とかボカロの曲もほとんど通ってなくて。
内田 僕の世代だと中学生くらいにニコ動が盛り上がって、それを見ていた記憶はあります。僕はネトゲが好きなので、目にレンズを入れて電脳の世界にダイブする近未来にワクワクしました。
松岡 ツクヨミは楽しそうで理想の世界ですよね。ログインしたら戻って来ないと思います。
内田 みんなそういう場所を求めてるんでしょうね。誰しも普段からコミュニティによって仮面を付け変えて生活してると思います。だからこそ、姿かたちを変えて活動できるツクヨミに憧れを抱く人も多いと思うんです。“何者かになれる”ことへの願望は誰しも持っていると思いますし、VTuberが流行るのもそういうことなのかなと。
── 音楽面だとブラックオニキスとしてオリジナル曲「OnyXXX」を3人で歌っていますよね。
入野 難しい歌でした。とにかくハモリが難しかったです。一生そこができなくて、もう無理かもって思ったのを覚えてます。
内田 雷と乃依はコーラスがメインでものすごく音程が低いんです。雷はローでどしっと喋る人だから会話の音域に近いラインでした。キャラソンって声の低いキャラクターでも高い音域で歌うことが多いから今回のようなアプローチはとても楽しかったですね。
松岡 僕は低すぎてもう無理かもと思いました。乃依はあまり声が低くないので、スタッフさんに「乃依として聞こえなくなっても大丈夫ですか?」とも聞いたのですが、乃依感は欲しいみたいで。なので低くても言葉のニュアンスは柔らかくなるように歌いました。ですが本編の音源を聴いたら雄馬の声しか聴こえなくて。
内田 そんなことないですよ。絶対に合わさっているからこその厚みになってるはず。でも確かに音程は低かったですね。
── 雷と乃依の二人は兄弟で帝にも彩葉という妹がいますよね。それぞれの家族関係が見えるのも興味深かったです。
入野 KASSENのシーンは山下監督が得意とするバトルが秀逸に描かれていて、カット割りもカメラアングルもエンタメとして充実してる。加えて戦いの中で彩葉と朝日の物語がしっかり描かれてるんですよね。全部詰まっている! と思います。
内田 もちろん台本を見てどういう流れになるか知ってるのに、KASSENを見たらここで終わりかもって思うくらい。あそこの山場はすごかったです。
松岡 彩葉と朝日が家族として対峙するんですよね。朝日の「母さんは反抗待ちなの」は名言でした。
入野 よく覚えてるね(笑)。
松岡 もう4回観ています。
内田 すごい!(笑)
松岡 彩葉は自分を過小評価していますよね。お兄ちゃんにはできるのに自分はできない。ですがかぐやの存在で勇気づけられて…というところで、なんだかんだ家族として朝日が彩葉の背中を押しているところがいいなと。
内田 彩葉がやりたいことやクリエイションに向かって突き進めないのは、ずっと自分の中に壁があったからだと思うんです。それを取っ払うのに、兄である帝の存在は大きかったと思うんですね。KASSENでのぶつかり合いも気づきに繋がったというか。
入野 雷と乃依も兄弟だからある程度関係性が見えるよね。
松岡 二人は普段も仲がいいのだろうなという描写がありましたね。確か雷の膝の上で乃依が寝転んでるシーンがありました。
内田 主導権は乃依だと思いますよ。乃依が「これやりたい!」、雷が「じゃあどうする?」。帝が「面白そうじゃん」と乗る、そんなバランスの3人なのかなと。
松岡 乃依は雷に対して信頼という名の甘えをしているのだと思います。そうでなければ、兄に対してああいう感じの接し方はできないと思うので。昔から一緒に過ごしているので、ここまでやるとダメというのがわかっているのだと思います。これ以上いくとお兄ちゃんキレるなと。その範疇で自由にやっている気がします。
入野 わかる。想像するのも面白いけど、もっといろいろ知りたいよね。チーム結成秘話も明かされてないし。
松岡 これはもうスピンオフを作ってもらいましょう。もっと3人のことが知りたいです。
内田 それに、ブラックオニキスでも「ray」を歌いたいです。
入野 いいね。世代だしね。
Profile
入野自由
いりの・みゆ 東京都出身。主な出演作に『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(宿海仁太)、『おそ松さん』(松野トド松)など。
内田雄馬
うちだ・ゆうま 東京都出身。主な出演作にTVアニメ『呪術廻戦』(伏黒恵)、『メダリスト』(夜鷹純)、『ぐらんぶる』(北原伊織)など。
松岡禎丞
まつおか・よしつぐ 北海道出身。主な出演作にTVアニメ『ソードアート・オンライン』(キリト)、『鬼滅の刃』(嘴平伊之助)、『名探偵プリキュア!』(ニジー)など。
Character

帝アキラ
ツクヨミで絶大な人気を誇るプロゲーマーグループ「Black onyX」のリーダー。現実世界では彩葉の兄、酒寄朝日。

駒沢雷
乃依の兄。冷静で口数は少ないが、情に厚く時に熱い一面を見せ、バトルシーンではチームをサポート。歌が得意。

駒沢乃依
雷の弟。男性アバターながら可愛らしい服装を好む。基本的に怠惰だが、やる気があるときのファンサービスは旺盛。
写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・村田友哉(SMB/入野さん) 奥村 渉(内田さん) 久芳俊夫(BEAMS/松岡さん) ヘア&メイク・佐藤健行(HAPP’S/入野さん) 花嶋麻希(内田さん) いたつ(松岡さん) 取材、文・飯田ネオ























